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夏休み前の試練

 6月も終わりに差し掛かってきた今日この頃。 もうそんなに時期が経ったのかと思いつつ授業に励んでいた。


 理由はただ一つ。 月末月初に期末試験があるからだ。 時が流れるのは早いものだ。


 とはいえ文句も言ってはいられない。 これを乗り越えなければ最低でも夏休みの前半が補習になると担任に言われたからだ。 割りと容赦は無かったが、優しい言葉をかけられるよりは身が引き締まる。


 そんなこんなで昼休みを終えて暑さで寝る所ではない教室ではギリギリ試験範囲に入るか入らないかの授業をしている。 苦手な科目ではあるものの、やるからには逃すわけにもいかない。


「っはぁ。 今日も終わったぁ・・・」


 暑さでへばりそうになりながらも何とか今日の授業を終えた。 今日は体育もあったのでシャツの中の熱気も凄い。


「お疲れ様です。 積和君。」


 隣に座っている西垣から労いの声がかけられる。 流石に暑すぎるようで最近の西垣は髪を結い上げながら登校して来ることも多くなっていた。 すれ違う男子の目線が西垣の白い項に目が行っているのは必然的だろう。


「西垣もな。 いやぁそれにしてもなんでここまで暑い中で試験勉強なんかしなきゃいけないんだろうな。」

「それが学校の制度と言うものでしょう。 高校は義務教育ではないので。」

「本当に赤点ばっかで留年とか退学とかすることってあるのか?」

「考えたことは無いかも知れませんね。 無縁と言えば無縁なので。」


 たまに西垣も心にもないことを言うのだが、分別は出来ているとも言えるのだろうか。


「まあそれも終わってしまえば学生にとっては一番の青春と言われてる夏休みの始まりだ。」

「積和君がそう言うことを言うのはちょっと似合わないですね。」


 そう言いながら笑っている西垣。 確かに自分でもそんな感じはする。 中学の時だって別にワクワクがあったわけでもない。 心情の変化というやつだろうか?


「まあまずはこの期末試験を乗り越えることが先か。 赤点は洒落にならないが、別段成績が悪いのも気が引ける。」

「それはお姉さんの事もあってですか?」

「そこまでは言ってないが・・・まあ姉さんがあれだし、身内としてはね。」


 表に出れば完璧、家に帰ればどこかネジが外れるあの姉さんだが、別段嫌いというわけでもない。 恥をかかせるわけにもいかないのは結局は事実だからな。


「その様子なら大丈夫だと思いますよ。 積和君は真面目な方ですから。」

「・・・俺なんか変な顔してた?」

「さぁどうでしょうか?」


 西垣にそう軽くあしらわれた。 最近西垣との距離感についていい方向には進んでいるとは思う。 だがあの夢が無くなったとは思えない。 それにこれからもっと距離感を縮めていこうとも思っていない。 あくまでも適切に保っていくつもりだ。 そう思いながら俺は教室を後にした。

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