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たどり着く


 あれから特に大型のモンスターに襲われることもなく、たまに小型のモンスターを難なく倒しながら山頂を越えて行った。山さえ越えれてしまえばあとは少し歩いただけで街が見えてくるらしい。

 正直もう限界になりかけている足のためにも、いい加減街のベッドにダイブさせてもらいたい。


(俺もっと体力あったはずなんだがなぁ……)


 俺がそんなことになっていると思いもしていないみんなは、あれこれ雑談しながら元気に山を降りていく。体力オバケしかいないのか、疲れた様子など微塵も感じられなかった。

 ここで休憩してしまえばもう動きたくないとなるのは自分でもわかっているため、みんなに着いていこうと必死に足を動かす。


「おっ、街が見えてきたぜ。ほら。」


 ルキの言葉に自分でもビビるくらい俊敏に顔を上げれば、あと数百メートルも歩けば着きそうな位置に街が見えた。


(よく頑張った俺の足腰!)


 ちょっと泣きそうになりながら歩き続ける。まだ逃避行が始まって2日目、早くもへばるとは思わなかった。しかも俺だけが。

 シンティアたちはというと、街に入ったらあれが欲しいだのこれを売るだの、なにやらいろんな予定を立てている。その買う物リストにもう一つリュックがあることを願いたい。鉱石を売ればかなり軽くなるし荷物も入るのだが、それでももう一つくらい鞄があった方がなにかと便利だろう。


「オレは皿とか箸とかが欲しいなー。プラスチックで水で洗えたら便利じゃん、重くもないし。あとマグカップとタオルと全員分の折り畳み傘。」


「シンティアは飴とか非常食が欲しい! あと塩とか調味料!」


「私は食材切るナイフが欲しいわね。」


「お姉さんフライパンがいいな〜。お鍋でもいいけど〜。」


 やたら欲しいものがあるルキに続き、みんな食に関するものをあげていく。確かに昨日の食事は美味しかったが木の枝で刺して焼いただけ。この先も続くとなるともう少し文明を使いたくなるのもわかる。

 

 


 みんなであれこれ言いながら歩いていると早いもので、もう街の入り口にたどり着いていた。港町の雰囲気とは違い、あちこちに畑と牧場が見られた。どうも農業と牧畜がメインの街らしい。

 緑が多いとこうも気持ちがいいのか、と街に入り辺りを見渡すと、すぐ近くに道具屋があるのを発見した。


「あそこの道具屋で売ったり買ったりするか。」


「じゃあついでにいろいろ情報聞き出すかぁ、よっしオレに任せとけ。」


 リュックもらうぜ、と俺からリュックを取るとそのままルキは道具屋に歩いて行った。やけに謎の自信があるみたいだが一体なんだというのか。

 することがなくなった俺は近くのベンチに座って足を休めることにした。


「あー、もう俺動けない……。足痛い……。」


 情けなくそう言いながら足をだらーんと伸ばす。するとリーナたちも疲れてはいたようで、同じように座ってそれぞれ休憩しだした。


「シンティアも疲れちゃったな。」


「私も。早くレストランでご飯食べて、宿屋のお風呂入ってベッドに横たわりたい……。」


「お姉さんマッサージもほしいわ〜。」


 みんな好き勝手言いながら道具屋にいるルキの後ろ姿を見ている。こちらからはルキの表情や言葉はわからないが、店員のお姉さんの顔が真っ赤になっているあたり軟派なことでも言っているのだろう。

 そんなことを思われているなんて知らないルキはリュックから売るものを出して、代わりにいろいろ買っていた。鉱石は綺麗に磨いてから売る、と言っていたのを覚えていてくれたのか、鉱石を売る気配はない。

 それにホッとしていると、売買を終えたらしいルキが先ほどより増えた荷物を持ちながらこちらへ戻ってきた。


「いやぁ、かなり割引してもらったからみんなが言ってたもの全部買っちゃったぜ。しかも軽いし嵩張らない! ついでにリュックも買って素材入れ放題! あ、お金はフィンに渡しておくな。オレこういう管理苦手だからさ。」


 そう言ってちゃっかり財布まで買っていたルキに財布ごと渡された。手に乗った瞬間ズシッと想像以上に重いそれに中身を見るのが怖くなった。


「ちなみに残りは59378エールね。あのでかいツメが良い値段してなぁ。てわけでレストランも宿屋も余裕!」


 8割も割り引いてもらっちゃったし、と笑いながら言うルキが神様に見えた。一体どんな会話をしたら初対面でそこまで気に入られるというのか。

 どうせ軟派なことを言ってるんだろと思っていた先ほどの自分を殴りたい。


「やっぱ可愛い女性を口説くと気分もいいよなー!」


 いや、殴らなくていい。


「そういえば情報って何を聞き出したのよ?」


「あぁ、フィンのことが知れ渡ってるかどうかを察せられないように聞いておいた。ここの街には警備兵も来ていなければ最近怪しい事件とかも起きてないってさ。とりあえず数日間は大丈夫だろ。あの山をオレらみたいに越えられたらわかんねえけど。」


 その言葉に少し安心して俺はホッと一息ついた。だがいつこっち方面に逃げたとバレるかわからない以上、数日も止まっていられない。

 わざわざありがとな、と言えばルキはこういうのは得意だと笑い、同時に聞いたらしい美味しいレストランと評判の宿屋の情報も教えてくれた。

 なるほど、人たらしとはすごい才能だ。


「新鮮な野菜と獲れたての牛乳で作ったシチューが絶品だとか。おいしいフルーツのデザートもあるらしいぜ。」


「デザート! 早く行くわよ!」


「この季節だとフルーツはマスカットとかかしら〜。」


「甘いものいっぱい食べたいなー!」


 ルキに場所を聞いてかつてない速さで歩くリーナたち。あんまり高いものはダメだからな、と叫ぶも本当に聞いているのか怪しい空返事が返ってくるだけだった。

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