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入学式

「新入生の入場です」

というアナウンスを聞いた。すると、体育館の扉を先生方が開けて私達は体育館に足を踏み入れた。鳴る拍手の中、一歩一歩中へと進んでいった。それと同時に"中学生になったんだ"という安堵感。クラス毎に分けられている席に出席番号順に座り、開会の言葉を待った。

「開会の言葉」

この学校の生徒会役員だと思われる先輩が壇上に上がった。その人の足音さえ大きく聞こえる。

「これより、花王(かおう)中学校入学式を始めます。」

流石...だった。この学校の頂点に君臨している生徒会。その一人だというからカリスマ性が高いと思っていたが声を聴いただけで引き込まれる。副会長だろうか...?

「校長先生のお言葉」

「新緑が鮮やかな春爛漫の本日、ここに花王(かおう)中学校入学式を行う事が出来ることは大きな喜びであります。教職員を代表致しまして、皆様に心から御礼申し上げます。本日入学の日を迎えられた、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本校への入学が決まった新入生の皆さんが、本日の晴れの日を迎えることができましたのは、これまでの皆さんの努力の成果であると同時に、保護者の皆様や多くの先生方のお陰だ、ということを決して忘れてはならないと思います。中学校で第一歩を踏み出す皆さんが、これからの3年間、一層の努力を重ね、更に心身ともに大きく成長することが、保護者の方々やこれまでお世話になった多くの方々に報いることになります。学校での生活を楽しみながら、精一杯頑張って下さい。 入学に至るまでの努力を称えるとともに、入学を心から歓迎いたします。保護者の皆様、お子様のご入学を、心よりお祝い申し上げます。そして、この花王(かおう)中学校を進路先としてご選択頂き、深く感謝申し上げます。本日から皆様の大切なお子様を、しっかりお預かりいたします。これより先、卒業までの間、教職員一同、生徒一人一人の人間教育に対する責任と、使命の重さをしっかりと認識し、指導に邁進させていただくことをお誓い申し上げます。そして、申すまでもなく生徒の教育には、保護者の皆様、そして地域をはじめとした関係者の皆様の深いご理解と、さらなるご協力をいただかなくてはなりません。なにとぞ、引き続き、お力添えのほど、よろしくお願い申し上げます。本日の入学式にあたり、新入生の皆さんの、花王(かおう)中学校における充実した学校生活を期待し、式辞といたします」

流石だ、言っていることが生徒だけ、保護者に向けてだけ、のようになっておらず両方に対してきちんと言っている...小学校の時の校長先生は生徒に対してしか何も言っていなかったので後から保護者からの視線が...ね。

「校長先生ありがとうございました。新入生代表誓いの言葉。新入生代表の方は前に出て来て下さい」

順番が来た...けど、やるしかないんだ...!そう思い、堂々と席を立った。足が震え、心臓が早鐘を打っている。何もない風を装い、在校生代表である生徒会長の前に立った。

「っ!?」

生徒会長の顔を見たことがあると思っていたが緑川(みどりかわ)先輩だった。知人だった事に驚きを隠せず慌てたが内容を忘れてはならないという重圧(プレッシャー)で何とか平静を装う事にした。深く深呼吸をした。深呼吸のセイで一瞬苦しかったが気のせいだ。ゆっくりと顔を上げ、生徒会長の瞳を真っすぐと見据えた。

「校庭にある桜も満開になり、本校を鮮やかに彩っています。本日、四月七日に入学式を行い、この学校に無事入学できたことを感謝するとともに、感激しております。私は地元から離れてこの学校に入学することで、顔見知りの人がいない場所で学校生活がしっかりと行えるのかが心配でした。しかし、この学校に在学している皆さん、新入生の皆さん両方がとても(ゆう)しく、この学校に入学することが出来て本当に嬉しく思います。まだまだ慣れないことが多く、先輩方や先生方に迷惑をおかけすることになると思いますが、これから精一杯この学校に貢献致します。一生徒としての自覚を持ち過ごしていきます。本日はこのような場を設けて下さり、ありがとうございました。新入生代表 一年二組 水木(みずき)真奈(まな)

私がそう言い終わった瞬間、爆発的に拍手が起こった。大野(おおの)先生に渡された台本の内容を少しだけ変えただけだったので、私が評価されているようで少し居心地が悪くなった。社交辞令...かな、と思い生徒会長と礼をして私は席へと戻った。

――今まで緊張しすぎたせいでこの後の事はほとんど覚えていなかった。

  私の中学校の入学式が終わった。

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