風邪に罹るとやはり雑炊を
「真奈?考え事?」
と海斗がいつの間にか声をかけてくれたので、今まで何か言っていたのだと確信した。
それを確信すると共に、申し訳なさがこみ上げてきた。
「ちょっと考え事というか悩み...の方が近いかな...もしかして海斗、何か言ってたりした?もし話かけてくれてたら全部無視しちゃってたよね...?私...」
と訊いたが少し顔に笑みを浮かべて「何も言ってないよ」と海斗は言う。
――こういう時って大体何か言ってるんだよね...
海斗の目を申し訳なさで直視出来なくなったが学校へと顔を海斗が向けたように感じたので顔を上げた。横顔が少し赤く見えたので熱でもあるのかもしれない。季節外れの風邪なのかもしれないと思い、
「海斗!」と声をかけ、「どうしたの?」と海斗が振り返った際に額に手をあてた。
普通に熱い...
熱を帯びていて、よく見ると首筋にうっすらと汗が光っている。
手を掴み、私は学校とは逆向きに歩きだした。
「どーしたのー?」と海斗が声をかけてくる。よくよく聞くと声がふわふわしている...文の語尾が伸びているので熱があるのだろう。海斗は何をするのかが分からないけど学校行かないと遅刻しない?という表情を海斗はしているが、熱がありそうなのに学校に無理に行って無理をして...倒れられるのが一番心配なので、すべて無視をした。
スタスタと一定の速度で私の今住んでいるアパートまで歩いた。
...そう言ってもすぐそこなんだけど...ね?
海斗を家にいれ、体温計を渡した。素直に脇に海斗は挟んだが立ったまま測ろうとしたため、あまり良くないだろうが肩を抑えて椅子に座らせた。機械音が鳴り、海斗が体温計を渡してきた。数値を見ると三十八度五分を示していた。お互いに両親が家にいないので、学校を休んで看病をさせてもらいたいと大野先生に連絡することにした。
「はい、もしもし、花王中学校の大野です。どちら様でしょうか?」
「もしもし、花王中学校の一年二組の水木真奈です。本日、青野海斗が熱を出したため、看病をするために私も休ませていただきます。」
私がそう言うと、「分かりました。青野さんには安静にするように伝えてください。では」と言って大野先生は電話を切った。
――大野先生には後日、差し入れという名の恩返しをさせてもらうこととしよう。
「ごめんな、真奈」
そう唐突に海斗が言った。私は少し動きが止まったが、すぐに動きを開始した。少しカクついた動きになってしまったが、多分気付いていないハズ...だ。
「真奈に心配させたくなかったから学校に行こうとしたんだけど...な。逆に心配させてたな。ごめん、な...?」
うーん...心配をさせたくないから学校に行く...?どういうことだろうか?
「心配のほうは別に友達だから当然だけれど...逆...?ってどういうこと...?」
私がそう訊くのだが、急に咳きこんだ。息が苦しいのだろうか...?深呼吸をしていたので、海斗の背中を優しく上から下へとさすった。ベッドを私は指をさし、背中を押しながら手を掴んでベッドへと連れて行く。
「悪い」と一言、海斗が言った。連れて行くといっても海斗が動こうとはしないので、ほとんど私の押す力でベッドへと近づいていく。
そしてベッドの直ぐ傍まで押してベッドに寝かせた。
「学校を休んだら蒼花にも真奈にも迷惑がかかるだろうなと思って、どうしても行こうと思ったんだ。元気に振る舞って学校に行けば大丈夫だろうって。けど、熱があったからかいつもどんな行動をしていたか分からなくていつも通りじゃない行動をしてた。休んで心配させるんじゃなくて目の前で弱ってるのを見せられて勝手に休んでいるよりか迷惑も心配もかけてしまったなって...」
海斗がまだまだ話を続けそうだったので、私は海斗の目の前に一本だけ指を立てた。すると静かになったので、
「海斗は体調が悪いんだから、話すの禁止!早く風邪治して欲しいんだから喉を必要以上に使わないで」
と私が釘をさすと「うっ」というような辛い表情を一瞬見せたが、風邪をひいたのが自分が体調の管理不足が原因だということを自覚しているようで大人しく静かになった。顔色を見る限り海斗もどうせ蒼花みたいに朝ご飯を抜いているのだろうと思い、蒼花が風邪をひいた時のように雑炊を作ることにした。雑炊を作りながらそういえば...と思い出した。私が珍しく早く起きていたのにも関わらず呟きをしたお陰で朝ご飯を私も食べていないな...と。流石に人に食べなさいと言うのに自分自身が食べていないのでは示しがつかないので、私の作った雑炊を海斗が食べ残したものでも食べようかと思う。
追記:2024/4/13 誤字修正




