弓道部の大会
週末になり俺は何時もの時間に起きるが、今日は部屋着から制服へと着替え直す。 そしてリビングに顔を出す。
「おはようカズ。 あら? 今日は学校じゃないでしょ?」
「昨日話したじゃんか。 部活の大会だって。 学校関係の大会なのに私服で行くのもおかしいでしょ。」
そう、これから俺は弓道部の先輩が出場する大会に向かうのだ。 大会と言ってもそこまで大きな大会と言う訳ではない。 近隣の高校同士で次なる夏に来る大きな大会に向けての御前試合のようなものだと言っていた。 本番はまだ先らしい。
朝御飯を食べ終えた俺は大会が行われるというでかい運動場に向かって歩き始める。
「休日はこの辺りも大分静かなんだよなぁ。」
自分の住んでいる場所がかなり閑散としていることを尻目に、学校を通り過ぎようとした時
「おや、随分と早いじゃないか。」
正門から現れたのは道着を着ている先輩達の姿だった。 声の主は臼石先輩だ。
「おはようございます。 あ、荷物お持ちしましょうか?」
「いや、気持ちだけ受け取っておこう。 自分達の荷物ゆえ他人に預けるのは少々気が引ける。」
島崎部長はそう返してくれたが、自分達の荷物を含めても弓と矢の入った入れ物まで肩に背負っているのだから、これから大会に参加するというのに体を酷使するのはどうかと思う。
しかし扱い方が分からないのでそれが正しいのかも知れないと思いながら、先輩達と運動場まで歩いていく。
「それにしても積和は真面目というか、大会の開始時刻までに来るのであればこの時間でなくても良かったのだぞ?」
島崎部長からそんな言葉を貰う。 今日の事を伝えられたのは3日程前で、その時に新入部員の集合時間は大会の開始直前までと言われていた。
「まあ良いではないですか。 こうして来てくれただけでも彼には見込みがあるということですよ。」
「・・・お前に言われるのは癪に障るが・・・それもそうだな。」
やっぱりこの2人、ただの先輩後輩って感じじゃないよな。 何かの機会にでも聞いてみるか? そんな風に考えていると目的地の入り口まで来ていた。 そして島崎部長が色々と手続きを済ませていると、
「すみません。 えっと独楽成高校の弓道部の方々でよろしいでしょうか?」
「ああ、合ってるぜ引間。」
聞き慣れた声がしたので俺が顔を出すと、引間はホッとした様子で近くまで寄ってくる。
「申請が済んだ。 これより弓道場に向かう。 だが当然我々にはこれがあるため階段を使用する。」
その言葉に誰も文句は言わずにただ島崎部長の後について行く。 大会まではまだ時間はあるようだけど、特に俺と引間がやることがあるわけではないので、俺達もそのままついていくことにしたのだった。