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慣れって怖い


「いやだからおかしいんだって! なんで誰もつっこまないんだよ! 俺が逆におかしいのかって不安になるだろ!」


 アドラーと俺の家に来てから2日目。俺たちは凄腕の鑑定士がいると噂のオリギナーレに向かって歩いていた。

 ゴツゴツとした岩、風で舞い上がる砂埃、カラッとした空気。それらにはもう十分すぎるほど慣れてきた。マスクやゴーグルは相変わらず欲しくなるが。

 そんな中をオリギナーレまでみんなで歩くのはもはや何も違和感などない行為だ。そのはずだ。そのはずなのに一つだけどうしてもおかしいことがある。


「やはり気候的にわたくしの服がもう少しはだけにくい方がよかったことですの? だって仕方ないんですわ、わたくし戦う時はこの服が一番しっくりくるんですもの。」


「それもまぁ目のやりば的にはそうだけどな?」


「んだよ、じゃあ朝食がカレーだったことかぁ? 仕方ねぇだろ、昨夜作りすぎて残すわけにいかなかったんだからよ。」


「まぁ確かに朝からカレーはキツかったけどな?」


 アリーチェとアドラーがそれぞれ思い当たることを言いながらにぎやかに歩いていく。

 確かにアリーチェの服はなんというか、決してセクシー系ではないが露出が高い。上はピッタリとしたシンプルな白いシャツにどう考えても戦闘向きではないヒラヒラとした膝上までの黒いスカート。シャツは絶対サイズ間違えただろと言いたくなるくらい胸元なんてパツパツで本当に目の毒だ。こっちの身にもなってほしい。


「どう考えても戦いにくいだろそれ。胸元すごいし大体スカートとかその、見えるだろ!」


「やっぱり男の子だし気になっちゃうわよね〜。お姉さんわかるわ〜。」


「私もスカートなんだけど。戦ってるときそういうこと考えて見てきてたのね。サイテー。」


「シンティアもちょっと流石に引いた。」


 リーナとシンティアからドン引きの目で見られて軽く凹む。俺は何かおかしなことを言っただろうか。いやそんなことはないはずだ。誰だって目の前に揺れる胸とスカートがあれば目がいくのは仕方ないだろう。

 そう自分を無理矢理正当化しつつ俺は咳払いをした。俺は変態じゃない、自然の摂理に従順なだけだ。


「いやまぁアリーチェの服とか今朝がカレーだったとかはどうでもよくてだな……。」


「まぁ! わたくしの服がどうでもいいなんて酷いですわ!」


「そうよフィン! 女の子にその言葉はないわ!」


 気にしたら気にしたで引かれ、気にしないとしないで責められる。女心がわからない俺が悪いのかもしれないが、もはや何が正解かわからなくなってきた。


「いや、その、とにかくだな、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……。」


「なんだよフィン、オレがいつにも増してイケメンなことか? この美貌はどうすることもできないから仕方ねぇだろ?」


「いやルキは確かに腹が立つくらいイケメンだけど! そうじゃなくてなんでまた、そう、またアドラーとアリーチェが一緒に着いてきてんだよ! アリーチェに関してはクライノートどうやって知ったんだよって話もあるし!」


 俺がそう言うとみんなして何を言われたのかよくわからないような表情をした。たまにあるこのみんなと俺の感覚の違いはなんなのだろうか。

 ここまで一緒に行動していたらいっそもうアドラーもアリーチェも仲間な気がしてくる。びっくりするくらい馴染んでいるし、昨日は一緒に寝泊まりしたし、その前はアドラーと坑道探索したし。

 確かに敵なはずなのに距離感どころかいろいろとおかしな状態になっているのに、何故誰も突っ込まないのか。


「クライノートはアドラーがワープする瞬間にくっついて一緒にワープしたからですわ。前々から夜いなくなるときがあったので気になってましたから。まさかアゲートに隠れ家を持ってるとは思いませんでしたけど。」


「悪ぃな、フィン・クラウザー。俺とテメェ2人の家だったってのに……。」


「マジでキモいからその言い方やめろ。」


 軽く寒気がする言い方に俺は一気にテンションが下がっていた。

 それにしても本当に考えれば考えるほど意味がわからない。あの家も、あの場所も。ヒンメルの軍人であるアドラーとアクセサリーを売っていた俺があそこでは受け入れられていたのも。


「もしかして、わたくしがお父様にチクると思ってますの? そんなことしたら、わたくしのフィンの身に危険が迫るのは目に見えてますし、秘密にしておきますから大丈夫ですわ!」


 そうハッキリと言い切るアリーチェに、少しだけ感謝しつつも俺は思っていた。


「すでに危険が迫りまくった結果がこの状況なわけだが。なんなら俺の首狙ってる奴がすぐそこにいるしな。」


「細けぇことは気にすんなや。そんなんだからテメェはモテねぇんだよ。」


「そうだぜ、フィン。時には流れに身を任せるのがよかったりもするしな!」


 身を任せたばかりに引き起こされた敵と仲良く旅をする状況。あまりに一緒にいすぎて確かにもうなんか気にするだけ無駄な気もしてきている。一緒に何度も寝泊まりしていると敵ということも忘れそうだ。


「なんでここまで一緒に行動してて敵なんだよ……。」


「仕方ありませんわ。フィンには処刑台に行ってもらわないと困りますもの。」


「さっき俺の身を心配してくれたばかりなのが信じられない言葉だな。なんでアリーチェもそんな処刑台に拘るんだよ。」


「それは……。あ、ほら、見えてきましたわよ! あそこがオリギナーレですわね。」


 アリーチェがどこかホッとしたように指をさしてそう言う。仕方なくその指の先に目をやると、そこだけ空間が違うような、色とりどりすぎる独創的な街が広がっていた。


「センスが爆発した、を街で表すとああなるのかしら〜。」


「入るのを躊躇う見た目ね……。中はもっと凄そうだわ。」


 蛍光色を使った建物と街全体を照らしているであろうライト。昼間だというのに夜のイルミネーションのように街全体が光って見える。

 それどころかどこを見ても蛍光色なせいで、まだ少し離れた距離だというのにすでに目がチカチカしていた。これは街中に入ったら俺死ぬんじゃないか、光で。

 そう思ってしまうほどの悪い意味での煌びやかさに俺はすでに引き返したい気持ちでいっぱいだった。こんな目に悪い街の鑑定士が凄腕とも思えない。こんな景色を見ていたら感覚なんておかしくなってくるだろう。

 それでも来たからには中に行くべきだ、とあまり気乗りはしないが無理矢理街へ向かって歩いて行った。

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