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前置きの話
――……レグナムブレスの死から千年の後。
オオカミたちは使徒の血も薄れ、大地を駆け、木の根をくぐり、群れなして獲物を追う獣と成り果てた。
その頃になって、人間たちが台頭してきた。
人間が文化と文明をもって世界を切り開いてゆく時、オオカミは森を追われ、棲み処をなくし、時に人間たちの家畜を襲うほどに落ちぶれて困窮していった。人間は、オオカミを敵対すべき害悪とした。その大きな体と鋭い牙は人間たちに恐れられ、また、希少な宝石と同じ価値を見出させた。
オオカミたちは次々に狩られていった。毛皮を剥がれ、コートや剥製となって人々の征服欲や所有欲を満たした。
やがて、オオカミは人間の前から姿を消し、滅んだと噂されるようになった。
千年の森レヴァンネンダール、何人も踏み入ることのかなわぬ深い木陰に、最後のオオカミの楽園があった。貴き四使徒の末裔は森に集い、細々と存えていた。
レヴァンネンダールのそばには、信心深い人々が集って村を築いた。小さな村の人々は創世神話を魂の拠り所として、森に棲むオオカミたちを畏れ敬った。オオカミは尊きもの、貴きもの。彼らは森を守り、誰にもオオカミがそこに暮らしている秘密を話さなかった。




