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新しい土地、新しい仲間、知りたくないその先は

「なんだ、ここは……。」


 グラグラと揺れる空気の振動に耐えきれず、意識を手放してからどれだけ経ったか。アドラーに起こされた俺たちの目の前には、先ほどまでの拠点にはない無機質な光景が広がっていた。

 冷たい印象を与える大理石のような床に、少し傷がついた石の柱。広間のようなこの部屋には大きな丸いテーブルといくつかの椅子が設置されているだけで、他には大きな窓しかない。


「ヒンメルとアゲートの間にある小さな島ですわ。島と言ってもこの今いる遺跡と畑しかありませんから、不便どころじゃありませんけれど。」


「無駄にデケェから空き部屋だけはやたらあるんだがなぁ。ま、店も運営できるくらいの大きさの部屋だってあるし、当分問題はねぇだろ。」


 遺跡。言われてみれば納得できるような内装だが、それにしてはこの部屋は綺麗すぎる気がする。見たところホコリもないし、スパイダーの巣などもない。どこを見てもまるで今まで誰かが普段から使っていたかのような綺麗さがあった。

 それに少し違和感を感じるが、今はそんな疑問は些細なことだ。それよりもそう、ヒンメル軍はここには来ないのかとか、まるで自由に俺たちが使えるかのように言っているがどういうことなのかとか、気になることが多すぎる。

 それはみんなもそうだったようで、どこか頭がまだぼんやりしている様子を見せながらもアドラーたちに質問し始めた。


「正直まだ理解できてないのだけれど、アドラーの言葉からすると私たちの新しい拠点、でいいのかしら。」


「そうだ。ここはどこの国にも属していない、まぁ、属せないが正解だが……。とにかくいわく付きの島でなぁ。誰も住んでないしいただいちまっていいと思うぜ。」


 どこの国にも属せないいわく付きの島。その言葉が少しひっかかるが、自由に使えるというならありがたい話だ。できればそのいわくも害のないものであってほしい。


「いわくつきだって〜。おばけじゃないと良いわねぇ。」


 そう言ってソフィアはリーナとシンティアを見た。クスクスと笑うソフィアとは対照的に、2人の顔色はどんどん悪くなっていく。


「う、ううううるさいわね! おばけなんてい、いるわけな、ないでしょう!」


「そ、そうだよ! シンティアだって信じないよ! お、おばけとかそんなのいるわけないもん! ね、フィン!」


 そう言いながら裾を掴んでくるシンティアに、大丈夫だと頭を撫でて落ち着かせてやる。正直幽霊がいたら俺もどうしたらいいのかわからないが、まぁいるわけがないし何も問題ではない。


「そういえば、他の方たちはどうしたんです? 道具屋の子や鍛冶屋のお兄さんたちの姿が見当たりませんが……。」


 マクシムの言葉にそういえばとアドラーを見る。ここに飛ばされる前に全員拠点内にいるか確認をしていたくらいだし、いると思いたいが全く姿が見当たらない。


「安心しろ、あそこにいた奴らは全員ここにいる。物も一緒に飛ばしたんで、ひと足先に起こしてそれぞれ物の整理させてるところだ。部屋はさっきも言ったが有り余ってるから好きなところを選んでもらった。」


「そんなわけで、あとで皆様方も好きに部屋を選ぶといいですわ! なんならフィンはわたくしと一緒の部屋でも……。」


「はいはい。で、これからはここがリベラシオンてことでいいのか? あれ、そういやリベラシオンって軍の名前だったか……。」


 アリーチェの冗談を軽く受け流しながら本題を進めていく。元の場所にはもう戻るつもりはないだろうし、これからはここが本拠地になるのだろう。


「軍の名前ですが、まぁこの場所の名前も同じでいいんじゃないですか。わかりやすいですしね。」


「まぁ、ヒンメルでも通じるくらいには名前も売れちまったしなぁ。上層部には反乱軍って呼ぶやつもいるが。」


「反乱軍ですか……。まるで悪者扱いですね。私たちはただ国の腐敗を取り除きたいだけだというのに。」


 いつの間に用意していたのか、優雅に紅茶を飲みながらマクシムとアドラーは軍について語り合っている。反乱軍、確かに今の自分達はそういう立ち位置にいるのだろう。もっとも俺に関していえば先に喧嘩を売ってきたのは国の方なので、少しイラッともするが仕方ない。

 そう、そもそも俺はヒンメル軍に首を狙われているから立ち向かうべくリベラシオンにいるだけだ。ヒンメル軍に、ここにいるアドラーに追われているから。


「で、アドラーとアリーチェはここまでしといてまだ敵なのか? もはや味方だろおまえら。」


 思わずそう問いかけると、アドラーとアリーチェはわかりやすくため息をついた。


「ここの土地を渡した以上仕方ないですわね。フィンを処刑台に送る計画はもうパーですわ。」


「ヒンメル軍も俺の指示していない動きをしやがったしな。もうテメェの首を狙うより、真っ向勝負で皇帝を殺す方がいいかもしれねぇ。」


 残念そうに言う2人とは裏腹に俺は内心ホッとしていた。正直この2人から首を狙われないというだけで、かなり精神的には楽に感じる。もっとも状況は変わっていないので他のヒンメル軍には追われ続けるのだが。


「というわけで、わたくしたちもリベラシオンに入りますわ。改めて、わたくしはアリーチェ・フォスキーア。ヒンメル帝国の皇女であり、暗殺部隊にもいましたので戦いも得意ですわ。」


「俺はアドラー・オプスキュリテ。ヒンメル軍第15師団司令官であり暗殺部隊隊長でもあった。信じられねぇだろうが、俺もアリーチェもテメェを生かすために処刑台に送ろうとしていた。処刑執行人は送った人物がなれるシステムでな、簡単に言えば俺がそれになれば執行のときに拘束を解いてテメェを助けることができるし、俺たち3人の真の目的、皇帝の暗殺もできると思ってな。」


「俺たち、3人……?」


 なんとなくその先は聞いてはいけないような、そんな気がした。それなのに聞いてしまった俺は愚かなのかもしれない。その先に続く言葉なんて、わかりきっていたのに。


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