入学式を終え
整列をしてから教室へと戻ると、「少し自由にしてていいよ」と大野先生に言われたので、席へと座った。すると、何故かクラスメイトが集まって来た。
「凄いね水木さんって...!!さっき渡されたばっかりの台本すぐに覚えちゃうなんて、本当に頭が良いのね」
「先生の台本を少々無視してしまったので、完全には覚えてないですよ」
「水木さんって...」
...休み時間じゃないよ...質問攻めにされるのは得意じゃないんです。
「ごめん、ちょっと話したい人がいるからまた後でもいいかな...?」
と私が言うと、「あ、ごめん~」という風に去って行った。元々私の性格が陽キャ100%のではなかったので、こういう事は慣れていないのだ。
「水木さんって凄く人を惹きつけるよね」
と急に立花さんが言うので、首を横に振った。
「そんな事はないよ。私が偶々、新入生代表になったから興味本位だったはずだし...」
そう私が言うと何故か立花さんは苦笑いをした。
「水木さんは謙虚すぎるよ。あとは、ちょっと鈍感かな」
...酷い...そう思い、ふっと顔を背けた。
そういえば...と、ふと思い出した。青野海斗...ってどこかで聞いたことがある名前だと思っていたけど...幼馴染に青野君と同姓同名の子がいたな...引っ掛かりがあるままではクラスメイト全員と仲良くする事は不可能なので、あまり考えすぎて頭痛がしてくる前に青野君の席へと近寄った。
「青野君...?だよね?私、水木真奈っていうんだけど...どこかで会ったこと無いかな...?」
と恐る恐る訊くと、彼の瞳がこちらを向いた。口がパクパクと一瞬動き、席を立った。体ごとこちらを向いた彼は何時の間にか私の身長を抜いていた。幼稚園の頃は同じぐらいだったのにな...と見ていて少し悲しくなった。青野君は私の幼馴染だったのだ。
「真奈ちゃん...?」
と訊く青野君を見て良かったと感じた。同姓同名である可能性は無かったわけではないので、違う人の場合はどうしようかと考えていたのだ。
「水木さん?彼と知り合いなの?」
と立花さんが心配そうに訊いてきた。
「幼馴染なの。と言っても小学校の時は学校が違ったから幼稚園"だけ"同じだったんだけどね」
「青野君で合ってて本当に良かった...!」
と言いながら抱き着いた。抱き着く私を立花さんは剥がそうと肩を引っ張った。
「ま、真奈...恥ずかしいから...」
と青野君が言った。私は我に戻り青野君から離れた瞬間に立花さんに捕まえられた。
「青野君にはするのに水木さんは私には抱き着かないの...?」
と言うので、ギュッっと抱き着いた。
「私達、ずっと友達だよね...?」
という少し恐怖を感じる言葉を立花さんがチョイスしたので、一度立花さんから離れて二人に思いっきり抱き着いた。
「ずーっと友達だよ!!」