大迫力!スライムストーリー2をしただけだったのに
新しくゲームデータを作って二人プレイでクエストをクリアしていった。初期村で装備を出来るだけ整えてからクエストに挑んでもその中のボスが中々に強敵で、倒すのに苦労した。
一時間ほどが経過したとき、私の集中力が一瞬切れた。
「ど、どど、どうしてこうなったの...?」
何故かゲームをしている途中に海斗君に捕まえられたようで、脚の間に座らされていた。必死に今逃げようとしたがゲームをしている癖してすぐに捕まえられて戻されてしまう。ゲームの内容的には初期村に近い村に遊びに行った際に仲良くなった男の子がいたのだけれど、その村が魔物に襲われて消滅した事を耳にして主人公であるスライムが魔王討伐に向かうという話だ。色々とツッコミどころのあり過ぎるゲームだが、描写がとても美しい上、しっかりとCPUの台詞まで作り込まれていた。今は海斗と二人で遊んでいるので、二匹の人型のスライムが魔獣や魔物を討伐している最中だ。家にはもうゲームはないので、操作方法が中々理解できず何度も死にかけた。だが、その度その度に海斗が助けてくれた。ゲームは"ストーリーの一章が終わったら終わりにしよう"という事だったので、出来るだけサクサク進めた。その甲斐あってか、あと少しでストーリーの一章が終わるところまで来ていた。
「やっと終わったぁ~!」
と私が言うと、海斗はふっと笑った。
「真奈ってこういうゲームが意外と好きだったよね」
そう海斗が言うが、私はゲーム機を今持っていないので自分でも分からない。
「今は家にゲームがないから良く分からないけど楽しかったよ。けどそろそろ帰らないと...って...もう七時!?」
そろそろ帰らなければ流石に不味いという意見が珍しく一致したので、私は家へと帰る事にした。
しかし、海斗が「家まで送って行くよ」と言って話を聞いてくれないので甘えて一緒にしかし、海斗がの家まで帰った。――夕ご飯作らないとなー...
「ありがとう。送ってくれて」
そう言うと海斗は照れくさそうに頭を掻いた。「じゃあな」と言って海斗は帰って行ったが少し心配だったので、家の前から見ていると不意に背中を誰かに指で触られた。
「!?」
急いで振り返るとそこには蒼花がいて、キラキラとした目ではなく光が消えて曇ったような目でこちらを向いていた。
「どうして海斗君とここまで来たのかなぁ?」
「どうして時間がこんなにも遅いのかなぁ?」
「どうして!?ねぇ?どうして海斗君の家から真奈ちゃんが出てくるの!?ねぇっ!!」
と何故か蒼花が物凄い剣幕で迫って来た。
「わ、私...は、海斗君と遊んでた」
「私とは出来ない遊びかな...?」
...ゲーム機持ってないし...カセット持ってないし...流石に蒼花の家にスビッチが二台あるとは思えないし...
「蒼花とは多分出来ない。蒼花が持っていないと出来ない」
「海斗君としか真奈ちゃんはしたことがないの?」
...ゲーム自体はしたことがあったけど大迫力! スライムストーリーの2はしたことなかったなー...
「そう...だね。今回のと少しだけ違うのはした事があったけどね」
そう私が真面目(?)に答えると蒼花の顔が歪んだ。
「真奈ちゃんは...海斗如きに渡さないっ!!」
蒼花がそう叫んだ刹那、私の身体は宙に浮いていた。細い蒼花の腕のどこにそんな力があるのか軽々と持ち上げられていた。確実に何か誤解をしていると感じた私は
「蒼花...!!聞いて!何か誤解してるでしょ!?何に誤解してるかは知らないけど、お願い!!聞いて!!」
と叫んだ。「何がよ」と私の顔を見ずに蒼花が答えるのでここぞとばかりに叫んでやった。
「私の言葉が足りなかったのが悪いんだけど、海斗とは大迫力! スライムストーリー 2で遊んでいただけなの!!私が前にスビッチを持っていたんだけど今は持っていないから蒼花とは遊べないって言ったの。流石に家に二台スビッチがある家は海斗の家しかないと思って...!蒼花の事は嫌いじゃないから...!!むしろ好きだから!!」
と私が言うと、蒼花の腕から力が抜けた。そのお陰で私が落ちそうになったが、持ち前の身体能力でどうにか受け身を取った。
「ごめん...!私...てっきり...!!」
何かを蒼花が言おうとしたが私は目で制した。これ以上何か言うと蒼花がまた壊れてしまいそうだったから...
「私が蒼花の事を嫌いになる訳ないじゃん...?言ったでしょ?"ずっと"友達だって」
一瞬蒼花が辛そうな顔をしてから驚いた表情をした。
「違うけど...嬉しい」
蒼花は何もなかったように帰って行った。
...蒼花に誤解をさせると危険だということが分かったので今度からはしっかりと内容を話そうと思った。細かい事まで全て...言わなくては...と。