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公爵様の大豪邸

「はえー……」


 白亜の城の前に広がる花畑と噴水庭園。

 視界の端でも途切れぬほど、広大な土地。


 あまりに規格外な土地に感嘆するマイアの下に、使用人と思わしき男性がやってきた。

 栗毛色の髪に、紅の瞳。

 きっちりとしたスーツに身を包んだ美少年。


「お待ちしておりました、マイア・ハベリア様。私はジョシュア様直属の使用人、アラン・ティールと申します。以後お見知りおきを」

「は、はい! 本日はどうぞよろしくお願いいたします!」

「……ふむ。ご案内いたします、こちらへどうぞ」


 マイアの名乗りに目を丸くしていたアランだったが、少し考え込んでから案内を促す。

 緊張のあまり、おかしな挨拶になってしまった。

 いきなり悪印象を与えてしまっただろうか……とマイアは後悔する。


 アランの後に続き、彼女は城の中へ。

 内装ももちろん見事なものだった。

 鏡のようにピカピカな床、価値のほどがまったくわからない壺や絵画、絢爛豪華なシャンデリア。


 実家の伯爵家とは比べ物にならない。

 二人が廊下を通ると、使用人がお辞儀をして道を開ける。

 しかしマイアの噂もあってか、使用人たちが向ける視線は好印象のものとは言えなかった。


 マイアは使用人の傍を通るたび、ぺこぺことお辞儀をして通り去って行く。

 そんな彼女の様子を、アランは怪訝な視線で盗み見ていた。


 ***


「少々お待ちください」


 応接間に通され、マイアはソファに座る。

 どうやらジョシュア公は多忙を極めているらしく、今も執務室で働いているとのこと。アランがジョシュアを呼びに行くと、応接室には静寂が訪れた。



 マイアはこれから面会することになる夫について考える。

 彼女と同様に、ジョシュアの評判はすこぶる悪い。


 仕事面に関しては非常に優秀な手腕を持っており、国王陛下の右腕とも称される。しかし、人格面は悪い噂ばかり。


 大の女嫌いで、すぐに暴力を振るい、どんな美女でも近づけないと。

 しかも冗談が通じない超堅物で、仕事人間。


(でも実家の待遇に比べたらマシよね……)


 実家でも暴力を振るわれて虐められていたのだから。

 何がどう転んでも伯爵家の待遇よりはマシになる。

 マイアには確信があった。


 とりあえず一日一食は欲しい。

 おまじないで治せる程度の怪我や空腹であれば構わない。


(あ、そうそう。支度金の話もしないと……)


 父からは到着してすぐに支度金の話を通すようにと、言いつけられていた。

 この豪邸を見る限り、支度金など端金だろう。

 憂いはまだ完全に消えたわけではない。

 とりあえず、婚約破棄されないように振る舞わなくては。


 そんなこんなで思考に耽っていると、部屋の外から足音が聞こえた。

 そして応接間のドアノブが回り、ガチャという音と共に扉が開く。


 マイアはすぐに立ち上がった。

 挨拶を交わそうと扉の方を見て……固まってしまう。


「ジョシュア・エリオットだ。お待たせしてすまない、マイア嬢」


 見たこともないような美青年が立っていた。

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