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彼が最後に見た景色

初めましてのかたは初めまして

私を知っている方はお久しぶりです。


今回から新しい小説を投稿していきます。


今回もちょっと変わったラブコメを目指していきたいと思い、投稿を行っていきます。


それではどうぞ。

 昇降口から外に出る。 殺戮の場と化したこの学校で、我ながらよく生き延びていたと自分を褒める。


 なぜこんなことになってしまったのか。 どこから間違えたのか。 今になって考えたところで時既に遅しと言わんばかりの惨状である。


 そして俺は雨が降りそうな曇天の中、1人校庭の真ん中で立ち尽くしている少女を見る。 風が吹き、銀色の綺麗な髪を靡かせるが、その手に持っている業物(釘バット)(彫刻刀)、そしてなにより制服が痛々しく破けており、全身の至るところに血液が付着している。 自分の物か誰かのものかも分からない。 それでも美しいと思ってしまう辺り、自分も狂気に陥っているのだと納得してしまった。


「ウフフフフフ。」


 少女は笑う。 こんな状況でなぜ笑えるのか、今の俺になら分かる。 この状況を創ったのは、なにを隠そう彼女なのだから。


「全てが壊れたわ・・・私にしつこく迫ってくる男子も、無理矢理輪に入れて優越感を得ろうとしていた女子集団も、こんな状況になっても尚なりふり構わず襲ってこようとした上級生、それを止めてくれなかった教師達も、全部、全部、壊したわ・・・」


 目線は虚ろながらも口元は恍惚とした表情をしていた。


 堪えていたのだ。 今まで彼女の身に降りかかる逃れたくても逃れられないしがらみをただひたすらに堪え、そして今、それが限界点を越えて、弾けたのだ。


 校門の外には既に警察が到着しているが、彼女が武装していること、そして恐らく後ろにいる俺が人質の状態になっているように見えることから、突入のタイミングを見計らっているように見えた。


 そして振り向いた彼女と目が合う。 その瞳は既に光が届いていない。 焦点もどこか定まっていないように見える。 だが俺は目をそらすことが出来なかった。 それほどまでに今の彼女がどれだけ恐ろしくも、可憐に思ってしまったのだから。


「ああ。 それでもあなただけは壊したくなかった。 あなただけは私に対して、何時いかなる時でも対等に扱ってくれた。 特別な存在でないはずの私をしっかりと見てくれていた。」


 どうやら俺は彼女からの好感度はかなり高いらしい。 今までそう言った連中がいたのかは定かではないにしても、たまたま俺を見逃してくれていた訳ではなかったようだった。


「ねぇ。 あなたはこの今を見て、それでも私をしっかりと見てくれていますか? もう私は後戻りは出来ない。 ですが後悔はしていません。 私にはもう帰る場所は与えられないでしょう。」


 徐々に近付いてくる彼女に対し、身動きが取れなかった。 足がすくんでいたからか、彼女から目を背けるのは良くないと思ったのか、とにかく近付いてくる彼女を、ただただ待っていることしか出来なかった。


「ならばこそ問いたい。 こんな私になっても、それでもあなたは今まで通りに接してくれるでしょうか?」


 ここで拒絶の言葉を出してはいけない。 本能的には逃げたい気持ちが勝っていても、こんな現状を作り上げた自分にも非はあると感じている。 彼女が求めているのは存在の否定ではない。 勇気と知恵と声帯を振り絞り、彼女に言葉を向ける。


「勿論だよ。 だって俺は君の――――――――――」


 自分の言った言葉が聞こえなかった。 喋っている筈なのに一言も。


「・・・そうか。 そう、ですか。」


 彼女は俯いたかと思ったら


「あなたでも、今の私を満たしてはくれませんか。」


 その言葉と共に彼女の左手に持っていた彫刻刀が俺の首を切ったようだった。


 一瞬で意識が朦朧とし、彼女の目の前で倒れ込む。


 そして全てが終わりだと分かる前に見たのは、高々に笑う君とそれを覆う黒い靄のようなものと


 笑いながらも滝のように涙を流す彼女の姿だった。

今回はかなり短めに話を区切っていく所存になります。


一応今回から毎日投稿はしていきますが、私の作品を1回でも見たことのある方は、また時期によっては週一投稿になるかもしれないことを予め宣言しておきます。


また今回は緊急で投稿を致しましたが、次回からは朝方に投稿を予定しております。


今回からの小説もどうぞよろしくお願いいたします。

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