初夏
梅雨時期も明けるか明けないかとなった日々となり、湿気の代わりに暑さがやってくる。 衣替え期間も終わったので男子も女子もみんな半袖だ。
しかしそれはそれとして外や教室で過ごすのに暑さが全てを嫌にさせる。
「やはり羽を使うよりも冷却機を使う方が効率は良くなると我は思う。」
「みんな思ってることを代弁しなくて良いぞ。 この暑さじゃ同じことしか考えてないんだからよ。」
「髪の長さも相まって暑いです・・・」
お昼休みになっても外に出掛ける連中はいない。 教室が学校で唯一涼しく出来る場所であるため出たくないんだろう。
「扇風機の公布はまだ良心なんだろうが、だったらクーラーの方がいいよなぁ。 折角四方と真上にあっても届かない場所出来るだろあれ。」
「オールエリアはどうあがいても不可能だろう。 可動範囲は限られてる。」
「だからああやって四隅にいる連中が出来るんだろ?」
昼食を食べ終えた連中が扇風機の前でたむろしているのをみて、そんなことをすればどうなるか分かっているのだろうが、邪魔なのには否めない。 トラブルにはなりたくないので突っ込みには行かないが。
「・・・暑いです・・・」
隣で唸っている西垣の姿が長髪も相まってホラーっぽくなっている。 幸いなのは髪が銀色のお陰でホラー感が薄まってる位だろうか。
「これ午後の授業まで持たないだろ。」
「しかし午前中のみで学校は終えられない。 対策はされるかもしれないが望み薄と言ったところだろうか。」
「だろうな。 姉さん大変だろうな。」
「何故そこでシスターが出てくるのだ?」
芦原の疑問に思い付く。 そう言えば西垣には会わせてたりして俺の姉の存在は知っているが、芦原にはまだ説明してなかったな。
「俺の姉さん生徒会に関係しててさ。 ご意見番みたいなので「クーラー導入してください。」みたいな意見が届いてたらって思ったらな。」
「随分と優秀な姉君ではないか。 相棒も鼻が高いな。」
「俺の実績は関係無いけどな。」
そんな会話をしていても西垣は項垂れたままだ。
「・・・暑いです・・・」
喋る台詞すら反芻してるし。 相当参っていると言っても過言じゃ無さそうだ。
そう思えば急に顔を上げる西垣。 汗をかきすぎて顔から滴っている。 そんな様子を見ていたら、西垣は銀髪を纏め始め、ヘアゴムを取り出して髪を一括りにした。
「涼しくなりました・・・」
「髪が長いってのも大変だよな。 切ろうとは思わなかったのか?」
「この髪が好きですから切るのが勿体無く感じて・・・」
そう言う考えもあるのか。 そう思いながら見た西垣の白い項があまりにも綺麗だった。
「女神よ。 どうやら相棒は上げた髪の方が好みらしい。」
うぐっ・・・芦原に嫌なところを見られた・・・ しばらくはからかわれそうだと、沸騰しそうな頭で悩ませた。