夏の学生服
雨がまだ降りしきる朝。 俺は起きて学生服を取り出すが、手に取ったのは先週まで来ていたYシャツよりも薄い生地のYシャツ。 普通の下地のシャツの上から羽織り、前のボタンはまだ留めない。
そんな状態で食卓へと向かい、母さんと出発寸前の姉さんと顔を見合わせる。
「おはようカズ。」
「カズおはよう。 しっかり衣替え期間に合わせてきたな。」
「まだ朝は肌寒いけどね。」
姉さんもつい先週位まで羽織っていたブレザーは着ておらず、白シャツと首元のリボンのみとなっている。 スカートも姉さんにしてはやや短めに穿いていた。
「それでは行ってきます。」
「行ってらっしゃいフミ。 カズもご飯よそってきな。」
「へいへい。」
そう言いながら朝御飯を食べ終えた俺も母さんと共に家を出る。 先日程強くは降っていないものの、傘は手放せなくなるような雨が降っていた。
「衣替え期間とは言えやっぱ寒いな。 ま、そう言ってられるのも後数日くらいか。」
週が開ければ梅雨も落ち着くらしい。 今度は暑さでバテないような対策をしなければならないなと思いながら登校した。
自分のクラスに行くまでに様々な生徒とすれ違う。 男子も女子も衣替え期間ということもあって、半袖と長袖が入り交じってる空間と化していた。
それは教室についた時も同じで男女共に一方は薄着、一方はブレザーを羽織るような格好をしている。 俺は自分の席について頬杖をついた。
「女子も薄着になるから気を付けないといけないんだろうなぁ。」
「そのようなこと、我らが気にするような事ではないぞ相棒。」
俺の呟きに反応したのはこちらに向かってきていた芦原だ。 芦原も俺と同じように薄いタイプのYシャツを着ていた。
「分かっちゃいるけどよ。 なんとなく気になってな。」
「女神の事を言っているのか?」
「いや、別に西垣に限ったことじゃないんだが・・・」
最近何故かやたらと西垣の事を考えているのは、やはり夢の影響なのだろうかと思ってしまう。
「おはようございます。 積和君、芦原君。」
噂をすればなんとやらと言った具合に西垣が登校してくる。 西垣も制服は薄手になっていた。
「おはよう西垣。 外はまだ雨降ってるか?」
「今朝よりは落ち着きましたよ。 それでも傘で守るには限界がありましたが。」
そう照れるように笑う西垣。 改めて西垣を見てみれば、制服が薄手になったことで濡れた雨のせいで身体のラインに沿ってぴっちりとくっついていた。 スレンダーな西垣でも意識を向ける程には女子特有の体つきをしている。 下はシャツを着ているため下着までは見えない。 ガードは堅いようで安心している。
「相棒、少々少々眼差しが長いぞ。」
「えっ? あっ・・・」
「あ、あはは・・・そんなに見られると、流石に恥ずかしいですね・・・」
西垣の事をじっと見ていたせいで、芦原に指摘されるまで気が付かず、西垣は身体を覆い隠してしまった。 今までの自分ではあり得なかった事象に、反省をするしか出来なかった。