午後はお出掛け
「ん? ふぁぁぁ・・・」
クラシックを聴きながらゆっくりと眠っていた俺は目を覚まして、腹が減っていることに気が付き、食卓の方へと向かうと、母さんの姿があった。 お昼ではあるが、夕飯用になにかを煮込んでいる様子があった。
「あら、カズは残ってたのね。」
「車や電車みたいに移動しなきゃ見れない趣味でもないし。 母さんだって外に出ない趣味じゃない。」
「買い物は行くわよ。 失礼しちゃうわ。」
「そう言う意味で言ってなかったんだけど。」
母さんの趣味は料理にある。 とはいっても素材にこだわりがあるだけで、料理自体は至ってシンプルな家庭料理ばかりだ。 母さんが突拍子もなく凝った料理を作ることは祝い事以外では滅多に無い。 その方が全然好きだがな。
「お昼はどうする? なにか食べる?」
「作り置きとか無い?」
「そこの朝の残りでいいなら食べちゃって。」
そう言って母さんが指差した先にあった皿を確認して、それを温めてから食卓について食べる。
「そうだ。 この後予定がないなら買い物手伝って欲しいんだけど。」
「あのいつもの場所?」
「そうそう。 手伝ってくれたらお礼はするから。」
「もう子供じゃない・・・って言っても関係無いか。」
買い物に付き合わされるのはよくあることなので抵抗はない。 しっかりと見返りもあるので、対して文句もないからだ。
「それじゃあそれ食べたら出掛ける支度しておいて。 こっちももうすぐで終わるから。」
「そう言えばなに作っていたのさ?」
「筑前煮よ。」
そうして準備をした後で母さんと買い物に出掛ける。 車は父さんが使っている。 姉さんはそのついでに近くまで乗せてって貰っている。 帰りもたぶん一緒だろう。
「それで? 今日はなにを買う予定なのさ?」
「お肉をね。 なかなか普通の店じゃグラム数の割に高いから。」
そう言うことかと思いつつ歩道を歩いていく。 そして信号に差し掛かり赤信号を待っていると、ふと向かい側に銀色の髪が風に揺られながら青信号を渡っていく西垣の姿があった。 特に荷物なんかを持っていないことを見受けるにこれからどこか出掛けるのだろう。
「随分と綺麗な髪色の娘だったねぇ。」
それは母さんも同じだったのか、西垣の事を目で追いかけていた。
「うちのクラスメイトになったんだよ。 珍しい髪なのはハーフだからだってさ。」
「へぇ。 ・・・珍しい髪だからいちゃもんとかつけられないと良いけど。」
「流石にそれは・・・」
無いとも言い切れないと頭の中でよぎる。 あの夢の中で嫌いな奴を殺したかのような言い方をしていた。 なので少なくとも学校でそう言った輩には会う可能性があるように感じた。
「カズ。 青信号よ。」
思考を巡らせていると信号が変わっていることを伝えられたので、俺は後に続く。 西垣のことも気にはなるものの、今はまだ気にしない方向で生活していこうと考えた。
俺の週末はそんな風にただ今まで通りに流れていった。