プロローグ
「真奈は凄い子ねぇ...これからもっとピアノの才能を伸ばせば、直ぐに有名になれるわよ...!!」
これが母の口癖だった。
母はいつもそう言っていた。
だが、私のピアノ人生は、小学四年生の時のコンクールで全国二位になったのが私の最後だった。
「真奈にどれだけ私がお金を注ぎ込んだと思っているの!?」
母に初めて思いっ切り殴られた。そして、その日は初めて母に怒られた日でもあった。
母に殴られた右頬は熱を帯びてヒリヒリと痛んだ。
ピアノは好きで始めたのではなかった。"母を喜ばせたいから"という純粋な気持ちだけでピアノは続けた。けれどピアノの才能は思ったように伸びなかった。
「もうピアノなんてさせませんからね!!」
そう言われたのが小学校五年生の三学期頃だった。
その後は家にあったグランドピアノを売られた。
私のお小遣いを貯めて買ったペダルを踏むための踏み台も――
いつの間にか売られていた。
「お母さんなんて知らないっ...!!」
そうやって小学校六年生...中学校の入学式一ヵ月前に家を飛び出した。今では地元では行方不明...とはなっていない。母は私の事を前々からなかった事にしたかったからそうだろうと思っていた。
...私だって知らない...
そうやって私は卒業式も出来ないまま地元を去った。
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修正3/5 名かった→なかった