機械音痴の私の朝
蒼花はこの後三日間休んでから学校に来た。蒼花が休んでいる日は毎日、毎日蒼花の家へと向かった。雑炊を食べさせていたのだが、途中から雑炊が飽きたと言い出したので他の食事を作ったりして蒼花が元気になるようにと毎日願いながら食事を作った。蒼花は毎日、「美味しい」と言って食べてくれるので作る側としては作るのが毎日楽しかった。
蒼花が学校に来てからは特に変わりない日々が続いて気が付くと夏休みを迎えた。一年生だったため、まだ三年生と比べてそこまで多忙な日々ではなかった。だが課題は山のようにあったので、テキスト類を一日目などで消化し終わり、即終わらせにかかった。そのころにはクラス全員とも大体仲良くなった。夏休みが終わる前日に「カラオケにクラス全員で行かないか?」と聞かれたが、丁度言われた日が蒼花や海斗と映画を見る約束をしている日だった上、もう既に映画の予約をしていて私はキャンセル方法もわからなかったので、
「申し訳ないけど...予定があるから次の機会に誘ってくれるかな?」
と言ってやんわりと断った。
予約を取った映画は”ムービーチケット”という物を取っていて、通常のチケットより値段が高い物だった。前売り限定だったのでその時に貰ったアニメの特別特典も手放すには惜しかった...のだろう。私は内容は知っているがそこまでほれ込んでいるアニメではなかったので蒼花と海斗の反応である。
自由研究をしながら他の事を考えていたせいで実験が失敗したのでもう一回することになり、その実験が終わったころには七時を回っていたので夜ご飯を簡単に作り、実験のまとめを書いた。意外とまとめにかかる時間が長かったので私が布団に入る頃には十一時を回っていた。
...明日、映画を二人と見に行く予定...なんだけどなぁ...
目覚まし時計をセットして私は眠りについた。
“ピピピピ...”という電子音で目が覚めた。ん...と声を出して起き上がったが目覚まし時計のセットする時間を間違えたようで起きる予定の一時間前に鳴らしてしまった。
...五時間も睡眠できなかった...
基本的に五時間以上寝ないと次の日に体がバキバキになるとわかっていたので、時刻を間違えた昨日の自分を恨んだ。
体をほぐすために朝ご飯を食べて、外へ出た。外へ出るとまだ日は昇っておらず少し薄暗かった。”学校までランニングをして帰ってこよう”と目標を決めた上で走り出した。運動神経はそこまでよくはないので、自分の体に大きい負担がかからない程度の速度で走った。風が頬に当たって走ることで火照る体を冷やしてくれた。今の時間帯でこの気温だったらどこまででもいつまでも走り続けれそうだなと思う。だが、走り続けないようにするために決めた距離設定だったのでもう少し長い距離を目標にすればよかったなと後悔しながら学校へ、家へと走った。
家へと走り込み玄関にある時計を見た。一応五時半を指していたので時間つぶしになったな...と私の部屋へと戻った。
部屋へと戻り、机の上に置かれたままのノートパソコンを手に取った。そこから二十四時間営業のカフェに向かった。
「お久しぶりです。最近調子はどうですか?」と店員さんが私に訊く。この店員さんとはよく会うので顔見知りになってしまった。
だが、彼女は小説家である。最近大ヒットした「桜舞う日に君と」という小説の著者である。彼女は私の仕事の際にたまに会うのだ。
――そう、かく言う私も小説家の端くれなのである。今日二人と見に行く映画は「転成した二人の運命」という私の書いた小説が基となったアニメ映画なのである。
「お久しぶりです。最近は書く気分になれなかったので、少し学校生活を満喫してました」
私がそういうと彼女は深月さんらしいと笑った。
「ですが、ほどほどにしてくださいよ?読者さんが続きはまだなのかとワクワクしていたのよ?期待が大きくなりすぎないうちに早く書いておきなさいよ~」
と忠告してくれた。だが、私は書く気になれないと小学生より悪い内容の物を書いてしまうので書きたいときに一気に書く派なのである。
「じゃ、いつもの部屋借りてもいいかな?」
「大丈夫ですよ、お代は1500円です」
いつもフリータイムでずっと借り続けるので私がいうのが分かっているようだ。
「流石、海夜先生です。次回作も楽しみにしておきます」
「私もそうですよ、お互い頑張ろうね」
私は代金の1500円を置いていつもの部屋へと向かった。
通路の一番奥にある個室へと入り、内側から鍵を閉めた。前は毎日のように使っていた部屋だったので凄く落ちついた。
今、書いている途中の「世界唯一の聖女ですが婚約破棄された上に国外追放されました」という小説の続きを書こうと思い立ち、書くことにした。
主人公であるソフィアの婚約相手のある国の第一皇子に急に婚約破棄を言い渡された上で国外追放されるという負の二連コンボをソフィアは受けるのだが、ソフィアは聖女なので魔法のような物が使える。そういっても魔法ではないのだが、普通の人が起こせないような奇跡を起こす。その力を自分以外に使うことで主人公は旅をしている。一応今は婚約破棄をしてきた元婚約者の隣国で力を使っている。
聖女ちゃんを海夜先生に見せた時に「内容が最近薄いよ」と言われたので今回からは気を付けたい。新しく内容を考えるのが嫌になった時には前書いていた小説の内容を加筆修正行うことにし、七時過ぎまで作業を行うことにした。二時間も滞在しないのに何故フリータイムにしたのかというと一時間だと短すぎるし、二時間という設定がないので三時間等々にすると「アラームが鳴るからいいや」と思ってしまい八時頃に待ち合わせをしている場所に間に合わなくなるのでフリータイムで、呼んでほしい時間に呼んでもらえる設定にしている。私は納得してから終わりたい派なので、ギリギリまでここで小説を書く。
一時間程が経ち、フリータイムにしていてよかったとフリータイムのありがたさを噛みしめながら本日”三話目”の聖女を書き終えた。
時間がまだまだあるので、次話の話を少しだけ考えることにした...が、時間の流れは残酷で海夜先生が時間を告げに来た。
「七時二十分になったけど進んだかしら?深月さんのスピード的にはもう二話は書き終えたのかな...?」
「全然です。今日上映予定の転二じゃないので、それ換算にすると二話も書けてません」
そう私が言うと以外そうに目を見開いた。
「深月さんが二時間近くいて二話書けなかったのって珍しくない?今日何かあるの?」
...「それがですね...」
私が友達と自分の映画を見に行くことになったことを伝えると海夜先生は苦笑いをした。
「確かにね...自分の書いた物だから見てた時に”こうじゃない”とか思っちゃうから口につい出しちゃうよね~わかる。友達には著者だということを伝えてないだろうから言ってしまった際に対応に困るし...ね。ま、一応自分が”まだいい”と思った部分を言えばいいと思うな。そうしたらまだ友達との関係はギクシャクしないはずだしね」
と海夜先生は言う。確かにその通りだなと納得した私は、店を出た。家に帰るときには既に日が昇っており歩くだけで汗が出た。
「自分の作品でまだいいと思ったところを言う...か」
ボソッと呟いたが周りには誰もいなかったので風に乗ってその言葉は消えた。
家へと入り、靴を脱ぐ。ただそれだけの行動でも意味があるのでは?と考えそうになる今。




