風邪に罹った蒼花の家へ
数日が経ち、学校に行ったのだが今日は蒼花が休んでいた。
いつも同じメンツで過ごしているからか誰か一人休んでいるだけで凄く違和感を感じる。
蒼花は陸上部なのだが、陸上部があまりにも過酷すぎるのだ。グラウンドがぬかるんでいても、雨が本降りでも走れそうだと顧問が判断すれば練習があるという地獄のような部活である。
因みに陸上部の休みはここ二ヵ月は見ていない。即ち、私達が花王中学校に入学してから(日曜日以外は)一回も部活が休みになっていないのである。陸上部の顧問は何があっても休みにしないという事である。蒼花が今日学校を休んだ原因だと思われるのが昨日の大雨の中、練習を行った事で元々風邪気味だったことも相俟って風邪を発症したみたいだ。
顧問は練習の際には屋根の下で声を出しているそうなので風邪もひいておらずピンピンしているそうだ。陸上部の"練習が過酷すぎないか"と何度か問い合わせがあったそうだが、"私も一緒にしていますので"と平然と嘘を吐いているそうだ。何時かバレて重い処罰があればいいと思う。
話は変わるが、蒼花が休んでいる分の学校のプリントは蒼花と仲の良い私と海斗になった。学校で生活をしていて海斗と話をするのは楽しいが、蒼花が一緒にいないと少し寂しいのが現実である。
「海斗~...蒼花ってさ、意外と頑張り屋さんだよね」
と言うと海斗は急に声を出して笑い始めた。最初は声を噛み殺していたようだが途中から我慢できなくなったようだ。そういえば海斗はこういう人間だったなと幼稚園の時の記憶を思い返して思いなおす。最近おかしかっただけなのだと...
「"意外"って言うなよ、頑張り屋さんだからこそ今回、風邪を発症したんだろ?普通に体調が悪いって分かってるのに顧問に何も言わずに練習するか?頑張り屋さんって蒼花自身に後で言いなよ?」
と海斗は言う。因みに笑っていたのは"努力家"と言わずに"頑張り屋"と言った事がやはり私らしいと笑っていたそうだ。海斗によると、学校では優等生のような振る舞いを私がしているように見えるようで心配をしていたので今回の私の言動を見て聞いて安心した...らしい。
...少し複雑だな...自分自身で自覚がなかったので何とも言えない。そうして部活に入る気が微塵もない私達は学校が終わり次第蒼花の家へと向かった。お互いの家は知らなかったので先生に住所を教えてもらったのだ。海斗は知らないが私は重度の方向音痴なので、道案内(?)は海斗に任せることにした。
私達の家とは正反対の方向へと向かうので私は余計に知らないと言いたいが、海斗も知らないハズなのでサクサク進んでいる様子に驚きつつ、海斗についていった。
「ここか...?」
と急に海斗が止まって声を出したので背中に私は当たってしまった。
「ご、ごめんっ!」
「別にいいよ、ていうか立花って書いてるから多分合ってるよな?」
と海斗が言う。
「インターホンは私が押していいよね?」
「いや、僕が押す」
「いやいや、私が」
「いやいやいや、僕が」
とインターホンを押すのは私だ僕だという論争をしていると本人が出て来てしまった。
「真奈ちゃん!海斗君?どうしたの?」
と言うと咳きこんでしまったので、申し訳ないなと思いつつ「家、あがらせてもらうね」と言ってあがらせてもらった。蒼花の両親は風邪をひいている蒼花を置いて仕事に行っているそうだ。食欲がないからと昨日の夜から何も食べていないそうだ。
「...食欲が無くても体に悪すぎる...」と言う私と海斗の押しきりによって台所を貸してもらえることになった。
一応雑炊でも作るか...と炊飯器に残っていたご飯を土鍋に取り出し、雑炊の素を中に入れ、水も入れて火をつけた。正直私もお腹が空いているので、雑炊を作る際だけで何回お腹がなったことだろうか...
「真奈、林檎をすりおろして蒼花ちゃんにあげたいんだけど...」
と海斗が言うので、すりおろし器を引き出しやらなんやらを開けて探した。
何とか林檎のすりおろしと雑炊ができたので、
「蒼花できたけど...入っていい?」
そう私が訊くと「いやだ...」と言うので、
「海斗、流石に二人して遅くなるのはよくないから先に帰ってて」
「え、けど...」
と何か言おうとする海斗を私は家の外へと追いやった。
異性が自分の部屋に入ってくるのは誰であっても嫌だろうと思ったからだ。
「蒼花、私だけだから入ってもいいかな?」
そう訊くと「いいよ」と言ってくれたので入ることにした。
部屋は白色で統一された清潔感のある部屋で蒼花はベッドに横たわっていた。
"咳き込むからマスクを外したくない"と蒼花が言うのだが、食べてもらわないと困るので説得してマスクを外してもらった。
顔全体が少しほてっているようだったので、保冷剤を持ってきてタオルに巻いて枕と交換した。
「蒼花、雑炊食べてね?」と言って体を起こさせた。スプーンにのせて雑炊を蒼花の口に運んだが息を吹きかけていたので、スプーンを私の方へ向け、息を吹きかけた。
――蒼花が猫舌なの知らなかった...
そう思いながら蒼花に再びスプーンを向けた。
「はむっ...美味しい...!」
と言いながら沢山食べてくれた。因みに何故か海斗がすりおろした林檎は食べてくれなかった。
「林檎食べないの?」
「食べないっ!」
そう言い続けるので仕方なく雑炊に少し混ぜて食べさせた。すると、意外と美味しかったようで沢山食べてくれた。




