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試験後の気分

 期末試験も終わりを迎え、緊迫したムードは一気に解放される。 気持ちは分からなくもない。 赤点を回避するために必死に頑張ってきたのだから気は抜けなかった。 しかし解放されたせいか、うちのクラスは浮かれに浮かれていた。


「帰りゲーセン寄ってかね?」

「次のアイドル候補さあ。」


 男子も女子もさっきまでの緊張感が嘘のようにあれやこれやと賑わいを見せていた。


「これから部活がある奴だっているのに、難儀なこって。」

「それだけ窮屈だったのだろう。 しかし気持ちの解放の気持ち良さは我にも分かる。」


 試験終わりで部活の時間まで少し間があるということで芦原がこちらに話し掛けてきていた。


「なんか最近あったのか?」

「ようやく我が推しを限界突破(リミットバースト)出来たのだ! あれは長くツラい戦いであった。」


 ああ。 エクアカの話か。


「マジでか。 ・・・いくら掛かったんだ?」

「心配するな相棒(バディ)。 我が幸運(ラック)と推しを愛する力の前ではコラテラルダメージよ。」


 完全にノーダメージではないんだな。 まあ友人が重課金勢にならなかったのは良かったとも言えるだろう。 こう言ってしまうと製作者側に失礼だが、ああいったのにお金はかけたくない心情だ。


「あー、それは何となく分かります。」


 そんな話を弓道部で筋トレ終わりの引間にするとそんな返答がきた。 素の引間はここでは出せないため感想を述べる言葉は少ない。 どっちも知ってるから俺はいいものの、見慣れてなければまず違和感を感じるだろうな。


「そこまでしてキャラを強くしたり、とかは考えないですね。」

「引間もこっち側か。」

「でも経営的な考えなら、そうしてでもお金は落としてもらいたいんですよねぇきっと。」


 言いたいことは分かる。 そうでなければ続けることも出来ないからだ。 継続力というのは時に新しいものを始めるよりも難しい。


「芦原君はそんなグレーな夏を送るんですかね?」

「・・・流石に何かしらには誘うつもりだ。 勿論引間もな。」


 そこまで俺も他人と触れ合うのが嫌なわけではない。 高校に入って初めての友人なら尚更だ。


「ご連絡待ってますよ。」


 引間の見せた笑いは今の姿か素の姿か。 それは引間にしか分からないこと。 本当に分かりにくいぜ。


「夏休みかぁ・・・」


 部活終わりの帰り道で口にして思う。 高校生になって3ヶ月、色々な事が起こりすぎたと思っている。 それなのにまだこの暑さのせいで時間が経っていないことの現実に戻される。


 いつの間にかそんな時期になって、記憶に残っているものが多いのはそれだけ衝撃的な事が多かったからだろう。


「これも西垣と会ったからなのかもな。」


 らしくなく答えを導いて苦笑して俺は背を伸ばす。


「試験も終わったし、何事もなく夏休みを始められるのはある意味では予定通りってね。」


 独り言を呟きながら俺は未だに明るさを持っている空と共に家に帰った。

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