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「シンティア少し寒くなってきた……。まだ火つけない?」


 シンティアが少し震えて縮こまる。確かにもう10月、日中はまだいいが夕方になると少し寒さを感じる季節だ。

 そろそろつけてもいいかもしれないわね、とリーナもどこか寒そうにしながら呟く。それに俺も同意して火をつける準備をしようとするも、情けないことに火の付け方がわからずフリーズした。


「どうしたのよ、フィン。」


「あー、いや、火ってどうやってつけるのかなって……。」


「シンティアは雷魔法しか出せないから無理だよー。」


「俺は水なんだよなぁ……。」


 魔法でつけることができたら格好もついたのだが、俺の魔法は水。それも才能がないのか、お湯だったり冷たすぎたりとなんともまぁ残念な仕上がりになることが多い。

 魔法で火をつけられないのなら原始的なやり方で、となるのが普通かもしれないが俺はそのやり方さえわからなかった。今かなりダサい状況だというのだけはわかるが。

 火つけれないね、とシンティアと一緒に凹んでいると突然目の前が明るくなった。


「何かつける方法があるのだと思ってたからやらなかっただけで、私の魔法は火なのよね。」


 そう言いながらリーナは指先に浮かぶ火をフッと消した。火と言えばオレンジ色のイメージだが、リーナの火は紫色で不思議な感じがする。

 よかったこれで魚も焼けるし暖かく寝られる、と俺はホッとしてリーナの頭を撫でた。


「ありがとな、リーナがいなかったらマジで詰んでた。」


「別にいいわよお礼なんて。それより魚を木の枝に刺すの手伝ってよ。あと撫ですぎ。」


「すまない、つい……。」


「シンティアも手伝う!」


 もうすぐ陽も落ちる。そろそろソフィアたちも戻ってくるだろう。

 黙々と捕まえた魚を木の枝に刺しながら俺たちは2人の帰りを待っていた。





「戻ったわよ〜。薬草もお肉もいっぱい持ってきちゃった。」


「オレにかかればこんなもんよ。狩りには自信あるしなぁ。」


 魚を焼く準備が終わるのと同時に戻ってきた2人が焚き火の前に腰を下ろす。ソフィアは薬草を、ルキは謎の切り身の肉をそれぞれ持っており、ソフィアにいたっては一体どこで手に入れたのかリュックまで背負っていた。


「なんかこの辺“出る”みたいでね? 荷物が散乱してる場所があったからもらってきちゃったの〜。持ち主はもういなかったし〜。」


 何が? とか盗ってきたの間違いでは? とかいろいろ突っ込みたいことが多すぎる。それはシンティアたちも同じだったようで、でも聞いてはいけない気がすると本能で察知したのか黙り込んでいた。

 それに正直これで荷物を持ち運べるのはありがたい。薬もそうだが魚を干物にして詰めておけば数日は食べ物にも困らず歩けるだろう。

 俺はできるだけその“何か”を考えないようにしながらソフィアにお礼を言った。


「オレの方はよくわからん凄そうなモンスターの肉! あれこれ見るの嫌だろうと思ってもう切り身にして持ってきたぜ。女性にはキツイだろうしな。」


「お姉さんはバッチリ見学したから次はお姉さんもやれるわよ〜?」


 ようわからん凄そうなモンスター? さきほどの“出る”ってこれか? 見学して解体学んでる? とこちらも聞きたいことはたくさんあったが、もう切り身にしてくれてるのは素直にありがたい。ありがたいが一体何の肉なんだこれは。

 何かいろいろと想像してしまったらしいリーナとシンティアは無言で首を振っていた。そんな2人に構うことはなくソフィアとルキは謎の肉を豪快に枝に刺して焼き出す。

 その様子に魚も焼き始めれば、凄く美味しそうな香りが辺り一面を覆い出した。リーナのこの火は普通の火よりも温度が高いのか、あっという間に中まで火が通ったように見える。


「もう食えるんじゃね? ほら、シンティアこれ食えよ。」


 シンティアが手を焚き火に近づけるのを危険だと判断したのか、ルキがシンティアに謎の肉を取って渡している。シンティアも甘やかされて満更ではないのか、良い匂いをさせている肉に思い切りかぶりついていた。


「美味しい! 何このお肉! 味付けしてないのにすごい美味しいよ!」


 興奮したように言うシンティアに、じゃあ私もとリーナも食べ出した。年齢的に大きい口を開けるのが恥ずかしいとか言い出すかと思っていたが、そうでもないらしくこちらもかなり豪快にいっている。


「これは美味しいわね……。何枚も食べちゃいそう。」


「やっぱ狩って正解だったわね〜。」


「なんか凄そうな見た目だったしな。金色の羽根でやたらとでかくて。」


 オレとソフィアのコンビネーションの前では雑魚だったけど、と笑いながら言う2人はこの狩りで少し仲良くなったようだ。

 俺も食べてみるか、と一口齧れば確かに今までに食べたことがないくらい美味しくて。硬くもなく食べやすいので次々と食べてしまいそうだった。


「魚も食うだろ、シンティア。ほらこれ食えよ。」


 肉を食べるときに見た光景に思わず笑う。ルキから魚を受け取ったシンティアは嬉しそうに魚を食べ始めた。どうやら魚も美味しいようで、シンティアの手にあった魚がどんどん骨だけになっていく。

 それを満足そうに見ながらみんなも次々と魚を口に運んだ。こんな風に仲間と食べるのも悪くないな、と楽しんでいる俺もいる。


「まだ食うか、シンティア。食いたいのあったら言えよ、取ってやるから。」


 ルキの言葉にもういらないと返すシンティア。遠慮しているわけではなく、本当にお腹がいっぱいらしい。


「ルキは子供に優しいんだな。」


 思わずそう聞けばみんなも気になっていたらしくルキに視線が集まる。


「キミたちもしかして意外だって思ってる? オレは子供は甘やかす主義なの。子供は愛されて護られるべきだろ。」


 な〜? とシンティアの頭を撫でながらルキは少し遠くを見つめているような気がした。焚き火を囲っているとは言え細かい表情は読み取りづらい。

 それでもなんとなくこれ以上突っ込んで聞いてはいけないような気がして、今度はソフィアに話をふった。


「そういえばソフィアはどうやってあの人数を倒したんだ?」


「助けたときのこと〜? あれはただちょっと強めの睡眠薬を風で届けただけよ。うっかり劇薬混ぜちゃったから起きない可能性もあるけど〜。」


 絶対にソフィアは敵にまわさないようにしよう、と思った瞬間だった。

 それにしても風で届けるって、すぐそばにいた俺たちには一切被害がなかったがそんなことできるのだろうか。いや、実際できたわけだが一体どうやって。


「風に舞わせたら俺たちもやられる可能性あったんじゃ……?」


「それは大丈夫よ〜、お姉さん風操れるから。」


「そういえばソフィアは昔から風魔法が使えたわね。最近使ってないから忘れてたけど。」


「風と治癒ね〜。魔法って疲れるでしょ? だからあまり使わないようにしてるの。お姉さんだらけていたいタイプだし〜。」


 特に治癒魔法は疲れが酷いから薬草で治せるものは治してね、と大量の薬草を見せつけてくるソフィア。これは次の街に着いたとしても買わなくて良さそうだ。

 それにしてもこうも魔法の属性が違うとこの先役割分担できそうでいいな。モンスターによって弱点も違うし、対人間でもいろんな作戦が立てられるだろう。


「シンティアが雷でリーナが火、ソフィアが風と治癒で俺が水か。」


 そういえばルキはなんだろう、ともう一度視線を投げれば言いたいことが伝わったのか、じゃあ氷、と返ってきた。


「じゃあって、まるで選べるかのようだな。」


「まぁな、オレほぼなんでも出せるから。だったらいない属性をメインで使った方がいいだろ?」


「ルキって無駄にハイスペックなのね。」


「無駄ってなんだ無駄って。」


 確かにイケメンで子供にも女性にも優しく、魔法も使えて狩りもうまいとくればハイスペックすぎるくらいだ。これは相当モテてきたに違いない。

 今度こっそり水魔法のコツでも聞こうと勝手に予定を立て、先ほどから静かなシンティアに目をやる。するとルキに撫でられて気持ちよかったのか、ウトウトしながらも頑張って起きていた。


「そろそろみんな寝るか。今日はみんなを巻き込んでしまったし、着いてきてくれたお礼も兼ねて俺が見張りをするよ。ゆっくり休んでくれ。」


 そう俺が言えばシンティアはもう限界だと横になって寝始めた。服が汚れてしまうがこればかりは仕方ない。


「じゃあお言葉に甘えてオレも寝っかなー。なんかあったら遠慮なく起こせよ。まぁオレ気配に敏感だから自力で起きるけど。」


 おやすみー、と同じく横になって寝始めるルキ。本当に何かあったらすぐ起きてくれるつもりなのか、相棒の魔法弓をしっかりと抱え込んでいる。


「お姉さんも寝ようかしら〜。あ、そうそう、リュックの中に綺麗な鉱石と金色の羽根が入ってるから、好きに使ってちょうだいね〜。」


「ありがとう、鉱石でも磨いていようかな。街で売ったり加工したりできるように。」


 おやすみ〜、と横になるかと思えばソフィアは座ったまま寝始めた。背もたれもないのに器用だ。

 リーナはと見ると何故か寝る準備をする様子もなく、ジッと火を見つめている。


「リーナも寝ておけよ、明日はまだ街に着かないだろうし、確実に寝られるとも限らないんだからな。」


「それはフィンも同じ。今日一番疲れてるのフィンだと思う。私たちはフィンに着いてきただけ、でもフィンは違うから。」


 気を遣ってくれてるらしいリーナは、だから自分が見張りをすると言ってこちらを寝かそうとしてきた。気持ちはありがたいが、今日はみんなにゆっくり休んでもらいたい。

 生活を全て捨てて着いてきてくれたお礼には足りないのはわかっているのだが。


「リーナの気持ちはとても嬉しいが、俺はリーナが寝てくれるほうがもっと嬉しい。」


 俺がそう言うとリーナは少し考えこんで、それから立ち上がってこちらに来た。そのまま俺のすぐ隣に座り込んだかと思うと、ゆっくり自分の頭を俺の腕にくっつけて寄りかかる。


(え、何このご褒美。どうしたらいいんだ俺)


こちらのことなどお構いなしにそのまま寝るリーナ。動かすわけにもいかず、鉱石をリュックから漁るわけにもいかず、俺だけがただそわそわしながら夜を過ごしていた。


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