予定の予約はお早めに
家に帰り俺はまず自分の部屋に鞄を置く。 部活がないので帰る時間は早い。 だからと言ってだらけるつもりは無いので、鞄から適当にテキストとノートを取り出して食卓へと向かう。
そこで勉強をしようと思ったが、そこには既に姉さんが同じ様にノートと教科書を広げて勉強をしていた。 勿論使っているスペースは必要最小限ではあるが。
「やあカズ。 お前も勉強か?」
「そんなとこ。」
そう言って俺も向かいに座って勉強を始める。
「そう言えば夏休みの予定はどうなのだ?」
「まだこれと言って決めてない。 去年と同じ様な感じになるとは思うけどね。」
「本当にそうなるかな?」
お互いにノートに目を向けているので表情はお互いに見えない。 だが姉さんが何を言いたいのかは何となく分かる。
「高校に入ってから色々と変化はあっただろう? 新たに関係を結んだ友人達と交流を深めるのも今しか出来ない事だ。 それにあまりモタモタしていると、予定を取られてしまうぞ。」
知った風な事を言っている姉さんだが、こう言った時に話す内容は、大抵は姉さん自身の体験も混じっている。 それを知っているからこそ、変に反論も出来ない。
「・・・夏になにがあるのか見てから相談する。」
「それがいいだろう。 予定を作るのに相手の都合を考えないのはナンセンスも甚だしいからな。」
自分を棚に上げているつもりかとも思えるが、否定はしないでおこう。
そして夕食と風呂を終えて時刻は午後の8時。 連絡するには丁度良いだろうと考え、西垣に連絡を入れる。
『こんばんは。 今は大丈夫か?』
向こうの予定を考えてこんな定型文を送る。 そうしているとそこそこ早い段階で返信が来る。
『こんばんは積和君。 どうかなさいましたか?』
『西垣は夏休みってなにか予定があるか?』
そう送信して改めて思う。 そんなことを聞くなんて下心があると思われるだろうな。 そんなつもりはなくてもそう見えるのも仕方ない気もする。
『夏休みは母の生まれ故郷を訪れるんです。 毎年この時期になると顔を見せに行くんです。』
西垣の母親の故郷。 アイルランドまで飛ぶのか。 日本に住んでる以上は故郷に帰るのはおかしくないか。
『そうなのか。 それじゃあ夏はずっとそっちにいるのか?』
そう返信した後に考える。 確かに予定を聞いておいて正解だったかもしれない。 ここであれ行こうこれ行こうと言ってしまえば、向こうにも迷惑がかかるだろう。
『いえ、お盆の期間だけなので、それ以外はこちらに居ますよ。』
「あ、別に夏休み全部行くわけじゃないのか。」
ちょっとホッとしつつ、西垣に返信を送り、予定を相談することを約束して俺は眠りについた。