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第一話 旅立ち①

第1話①


太陽が無くなり、夜だけになった世界。

王都・サンクチュアリから遠く離れた小さな町・ナハト、そこにいる少年 ノッテは遠く閉ざされた町に退屈をしていた。

ノッテ(退屈だ…なんでみんなはこんな鳥籠のような場所で平気に暮らしているんだろう…)

真っ暗な虚空を見詰め、自分の胸に手を当て強く握りしめる。

ノッテ(どうしてみんなは外に出ようしないんだ…こんな狭くて息苦しいのはもう嫌だ…絶対にこの町から出てってやる!)

その瞳の奥はどこか燃えているようだった。

ノッテ(何が外の世界は危ないだ! 外の世界に出たこともないくせに、お前たちに何が分かるんだ!俺の父さんや母さんは俺を置いて外の世界に行った!帰ってこないってことはそれだけ外の世界が良かったってことだ!だったら俺も外に出てやる!父さんや母さんに会いたいからじゃない!俺もそんな素敵な世界で俺自身の人生を生きてやるんだ!)

地面に転がっている小さな石ころを蹴りながら心に灯をともし歩いていく。


ドンっ

前に3人組が立ちふさがり、ノッテはぶつかる。

男A「あぁ?なんだ、夢見る少年ノッテくんじゃありませんか~?一体どこをみてるんだろうねぇ? !」

ノッテ「ゲッ」


男の一人がその細長くゆがめた顔をノッテの顔面に近づけてくる。

男B「いつも夢ばっか見てるから現実が見えてないんじゃなあい?クックックッ」

小太りの男が口に手を当てて嘲笑っている。

男C「ハハ!一本!」

ノッテより1㎝ほど身長が高い男は笑いながら見下ろす。


男Aがノッテの胸ぐらを掴む。

男A「てめぇ!ぶつかっといて謝罪は無しか!?ああ!?」

全身が震えたノッテ。

ノッテ「ご、ごめんなさい・・・」

男衆3人はノッテに嘲笑を浴びせその場を後にした。


ノッテは両こぶしを握り、下をうつむく。

目には涙を浮かべていた。

ノッテ「なんだよ、どいつもこいつも・・・」

消え入りそうな声で呟く。


そこに「おい」と少し距離を置いた場所から声が聞こえる。

振り向くとそこには10代後半の青年 ナットが立っていた。

ナット「何しょげてんだノッテ、まさかお前、またあの3馬鹿にからかわれたか?」


ナットはやれやれという風な仕草をし、ノッテに近づいてくる。

ノッテはその近づいてくるナットを警戒するような目で睨みつけ、距離をとろうとする。

近づいては距離をとられ、お互いそのやりとりを3回ほど繰り返し、我慢できずナットが続ける。


ナット「なんだよ!?」

睨んだ目のままノッテは口を開く

ノッテ「だって、お前いつも俺が馬鹿にされた後に出てくるからすげー怪しいんだよ、お前が裏で指示出してんじゃないかって」

その目はとても冷たく暗闇の中へ引きずり込もうとしているような悲しげな瞳へと変化した。


ナット「そんなわけないだろ、ただ俺は、お前が一人で何とかするんだろうと思っていたんだよ」

ノッテ「なんそれ」

ノッテは顔を横に傾け睨んだ目を点にする。


ナット「お前なら、何が起きてもどうにかしちまいそうな気がするんだ。ま、俺の買い被りかもしれないがな」

ノッテ(なんなんだよこいつ・・・いったい何を考えてんのか全然わからねーよ)

ノッテは頭を抱えて掻き毟った。

その様子を見たナットは腰に手を当てて「ははは」と笑いノッテの頭をクシャクシャと撫でその場を後にしようとする。

すると急にカンカンカンと町の鐘が鳴り、人々は騒ぎ始めた。


町人A「逃げろ!!夜獣(やじゅう)だ!」

町人B「殺されるぞー!!」

人々はパニックになり、我先にと押しのけあい移動する。

言動が伴っていない人々を見てナットは「最高だ!」といい、反対方向へと走っていく。


その姿を見たノッテはともに反対方向へついていき声を掛ける。

ノッテ「いったいこれは何の騒ぎ?」

後ろからついてくるノッテに振り向かずナットは質問に答える。

ナット「夜獣が来たんだ」

ノッテ「やじゅう・・・?」

初めて聞くその言葉に疑問を抱え聞こうとするがそれを遮るように

ユオ「ナット!ライラとレイル、ウィスクはもう現場に着いてる!」

少女のような見た目をした青年が横から話を掛けてくる。

その青年はノッテに一瞥もせずに「それで?そいつは?」とナットにノッテのことを問いかける。


ナット「こいつはナットだよ、知ってるだろ?それよりお前はどうしてここにいんだよ、アイツらと一緒にいるんだと思ってたわ」

ユオ「あ、こいつが!へぇ~」

ユオの眼はノッテを好奇の眼差しで見つめナットに戻る。

ユオ「お前が来ないからどこにいるか探してたんだよ、とりあえず見つかってよかった、多分そろそろ現場だ」

3人が角を曲がったその先には煙が巻いてあり人影が3つあった。

ライラ「おい!おっせーぞ!ナット!ユオ!てめーらサボってたんじゃねぇだろうな!」

タンクトップを着ている筋肉質で無精髭を生やした男性が後ろを振り向き怒鳴る。

レイル「まぁまぁ、ユオ君はナットを呼びに行ってくれていただけだから」

柔和な雰囲気を醸しだいているその青年はキリキリしているライラをなだめるように話すがどこかナットに対する棘のある言い方だった。

ウィスク「んで、その子・・・誰・・・」

左端にいる生気の無い青年はチラッとノッテを一瞥し、目を戻す。

ナット「あぁ、こいつはノッテだ!知ってるだろ?夢見のノッテ」

そんな異名が自分にあるのかと驚くノッテを他に前の3人は「あぁ、そういやいたな」と言うような表情をしている。


ライラが口を開く。

「ところでよ、二人が来たならとっととやるぞ、こいつ」

煙が晴れるとそこには体調5m程の謎の生物が佇んでいた。

ノッテ「なに、こいつ・・・」

驚くノッテをよそにナット、ユオは待ってましたと言わんばかりに3人の両端に行き叫ぶ。

抜晄(ばっこう)!!』

二人がそう叫ぶとナットは前腕から、ユオは背中が輝きだし

日本刀のようなものと弓の形状をしたものがそれぞれに手に握られた。

ユオ「援護は任せて」

ナット・ライラ・レイル『おう!』

ウィスク「うん・・・」

ユオが謎の生物に狙いを定め光の矢を放つと同時に3人は地面を蹴り相手の懐へと近づく。

ナットは光の刀で巨獣の左脚を切り裂き、ライラは光の槍で右脚を突き、

レイルは頭部に光のハンマーを振り下ろす。


夜獣「グヲヲヲヲヲヲヲ!!!」

夜獣は呻き声をあげ地面に突っ伏す。

ナット「さてと、とどめを刺そうか」

ニッと口角を少し上げると刀を上に振り上げ

ナット「月下九子刻斬(ワンテンポセレーネー)

真正面に振り下ろす。

刃先から青白い衝撃波のようなものが現れ、夜獣を真っ二つにする。

夜獣「グヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!」

夜獣はけたたましい呻き声を上げながら青い光となって消えていく。

その光景を見ていたノッテは腰を抜かし口が開いた状態で固まっていた。

ノッテ「な、な、なんだよ、今の・・・」

ナット「今のは夜獣、この町の外にいる化け物さ」

ノッテ「ば、化け物・・・」

ノッテの頭は今までの大人たちが言っていた言葉が巡り瞬時に理解した。

ノッテ「みんなが外の世界は危ないって言ってたのは・・・」

ナット「そう、あぁいう化け物がこの町の外にはゴロゴロといる。まさか、この町の外壁を壊してくるとは思わなかったけどな」

ナット「ま、そのために俺たちがいるわけだけどな!」

ナットは言葉も出ずこちらを見上げるノッテに向かって刀を肩に乗せ続ける。

ナット「俺たち、夜獣討伐隊(ナハトムジーク)だ!!」


ノッテ「ナハ・・トム・・ジー・・ク・・・?」

初めて聞く言葉と先ほど起こった衝撃と頭の中が整理できずヒート寸前であった。

ナット「まぁ、詳しいことは後で話すとして、とりあえず町の人たちにもう大丈夫ってことを伝えに行くか!」

ノッテの頭をポンと軽く叩くと町人達が避難している場所へと足をやった。

ノッテ(さっきのは何だったんだ・・・夢・・じゃないよな・・・)

ナハト町 西側 避難所

町人C「神様~・・・助けてください・・・」

避難所の町民たちは全員肩を寄せ合い座っているがどこか落ち着かない様子で様々な方向から声が聞こえる。

中にはぶつぶつと念仏のようなものを唱え手を合わせている者までいた。

子供たちは怯える大人たちを見て訳も分からず一緒に怯える者、そんな大人たちを放っといて仲のいい子供たちで遊ぶ者達と別れていた。

ナット「待たせたな!もう外は大丈夫だ!出てもいいぜ!」

入口からするその声の方に向くと5人の姿があった。

ナットの母親「おぉ!ナット!よくぞ無事で」

周りの人々は安堵した様子で、お互いの顔を見合わせている。


ナット一行集会場到着時 ナハト町 集会場手前

ノッテ「さっきの化け物何だったんだ・・・みんな普通に戦ってた・・・」

ノッテ(あんなのがいるなんて聞いたことない、それにみんなが使ってた武器・・・もうわからないことばかり・・・)

ノッテの頭の中を先ほどまでの非現実的な出来事が駆け巡り整理が追い付けずにいた。

ノッテ(あれが本当に存在()るんだったら、本当に俺は外に出て無事にいられるのか・・・)

ノッテは一気に外の世界に対する期待より恐怖が上回り、体が動かなくなっていた。

額からは驚くほどの汗が流れ、下半身は急激にガクガクと震えだした。

ナット「ノッテ、大丈夫か、お前には少し刺激が強すぎたかもな、でも、外に出るって言うなら一回、現実を見ていた方がいいかもしれないと思ってな」

優しく後ろから声を掛けるナットに対し、振り向かずにノッテは答える。

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