神の啓示を忘れない為に
「あれは夢・・・じゃないか。」
夢で言われたことをハッキリと覚えているということはただの夢ではないということ。 とんでもない運命を任されたが、やれるだけやるしかないのだろう。
「とりあえず忘れない内に・・・」
さっきの夢で言われたこと、または今後の事をなにかに書き出しておかないと絶対に忘れると思ったので、メモできる紙とペンを取り出して、眠気覚まし代わりに書き出していく。
内容としては
1:西垣 フィナンシェと交流する際は好感度を下げないようにする。
2:西垣 フィナンシェがあの夢のような行動に移るまでの原因を探る。
3:決着は1年以内。
4:自分の行動に疑問を持つことが無いように行動する。
5:これらの事は誰にも知られないようにする。
「目標としてはこんなもんか。 見えやすいところに置いておくと面倒だから・・・」
俺は机の引き出しを開けて、その奥に四つ折りで中に入れておく。机の引き出しなど滅多に使わないので、隠すわけでもなく、かといって家内でもよっぽど覗かない場所に保管した。
「カズ。 ご飯が出来てるぞ。」
姉さんに声をかけられたので急いで食卓に向かう。 食べないと後々面倒だからだ。
「おはようカズ。 あまりご飯を冷ますものではないぞ。」
「分かってるよ。 父さんはこれから出掛けるの?」
「ああ。 今度はキャンピングカーの下見にね。」
「そろそろ冷やかししか来ないって思われて出禁食らうんじゃないの?」
「車なんてそうそう買い替えれる物じゃないさ。 数馬もどうだ? 案外見るだけでも楽しいと思うが。」
「行かない。 俺は音楽鑑賞してるからいいよ。」
「相変わらず堅苦しい趣味だな。 もう少しアクティビティな趣味だったら良かったのに。」
「電車オタクの姉さんには言われたくないな。 現生徒会長の趣味としてはどうなの?」
「優等生でも息抜きは必要なのだよ。」
人の趣味にケチを付けるつもりは毛頭無いので、この辺りで会話は終わる。 安息を邪魔されたくないのは誰だって同じなのだから文句を言われる筋合いもないと言うものだ。
朝御飯を食べ終えたので自室に戻り、小さい頃から少しずつ使っていた金の中でも大金を叩いて買ったラジカセの電源を点ける。
「今朝の事もあるから、心を落ち着かせる意味も込めてクラシックで行こう。」
俺は携帯でクラシック音楽の画面に移してケーブルを接続して、こちらも良質のヘッドホンを着けてから音楽を再生させる。
俺はクラシックだけでなく、J-POPもアニソンもゲームBGMも、最近だとAIで歌っている曲も聞いている。 小さい頃に何にも興味を持てなかった俺が唯一と言って良いほどはまったのが音楽鑑賞だった。 なにに影響されたかは今では忘れてしまったが、聞くだけなら邪魔にならない為、何だかんだで楽だったりする。
そしてクラシックを聴きながらでも俺は今後の身の振り方について考える。 あの夢を現実にしないためになにをしなければいけないか。 西垣とどういった距離感で接しなければならないか。
「流石に全部が全部「なるようになれ」で済まないんだよなぁ・・・」
休日にこんなことは考えたくなかったのだが、自分の安息のためにも頑張らなければならないということだろう。
そう思いながら俺は微睡みの中に落ちていくのだった。