夏休み内のイベント
「随分と珍しい事をしているな相棒。」
授業が自習になる試験期間の休み時間。 俺がスマホで調べ物をしていたら、芦原からそんな風に言われた。
「珍しいか? 俺が調べてるのが。」
「どちらかと言えばネットサーフをしていることに対してだろうな。 何を調べているのだ?」
「あぁ。 これだよ。」
そう言って見せたのはこの地域の夏のイベントの開催時期についてだ。 西垣が帰省するのはお盆らしいので、それの前後で何があるかを確認していたのだ。
「ほう、神社祭りに花火か。 学校の近くにこのような催しがあるとはな。」
「ああ。 それにこの工場跡地で流しそうめんもやるらしいんだ。 結構面白そうだと思ってな。」
「確かに楽しそうだ。」
「だろ? こう言うの俺も初めてでさ・・・」
「楽しそうだと言ったのは相棒の事だ。」
ん? 俺の事?
「汝を見ているとお菓子をあげた子供のように、明るい表情をしている。 学校生活が楽しいと言わんばかりに、だ。」
「そう・・・か?」
俺にはよく分からない。 確かに去年までの自分だったら、こんな風に近くに何があるか何て事前に調べたことはない。 そうやって一緒に過ごそうと思った友人もいなかったが。
「ふっ・・・どうやら汝は、汝が思っている以上に、女神に影響を受けているようだ。」
「そう・・・なのか?」
「そうだとも。 おっと、次の授業が始まるようだ。」
そして席の方に戻っていく芦原を見ながら、俺は思い返してみる。
西垣のあの夢を見てから俺は最初こそ西垣に関わらなければ良いと思った。 しかしそれは西垣の方から壊してきて、それによって運命が変わり始めたと神様に言われて、ならばと西垣の事をよく見るようになった。 その甲斐あってかもう一人の人格であるエムゼが認識されるようになった。
ただあまりにも怒涛過ぎるこの3ヶ月間。 西垣の事を考えている気がしている。 だがこれはあくまでもあの夢通りにならないようにするための道しるべ。 西垣の事をどう見ているか、などとは思ってはいない。 いないはずなのだが・・・
「積和君。」
ずっと悩んでいると西垣が隣から声をかけてきた。
「どうした? 西垣。」
「いえ、昨日申し上げられていた予定の件なのですが・・・」
「ああ、そうそう。 色々と調べてみたんだよ。 ほらこれなんか夏休みのイベントっぽくて良くないか?」
「本当ですか? ・・・わぁ、楽しそうですね。」
「だろ?」
そう言って横を見ればすぐ側に西垣の顔があった。 あまりの近さにドキリとしてしまった。 だがこれは驚いたからそうなったのだ。 決して別の意味ではないだろう。
「あ、そうだ。 折角ならキャンプへ行きませんか?」
「キャンプ?」
「父がよく夏には連れていってくれるのですが、2人でキャンプというのも、この歳になると少し気まずくて・・・」
「俺で良いのか?」
「都合が合えば芦原君や引間さんもどうかなと。」
「そうか。 分かった。 キャンプの日程が決まったら教えてくれないか?」
「はい!」
そして授業が始まる。 今年の夏は、色々な意味で一風変わりそうだ。