姉の無防備な姿
「ただいまぁ・・・蒸し暑ちぃ・・・」
部活を終えた後に帰ってきたのと合わせて外はまだ雨が降っている。 湿気が多いこの時期は家に帰るだけでも嫌気が差す。
「母さん達は・・・まだ帰ってきてないか。」
今の帰ってくる時間になれば母さんが夕飯の支度をしているのだが、そんな気配がないのでまだ仕事で残業しているのだろう。 それに関しては別に寂しいと思う程もう子供でもない。
「ん・・・姉さんは帰ってきてるのか。」
最近は俺が部活に行っているため、生徒会の仕事をしている姉さんとはどっちが先に帰るかが半々になってきている。
先に帰ってきているとなれば恐らくは部屋で勉強中か、生徒会の仕事の延長をしているかのどちらかだろう。 良く言えば勤勉、悪く言えば休み知らずと言える。
俺も部屋に行き自分の部屋着に着替える。 家では半裸だったり下着姿で家の中を歩いている何て言う人もいるようだが、俺はやりたいとは思わない。 実際にあまりの暑さに下着だけになって寝たことはあったが、風邪を引くとまではいかないが調子を崩した事もある。 生じる違和感には抗えなかったわけだ。
「一旦風呂に入るか?」
そう思い部屋から出ると、ちょうど同じタイミングで姉さんが部屋から出てきた。
「やあカズ。 帰ってきていたのか。」
「・・・相変わらず部屋の近くだと無防備だよな。」
色気を一切無くしたスポーツブラとパンツを穿いて出てきた姉さんの姿に、少々呆れ交じりで感想を述べる。
「姉さん、この家に強盗とか入ってきたらどうするつもりなのさ。 万が一にもあり得ないと思うけど。」
「別に強盗に対して悠長に着替えなぞする気はない。 むしろこの姿の時に遭遇したと言った方が、状況的には圧倒的有利が取れる。」
「そんなことでドヤらないで欲しいんだが。 姉さんに彼氏が出来た時その人苦労しそう。」
「姉を慕う気持ちは嬉しいが、そこはお互いに時間をかけてゆっくりと理解し合うつもりだ。」
「その格好で言われても説得力に欠けるんだけど。 マジで優等生という服を身に纏ったような雰囲気だよ。」
「自分というものを休ませるのも優等生としては必要だからな。」
姉さんの言いたいことが分かるだけに、俺は溜め息しかつけない。 最初からそうじゃなかったことも知っているからこそ、弟とは言えそんな姿を晒すのは、女性としての自覚が少ないのではと思う。
「お前は姉想いのいい弟だよ。」
そんな表情を読まれたのか、姉さんはそんな感想を言ってきた。
「そりゃどうも。 血が繋がってて良かったね。 下手すると間違いを起こしてたかもしれないから。」
「姉の四肢に欲情するような弟なら真っ先に縁を切っていたさ。」
「冗談に聞こえねぇ・・・もうそろそろ母さんも帰ってくるかもしれないし、飯食う時くらいはなんか着てきてよ? 暑いからってそのままでいられるのも困る。」
「要らぬ心配・・・とも今は言えぬか。 本当にいい弟を持ったよ私は。」
期待をされているとは思ってはないが、油断をしないように目を見張るのも弟の務めだと自分の中で落とし込み、俺は風呂場に向かう事にした。