第8話 都会に行く 後編
――王都マリード
城壁にはパンパンに家屋が立ち並んでいて、商人も活発に商売をしている。
吟遊詩人がケトル音楽を奏で、傭兵が安酒を酌み交わしている、
「すげえワインの試飲会だ!!」
あれ無料で飲めるのかあ、無理やりとって飲みたいなあ。
「父上はあのワインを飲まないのですか?」
「ああ、ワインは上質な店で嗜みたいからな、豪農の嗜み方としてこれは基本だから覚えておけよ、あんな安酒で体調を崩しても困るからな」
「分かりました父上、ただ、今回だと知らない流浪人から弁当を買うのは不味くないですか?」
ちょっと煽ってみた。
「あれは旅の楽しみ方としてありなのだ、お前も自分で長旅をする時が来るならわかる時が来るだろう」
「そうなのですね、まああれは美味だったから良しなのでしょうね」
「あれは、美味ではないぞ、ただ醍醐味なだけだ。庶民のような舌を持つようでは笑われるぞ」
こいつうぜええ、俺前世お前より稼いでたけどコンビニ飯が美味いって感覚忘れてねえからな!!
しかも何だよ、インスタグラマーと同じ感覚持ってんじゃねえぞ!!何だよ醍醐味なだけって!!
「そうなのですね、気をつけたいと思います」
「そうか、王都では美味な食事が沢山ある。せっかくだから学ぶと良い」
なるほど、そうなるとよだれが垂れるな。
だけど、ジャンクフードの美味さが分からない馬鹿舌はクソだからね。
王都のレストラン。
イニャスはここに来るのを楽しみにしていたらしい。
スディモタの高級チースと生ハム。
明らかに素材が豪華なスープ
そしてシンプルなサラダに、富裕層が好むとされる牛肉のステーキ。
非常に豪華である。
「貴様はこのようなものを食べるのは初めてか?」
「いえいえ、王子の護衛時代はよく食べていましたぞ」
「そうなのか、非常に驚きであるな。何故、職を解かれたのか?」
「正確には停職ですな。色々あったのですよ」
「そうか、それは非常に残念であったな」
いい暮らししてたんだなあ、ミッシュルマン。
てか、今護衛やってたって知ったのか。
「しかし、ここまでご苦労だった。剣術の腕は本物だし、息子は貴様に非常に懐いている。もし良かったらだが剣術の師範として我の元で働いてはくれぬか?
職が無く草原を放浪するよりは良いだろう?」
うんどうなるんだろ。
「勿論、しかし給料はそんなにいらんですぞ。最悪、狩猟をして生きていけるので、お気遣いなさらず」
「なら、お互い都合が良いな、最悪衣食住を共にしても良いがいかがななさる?
勿論、復職できるまで面倒を見よう」
おい、クソイニャス、俺がいないところで勝手に話進めるな。
友達がいるのはいいことだが、住むとなれば話は別だ!!
「いえ、私は仲直りせねばならぬ所があるのでな、今回護衛の任務に就かせて頂いたのは、詫びの品を買う目的で来たので」
「成程、私としては貴様を懐に置いておきたいがであれば仕方がないだろう。でも、気が変わったようであればいつでも私に申してくれたまえ」
「承知いたした」
そういい、交渉は半分通った。
ぶっちゃけ、ミッシュルマンとは仲良くなっていたのでベストなタイミングだ。
「しっかしなあ」
手で食べ物を食うのは何とかならない訳??
夜になった。
夏真っ只中のこの季節。
なんと王都には公衆浴場があったのだ。
ペストが最近無くなりつつあり、お風呂場が復活しているそうだ。
テルマエ=ロ○エを彷彿とさせる空間で、4年ぶりともなる風呂の登場に心が躍ってしまった。
最近は水浴びばかりだったのでかなり嬉しい。
そうして3人で湯船に浸かるのだが、天然の温泉だからかやはり温もりがある。
前世では考えられないくらいの人数が浴槽に浸かり汚れを落とす。
「キモチェええええ!!」
と心の中で思い、少しうたた寝をしてしまった。
そしてホテルへ向かう。
山の頂上の宿の方がよっぽど良かった。
贅沢かもしれないが、ベットは硬いし、部屋は狭く、何より匂いがキツイ。
シーツには黄色いシミだ。
誰かお漏らしプレイでもしたんだろうか。恥ずかしいからやめろ。
イニャス曰く、王都は物価が高いため、この程度のホテルでも結構お金がかかるとの事。
帰る時の事、ミッシュルマンに発生する給料、肝心な美術展覧会の入場料等。
それらを考えた時、あまり贅沢はできないのだと言う。
それぞれベットに着いたのだが、やっぱりクロエに抱かれて寝る時の安心感ぱねえなとも思い少し寂しい思いもしている。
別に、性的な目で見てるわけでは無いんだからね!!!
翌日。
ラ○クを彷彿とさせるような衣装に身を纏い、髪はオールバックにしていく。
フケがないかとか、様々な細かい点を確認し、宿を後にする。
そして、王都の中でも名高い国立美術館へと足を運ぶのであった。
王都といっても、第二の壁内にあるエリアであり、少し距離がある。
王都には壁が3つあり、一番外の壁は庶民の生活地。
商人達は物を売り、レストランやホテルが立ち並び、喜ばしい喧騒で溢れている場所。
昼から傭兵が酒を飲み、陽気な音楽が流れている。
そして次に外の壁は、少し敷居が高くなる。
ここからは下級貴族相当の身分又は特殊な事情がある場合でなければ侵入できない。
美術館に、貴族の住処や裁判所。
人気役者が集まるオペラや博物館、様々な学術機関などが立ち並ぶ。
大国の重要な機関が集まるのだ。
そして音楽堂という施設があるらしく、そこで作曲家達は曲を作っているらしい。
それは音魔術を操れるものが限定だそうだ。
作曲家達は貴族と踊り狂い楽しい夜を過ごしているとのこと。
実に羨ましい。
最後に一番内壁にあるのは王城だ。
そこには騎士が駐在しており、寮生活で選抜された騎士が武芸に励む。
ものすごい広い宮殿らしいのだが、俺たちは侵入することを許されていない。
「歩きすぎじゃねえ??」
街は人口が多いので、貴族と運搬用の商人以外は馬車を引いてはいけない。
歩くのがきついですな。もう一時間くらいだべよ。
そして歩くこと2時間くらい。
「着いたあ」
カリフリア国立美術館に到着だ。
まるで宮殿のようなしっかりとした佇まい。
遠目に見える王城と比較しても引けを取らない。
ミッシュルマンは特殊な事情があり鑑賞料無料でイニャスと俺で銀貨4枚支払う形になる。
ちなみにこの国の銀貨一枚は現代の価値観で1万円ほどになる。
一人あたり2万くらいだろうか。
ミッシュルマンは龍神流皆伝の免許があるので無料で見れるそうだ。
少し兵がざわついてはいたが何とか入る事が出来た。
題名は「ジュディルの民の怠惰」
という題名。
混沌期はニヒリズムや唯物論を信仰した愚かな民が、ジュディルによって天罰を下され、大病流行、魔法科学の停滞、海賊や山賊の台頭などの様子が描かれている。
反フロシア的、反サガ大陸的、反黄金国的な主張も書かれており、かなり過激な思想を持った作者なのだろう。
少なくとも黄金国については、強すぎて批判すらできない空気あるので、作者は徹底的な音神&ジュディル信仰主義なのだろう。
人は俺以外にも何人かいたが、大人数というわけでは無かったのでゆっくり見ることが出来た。
30枚近く絵がある中で気になった絵を紹介していこう。
「奴隷にすらなれない屍」
前世、俺が死ぬほど憧れた光景。
そして、痛々しい光景。
骸骨が、食べ物を探し、家の建設を手伝っている奴隷を眺めている絵。
裏路地にいるガイコツと太陽の元にいる奴隷という構図が対比されているようだ。
そして、木の箱のように座るガイコツは剣を磨いている。
何か物を盗もうとしているのだろうか??
ストリートのゲトーキッズの現実は目も当てられない物だと、気づいてしまった。
兎に角、俺の憧れていた自由はこの世界では悲惨すぎるものらしい。
生ぬるい環境でラップ出来てたんだと感じている。
「革命」
南ジュディルの国々で一揆が盛んに起こっている様子だ。
フロシア軍は魔物の様な様子で描かれている。
まるで悪魔みたいだな。
俺は戦での革命に巻き込まれるのは嫌だなあ。と感じている。
だって、面倒くさいじゃん。
「雷神の気まぐれ」
雷神は現存する神であり、現人神として多くの人に慕われている神だ。
雷神は自身崇拝思想を捨て、現在音神の代わりにジュディル教の教祖になっているらしい。
雷神は気まぐれな神であり、北方魔族に高い地位を与えてもらう代わりに、カリフリアに手を貸したり、ジュディルの民を統たりするから態度がコロコロ変わるらしい。
それを皮肉ったのか様々な高そうな服がゴミの山のように積み重なっている。
一貫性が無いことへのdisなのだろうか??
「エルフの首」
魔族に対してカリフリアは排斥的だ。
魔族差別を俺たちは見ていくんだろうか。
「摂関政治」
ダイヤモンドに王の顔が写されており、それをぶら下げている上級貴族。
確かフロシア大戦前、政治の実権握ってたのってその貴族らしい。
実質皇帝は傀儡で、操り人形。
その事から、貴族一族は皆殺しにされたが皇帝は不問になったくらいだ。
「糞尿とクチナシ」
香辛料が詰まったマスクを付け、体に糞を塗りたくっている女性。
当時のペストの治療として不潔でいることで防げると言った迷信が流行った。
その後ろで、人々が山のように倒れ、背景には神が人々をあざ笑っている。
しかも農業政策の軽視で薬草は不足するわで最悪だったらしい。
この病気は実際のところカノン草で用いるマナで十分、しかも中級回復魔術で治せるのだそう。
おかげさまと言うべきか、今ペストにかかる人はそうそういないのだそう。
薬草でどうにもならない病気が出てこないと良いのだがなあ。
このくらいだろうか、他にも沢山の絵があったが引き込まれることは無かった。
混沌期の闇の実情が忠実に描かれており、昔の人は大変だなあとしみじみと思う。
イニャスは真剣な目つきで俺が興味ない絵画ばかり力説している。
「いいか、ジョルジュ。この絵画の趣は当時、雨が全く降らず畑が枯れ果ててしまっている状況という悲観的状況が分かってしまう事だ。
清々しい青空ではあるが、太陽は黒く光っている。
ああ、神よ、当時の先祖の蛮行をお許しください。」
この絵も嫌いではないが、吸い込まれるほどの絵ではないんだよなあ。
まあ、イニャスの家系は大々農家だから、雨が降らないことの深刻さがわかるのだろう。
俺たちは絵画をじっくり鑑賞し、美術館を後にするのであった。
喫茶で紅茶を嗜んだ。
王都にはカフェのようのものがあるのだと腰を抜かしてしまったよ。
喫茶ではお菓子のようなものは無く、シンプルに紅茶だけだった。
しかし、少し疲れていたのでこういう時間が取れるのは非常に良いことであるなあ。
そして帰路を辿る。
夜に出発しても危険とのことなので、明日の朝出発するらしい。
とりあえず、第二門を通り抜け、第一門エリアに入る。
とりあえずミッシュルマンの詫びの品物を代わりに買った。
イニャスの奢りだ。
俺の剣術の指導と護衛の褒美ということらしい。
それで買ったのは黄金島で生産された高級酒。
「日本酒っぽいなあ??」
飛騨丸というお酒の名前だ。
「名前はよく分からんが、このタイプのお酒はお喜びになるかと」
「成程、味はどのような感じなのですかね」
「わかりませんが、このタイプだとスッキリしていて舌が痺れるでしょうな。
少なくともこのタイプのお酒にハズレはないですぞ」
まず言っておく、この酒は辛口だ。
お前の推測は当たってる。だが、日本酒は正直好み分かれるし、欧米人が好きそうな味ではないからやめるべきだ。
「ウイスキーとかの方が手軽で良いのでは?」
「大丈夫ですぞ。彼はおかしなお酒が好きなのでな」
なら別に止めないよ、後で何かあっても俺の家に泣きつくなよ。
そう笑いながら過ごしていると。
「ガキに何か擦られたな」
イニャスが何か勘繰っている。
ミッシュルマンの視線は後方に向く。
「あのガキ殺せ」
イニャスの物騒な発言にミッシュルマンは瞬時に動く。
裏路地の方を一瞬で移動する。
「うわあああ」
薄汚いローブ、今にも擦り切れそうな布だ。
体は痩せ細っていて、汚れを帯びている。
そして、安そうな短剣を装備している。
今にも泣き出しそうな少年。
「これがストリートチルドレンの実態なのか」
俺は唖然とした。
盗まれていたのは、手にぶら下げていた鞄。
この中には、財布や書籍など貴重品が入っている。
恐らく、手が緩んだ一瞬の隙を狙ったんだろう。
しかし、ものすごい瞬発力だ。
それでも、龍神流皆伝の凄腕剣士の前では、動きの鈍いネズミでしか無かった。
少年は泣きながら謝っている。
「ごめんなさい、命だけは許してください」
見た目では7歳ほどだろうか?体格は俺より出来ているが、まだガキだ。
ただ、今にも折れそうな骨。盗品も戻ってきたんだし、許してあげても良くね??
「ふん、裏路地でコソ泥として生きるような人間俺は許すわけないだろ。汚らしい」
「父上、これくらいにした方が……」
俺は少し掠れた声で話す。
「ジョルジュ、お前もオベールの人間ならこのような蛮族の愚行を許してはならない。
しかし見ておけ」
一体、何をする気なんだ???
裏路地に入り、ミッシュルマンに子供を下すように指示した。
その前にミッシュルマンに足を切り落とすように命令する。
「承知した」
手慣れた手つきで少年の足を切り落とす。
「うぐっ!!」
そしてイニャスは少年の頭を蹴り飛ばした。
「穢らわしい蛮族がああ!!糞尿でも啜っていろクソガキ!!」
「いやああああ!!」
ミッシュルマンは目を瞑っている。
「お前みたいなコソ泥がいるから、この世界は穢らわしいのだ!!死んでモグラの養分にでもなれば良いのだ!!」
少年は、俺に助けを求めている。
「父上、いい加減そのくらいに」
「うるさい、お前は黙っていろ!!」
「はい……」
そうか、これが普通なのか。
ミッシュルマンは俺の肩に手を当て絶望を露わにしている。
相変わらず無言だ。
ごめんな少年。
俺は何も出来ないんだ。
この年にしては、知識があって、教養もあって。
多分、ここに歩いている大人よりも賢い自信もあるし、前世ではそれなりの偉業を成し遂げたと思っている。
だけど、俺は君を助けるには力不足だ。
このクソ野郎を魔法で吹っ飛ばすこともできなければ、足を叩き切ることも出来ない。
君を魔術で治すことも出来ない。
俺が出来ることは、ただこの状況に絶望するだけだ。
俺は君を見下すことしか出来ない。
なんて無力なんだろう。
自然と目からは涙が溢れてくる。
だけど、嗚咽をあげる気力もない。
頭からは大量に出血し、イニャスの靴からは豆腐が潰れるような不快な音が鳴り響く。
少年は声を出すことも諦め、弱い体はあっという間にボロボロになる。
目の僅かな輝きは失せ、彼は死んでしまった。
奥では彼女だろうか、唖然し棒立ちしてしまっている。
俺は彼女まで殺されてしまうのは嫌だった。
「見てねえで、さっさと消えろ!!腐れアバズレ!!」
俺はそう叫んだ。
頼む理解してくれ……。このまま感情的になる末路は悲惨だ。
ミッシュルマンは何かを察し、体から殺気のようなものを放出している。
最初に熊を倒した時にも出していたオーラだ。
彼女は畏怖し発狂しながら去っていた。
「何故、止めようとした」
俺は論争を避けるため曖昧にする。
「すいません、父上。あまりに凄惨だったもので驚いてしまって」
「そうか、なら今日良い経験が出来ただろう。蛮族に絡まれたなら絶対にやり返せ。
これが上流階級として持つべき誇りだ」
「はい」
俺は不満足そうに返事した。
弱い立場の人間オーバーキルして何が誇りだ。
ミッシュルマンはお前の命令だから仕方ないにしろお前は絶対に許さない。
そんなチープなもの俺は求めてない!!
俺は死んだ少年の顔を見て絶望した。
空は少し暗くなっていた。
「気づけば、夜かあ」
そろそろホテルに行かないとな。
――ホテルにチェックインした後。
イニャスのいない所でミッシュルマンと少し話をした。
ミッシュルマンは話を聞くことを受け入れてくれた。
「世の中というのは不条理ですね、もしかしたらあの一件で父上を嫌いになってしまったかもしれない」
「そうですな、でもこれが普通なのです……」
「そんなのが普通ですか、盗みをした子供を平気で殺す大人ですか」
俺はあの少年が盗みを働いたのは普通にダメなことだと思う。
ただ、そこまでする必要性があったのか、俺は理解が出来ないのだ。
後、盗みを働く状況まで追い込む社会環境に問題は無かったのだろうか??
日本とは違う、それでもおかしいものはおかしいじゃないか!!
「坊や、怒りたくなる気持ちは分からないでもないです。だけどパワーバランスを一変する力が我らにありますか?」
「それは分かりません……。ただ僕は……」
俺は本当に無力だと体の芯まで思い知る。
するとミッシュルマンは俺にこう言った。
「少なくとも、大切な人が守れるくらいには強くならないといけませんな。それが出来なければ盗賊として生計を立てるしか道のない子も救えないでしょう」
ミッシュルマンが言うと説得力が増している。
今まで第一王子を守る為に必死こいて護衛してたらしいからさ。
「大切な人??」
「坊やにとって大切な人とは誰ですか??イニャス殿ですか」
「んな訳ないでしょう、僕は父の行為に疑問を持っているから貴方と裏で話ているのでは??」
「じゃあ誰ですか?そういうのは正直でいいですぞ」
俺が父親嫌いって、間接的に言ってもミッシュルマンは怒らなかった。
多少共感することがあるのだろうか??
大切な人かあ。
前世では家族、クルーだったメンバー、後輩、先輩、仲の良いdjやプロデューサー。
今世では誰が一番大切なのだろうか??クロエとかかな??
少なくともイニャスではない、倫理観が違うにしても俺はそういう奴は嫌いだ。
正味、前からあまり好きではないのだが。
どんだけ仕事が出来る偉大な父でもやってることが終わってる。
そんな奴よりも、俺に勉強教えてくれて、寝る時はそばにいて安心できる。
美しくても性的な目では見れない、母のような存在。
俺は割とすんなり答えることが出来た。
「クロエとかですかね、僕と常に行動してましたし」
「じゃあ、まずは彼女から守れるようにならないとですな!!村に帰ったならまた剣術を教えて差し上げよう」
そっか、一番大切な人か。
広く視野を持ちすぎて、一番肝心なものに標準が合わせられなかった。
俺は多分、この世界を本気で変えたいと思ってるし、それは前世でもそれなりの実績を残せたからだと思ってる。
だけど、前世であんだけ実績残せたのはきっと大切な人を守れ……たのか??
なら現世は守ればいい。
まずはそんな友達や家族を増やせればいい。
そして、いずれはそういう路上で生活している子供を救えたらいいと。
これが今の世界で抱いた現段階の大きな夢が出来た。
最初は小さくていい、その小さな階段を1mmでも登っていければきっと十分なんだ。
俺はこの世界じゃ無力で非力な46歳だ。
今は、ああいう状況に追い込まれた子供一人救えない、4歳のガキでしかない。
じゃあ、力をつければいい。
こいつは俺に手を差し出してくれた。
だからその手を握ればいいし、力をつけたらクロエを守るくらいの力はつけたい。
色々、抑えきれなさそうな感情はあったが、無理やりこの結論で納得させた。
世の中ある程度楽観的でないとな。
「分かりました、色々ご教授お願いします」
ミッシュルマンにポンポンと頭を叩かれた。
優しい男の手だった。
ミッシュルマンは俺が父が嫌いと言っても咎めることは無かった。
しかも話を聞いてくれて、俺の人生の新しい目標が決まった。
こいつには感謝しか出来ない。
翌日、王都を旅立ち、故郷へ向かった。
イニャスは何かを察したのか俺とあまり話さなくなった。
道中、盗賊などがいたがミッシュルマンの剣術で返り討ちにして行った。
そして9月、秋風が吹き少し肌寒さを感じるこの季節。
サラベツ村に戻って来れたのだった。
第一部 不思議な世界編「終」




