風邪の際の雑炊は絶品
「海斗!どうせ蒼花みたいに朝ご飯食べずに学校行こうとしてたんでしょ?ということで雑炊を作ってみました!美味しいかは分からないけど食べた方がいいよ?」
と私が言って蓋を開けて海斗に見せると先程まで熱によってぼんやりとしていた目に光が灯った。目がキラキラとし始めたので、スプーンに載せて海斗へ近づけた。だが、食べようとしなかったので、どうしたのだろうか...と考えていると、ふと頭の隅に引っ掛かる事があった。
――そういえば猫舌ではなかっただろうか...?
私の口に近づけ、息を少し吹きかけた。どこまで冷やせばいいのかが分からなかったので、ほとんど温めていない状態にした。海斗へ再び差し出すと、
「自分で出来るんだけ...むぐっ!」
と文句を言いながらも直ぐに食べた。
元々、海斗に喋らせる気がなかったので、そのまま淡々と冷まして海斗へと食べさせ続けた。だが、途中で
「もう...無理ぃ...」
という声がしたので、渋々海斗へと差し出すのをやめて、私自身の口へと運んだ。
「美味しい...」
と思わず口をついて言葉が出た。朝から何も食べていなかったからか、ただの雑炊がとても美味しく感じられた。
もしかすると、夏休み中に毎日三食パン生活を過ごしていたからなのかもしれない。本当に久しぶりの米を食べたとしみじみと味わった。一口食べ終わり、我ながら美味しい雑炊が作れたなと満足しながら一口、もう一口と口に同じ速度でもくもくと運んでいると、海斗が「ちょっと...」と遠慮がちに声をかけてきた。ついでに服の裾も引っ張っている。服が...伸びるからやめて...?とは思ったが、「どうしたの?」と声をかけると、彼は顔を赤くさせながら口を開いた。
「あの...えっと...僕が食べたスプーンで真奈 (まな)がそのまま雑炊を食べたけど、それって...その...間接キスになってるような...」
とおずおずと訊いてきた。別に大丈夫、だいじょう...ぶ...?
んんん...?
「間接...キス...って言った...?」
私がそう訊くと、ゆっくりと首を縦方向へと動かした。
あわわわわ...キキキキ、キス...!?
私が起こしてしまったこととはいえ、海斗に自覚させられたことで、取り乱してしまい私が手に持っていた雑炊の入っている小鍋を床へと落としてしまった。
ゴトリ...という鈍い音が部屋に広がった。
私はその音で現実に引き戻され、小鍋の落ちた床を確認した。雑炊を私がほとんど食べきっていたことが不幸中の幸いで被害はほとんどなかった。
しかし、人の部屋にご飯をこぼしてしまった事と、海斗はしてほしくなかったと思われる間接キスを私がしてしまった事が申し訳なく、口から言葉がついて出た。
「ごめん...!間...接キ、キ、キ...スなんてするつもりなかったの...ただ、作った物を粗末にするのは勿体ないなと思って...それに、私の朝ご飯にもなるから一石二鳥かなと思って...あ...」
謝った勢いで私自身も朝ご飯を食べていなかった事を自白してしまった...と気づいたのは海斗に言うべきだった事を全て言い終わった後だった。
恐る恐る顔を上げて海斗の顔を見ると、ニコニコという笑みが張り付いていて「真...奈?」と声をかけてくる。
――この後、私が海斗に怒られるという事はこの状況を見た誰にでも容易に想像できることだろう。




