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一日で何とか回復

ドアのドアノブをゆっくりと回し、音を立てないように足を一歩一歩と進めて行った。

後ろ手でドアを閉めて、海斗(かいと)の様子を見る。


――先程の蒼花(そうか)が来た事には寝ていたから気づいていない...?


ほっ...と胸を撫でおろし、海斗(かいと)の隣まで歩いて行った。そのとき、「真奈(まな)...?」と海斗(かいと)が軽く体を起こした。顔色は...最初と比べて幾分かマシになったようだ。

体温計を、海斗(かいと)に渡して体温を測ると、既に三十六度代になっていて、朝の時の熱が嘘のように下がっていた。私も何度かそういう体験をしたことがあったので、その時は何日か経つとすぐに良くなるので、少し安心した。

良かった...と海斗(かいと)の顔を見ながら安心していると、戸惑った表情をした海斗(かいと)の顔が眼前にあった。

どうしようかと迷った後に、無言で口角を上げてからにこりと笑顔を見せておいた。

ゆっくりと扉の方へ顔を回転させてから歩いていたのだが、

「ゲホッゲホォッ」

海斗(かいと)が急に激しく咳きこみ始めたので、もう一度急回転をして海斗(かいと)へと駆け寄ろうとしたが、面倒くさがりで物は出しっぱなし片付けない、床に置きっぱなしにするわ気にしない、そんなのは今まで引っ掛かったことが無いからこそ言える言葉だっただろう。足が参考書に引っ掛かり、

「キャァッ!?」

「うゲッホわゴホッ!?」

と倒れこん...では無かった。

「だ...大丈夫...ゲホッ...?真奈(まな)...?」

という心配をしていますという顔を張り付けている海斗(かいと)が眼前に見えた。

海斗(かいと)の行動と優しい声に私は安心したのか、海斗(かいと)が先程から咳きこんでいたのにもかかわらず、弱弱しい笑みを彼に見せ、彼の腕に支えられたまま気を失った。

一方で海斗(かいと)はと言うと、風邪で体力不足を起こしての疲労か、私の体重の重さにより、ほとんど同じタイミングで倒れ込み今日の昼ご飯と夜ご飯は起きている人がいないことで、私も海斗(かいと)も抜きになった。

――体に悪いのに...


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


気が付くと私は観客席に座っていた。

「ここは...?どこ...?」

よく見るとステージ上にはピアノが置いてあり、ステージライトを浴びて黒色の部分が力強さを帯びているように思えた。

「――ちゃん、前からずっと楽しみにしてたよね、私の音楽会! 本当は――ちゃんが出るはずだったのに...」

「――ちゃんが凄かったからだよ、ほら、早く行かないと始まるよ、ほら仮面。これがないと緊張しちゃうでしょ?」

そう言って男の子が女の子に仮面を渡していた。

「...ありがとう!」

と花のような笑顔を振りまいて彼女はステージの脇にある階段を上って行った。

「次は、大人も凌ぐ実力!史上最年少でこのステージに上がる事ができた覆面ピアニストブルーさんです!」

アナウンスが流れ、先程の女の子はステージへと上がって行った。観客席からは歓声と驚きの声が聞こえる。彼女はマイクを手に取り一礼をした。

「こんにちは、私の名前はブルーです。今までは、素顔のまま演奏をしていましたが、本日からは覆面ピアニストとして活動させていただきます。今までの動画は出来ればですが公開しないようにして下さればと思います。ではお聞きください、演奏曲はトリッチ・トラッチ・ポルカ Op.214」

そう彼女がいった瞬間会場全体がざわめいた。

私自身も驚いた。私も一度だけ演奏会の際に弾いた事があるが、難曲だったことで何度もミスしそうになったことを覚えている。

スイッチが入ったようにピアノを彼女は弾き始めた。

観客も審査員も聞き入ったようになってしまい会場はピアノの音と、時々人のする呼吸音しか聞こえなくなった。

彼女はキラキラと光って見えて"才能”なのだろうと勝手に自覚させられた。

だが時々見せる指使いが私の癖とよく似ていて時々共感していた。

曲を弾きおわり盛大な拍手を彼女は浴びていた。

達成感と開放感を顔全体で表して満足したのか彼女は一礼をしてステージから降り...ずに私の方もしっかりと見据えて口だけを動かして言った。

『思い出した...?』

――!?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「...?...ゆ...ゆめ...?」

喉の奥が乾燥して声が絡んでいた。体が纏う温かさを感じながらもう一度だけ...と眠りについた。

変更:5/12 名前の読み仮名がなかった為追加

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