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一緒に着いてきちゃいました


 クライノートの隠れ家に帰って一息ついたあと、思ったよりも長旅になってしまったし一旦リベラシオンへ帰ろうということになった。あまり長く出ているとマクシムも何かあったのかと不安になるだろうし……多分。

 それぞれなぜかアドラーたちもリベラシオンへ向かう準備を整え、よしワープするかとみんなを見回して気づく。何か、ある。どこかで見たことがある、少女を模した大きな……。


「リーナ、なんだ、そいつは。」


 どうせロクなモンじゃないのはわかりきっているが、気になったからには聞かないわけにはいかない。


「何って、どさん子の等身大人形よ。」


 ほらみたことか、と心の中で呟きつつ俺はため息をついた。一体何故そんなものがここにあるのかとか、何故さも当然かのように持っていこうとしているのかとか、疑問しか出てこない。

 しかしここで聞いたところで、どうせ返ってくる返事は俺の思考の斜め上をいくのだろう。今までだってそうだった。俺だけがまるでおかしい感覚を持っているのかと不安になることだらけだった。

 今回もそうに違いない。周りは急に何処からか現れたどさん子人形なんかに驚くこともなく、その状況を受け入れているのだろう。その証拠にアドラーなんてちゃっかりどさん子の肩に手を回している。


「ちょっとアドラー! セクハラよそれ!」


「あぁ? 俺みたいな男に触られて嫌がるわけねぇだろうが。なぁ、どさん子。」


「オレには嫌がってるように見えるからアウトかなー。やっぱガタイが良い眼帯より、このスーパーイケメンフェイスを持つオレの方がイイってさ!」


 一体俺は何を見せられているのだろう。ただ拠点に帰るだけだというのに、何故こうもよくわからない現象が起きるのか。

 もはや突っ込む気力もない俺はソッと石に手をかざしてこっそり念じた。リベラシオンへ、と。




「で、帰ってきたわけですか……。こんなものまで連れて。」


「すまない、マクシム。俺はもう突っ込みたくなかった。帰りたかったんだ。」


 しっかり一緒にワープしてしまったどさん子を見ながら俺は謝った。マクシムまでどさん子のファンだったらどうしようと思っていたが、どうやらそんなことはないらしい。

 そのすっかり呆れたかのような様子に、案の定アドラーやリーナが必死になって引き込もうとどさん子の良さを語り出した。すごく優しい子で、とか、気遣いができる子で、とかちょっと疑問を持つ言葉ばかり聞こえてくる。優しくて気遣いができるなら、あのチュートリアルで俺を貶してきたのは何だったんだと。

 リーナたちの必死の語りにもマクシムは興味ない様子で紅茶を淹れる準備を始めた。2人がかりの語りをものともせず、完全にスルーするメンタルは俺も見習いたい。相槌くらいうってあげてもいいのに完全なスルーだ。


「で、フィンは何にします? 今日のおすすめはこちらにレモンを浮かべたものですが。」


「じゃあそれで頼む。」


「でしたらレモンはわたくしが切りますわ! キッチンをお借りしてもよろしくて?」


 アリーチェがそうマクシムに尋ねると、マクシムは少し驚いた様子を一瞬だけ見せてから微笑んだ。


「これはこれは、アリーチェお嬢様。もちろんお使いいただいて結構ですが、ケガなどなさいませんよう。」


 わかっていますわ、と言ってキッチンに向かうアリーチェ。その姿を見ながら俺は妙な違和感を感じた。

 そういえばあの2人は自己紹介をしていない。それなのにマクシムはスッと名前を呼んでいる。もちろんアリーチェはヒンメルのお姫様だし、メディアに出ることも多い。他国の一般人が知っていても何もおかしなことではない。

 しかし知っているのは普通であっても、普通は言わない言葉をマクシムは言った。


(アリーチェ、お嬢様……?)


 アリーチェは確かに姫だしお嬢様ではあるが、アリーチェ姫とは言ってもお嬢様とは言わないだろう。お嬢様と呼ぶのなんてそれこそ身内か、身の回りの世話をしている者くらいのはずだ。

 そう思ったのはアドラーも同じだったようで、表情をスッと真顔に戻してマクシムを見ていた。


「アリーチェお嬢様、ねぇ……。アゲートの人間にしては不思議な呼び方するじゃねえの。まるでアイツの幼い頃を知っているかのようだ。」


「おっと、これは失礼しました。姫様と言うとあまりにも目立ちすぎるかと思いまして。」


(目立つのを気にしてたらここにそもそも来ないと思うが……)


 もう突っ込む気力もないので、それについては受け入れるしかないのだが。


「……ま、アイツはなんて呼ばれたって構いやしねえだろうが。てっきりアゲートの人間じゃねえのかと思ったぜ。見た目も物腰も、どうにもテメェはアゲートの人間とはかけ離れている感じがするからなぁ?」


 アドラーがそう言うと、マクシムは静かに笑ってそれ以上答えることはしなかった。

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