表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/74

繋がっていくかのように


 ご飯でも、というからレストランなどに入るのかと思いきやまさかの出店で買い食いを始めたルイーズ。

 辺りが岩で囲まれた地下街にある出店はそれだけで他の街とはガラッと雰囲気も違い、仲間たちも楽しそうにいろんな店を見ている。さすがに人が暮らしているだけあって他の坑道などとは違い明かりも多く、ややオレンジがかった空間に今までとは違う世界に来たようで俺も少しワクワクしていた。

 そして何よりも他の街と違うことが一つある。


「フィンじゃねぇか! また鉱石を採りにきたのか? ほれ、この串焼き持ってけ!」


「あ、あぁ。ありがとな。」


 そう、ここでは指名手配犯としてではなく、ただの鉱石を採りによく来ていた人として俺の存在が知られていた。一体過去の俺のコミュ力はどうなっていたのかと自分でも疑いたくなるほどに、会う人みんなに話しかけられている。

 それがどこか気恥ずかしい気持ちと、全く覚えていないことへの罪悪感で俺は少しいたたまれない気持ちになっていた。いつ伝えたのかルイーズ曰く俺が記憶喪失だということは住人に知らせてあるとのことだし、きっと気に病む必要はないのだろう。

 気さくに話しかけてくれる街の人たちに感謝しつつ、俺は貰った串焼きを食べた。何の肉を使っているのかわからないが、炭で焼いたのかとても香ばしくて美味しい。味付けは塩胡椒だけのようだがそれで十分だと言えるくらい肉自体に味があった。

 これは何本でもいけそうだな、とまだ手元にある串焼きを手に取る。すると違う出店で好きに食べ物を買い漁っていたリーナがジッとこちらを見ながら目の前に来た。


「どうした、リーナ。」


「その串焼き美味しそう。私も買ってこようかしら。」


 リーナはそう言いながら串焼きの店を探してきょろきょろし出した。手元にある空き皿の数からして相当食べているに違いないが、まだ串焼きを食べる余裕があるのは本当に凄いと思う。


「食いたいならこれ食うか? たくさんもらったから俺1人では食い切れないし。ほら、口開けろ。」


 空き皿で手が塞がっているリーナが食べれるようにと俺は串焼きを差し出す。しかしリーナは素直に食べようとせず、顔を真っ赤にして固まった。


「食わないのか?」


「えっ、あ、食べたいけど、その……。」


「なんだよ。」


「人目がたくさんあるから恥ずかしいのよね〜?」


「なっ、ソフィアうるさいわよ!」


 なるほど、あーんになっているのが恥ずかしかったのかと納得している間にリーナはソフィアの方へ行ってしまった。リーナはよほどからかわれたのが恥ずかしかったのか、先ほどよりも顔を赤くしてソフィアを叩いている。

 そんな戯れ出したリーナたちを尻目に俺は持っている串焼きをどうしたものかと一旦皿に戻した。まだたくさん残っている串焼きはとても一人で食べ切れる量でもない。

 軽くラップでもして後でみんなで食うか、と仕舞う準備をしようとする。するとそれを見ていたらしいシンティアが凄い勢いでこちらに駆け寄ってきた。


「フィンもう食べない? 食べないならシンティアが食べたい!」


「俺はもういいからシンティア食っていいぞ。ほら。」


 そう言ってシンティアの目の前に一本差し出すと、シンティアは嬉しそうに串焼きに齧り付く。口に入れてすぐに笑顔になったところを見ると、どうやらシンティアもお気に召したらしい。


「さて、お腹も膨れてきたしそろそろ本題に入らせてもらおう。さあ皆ここに座って。」


 本題とはなんだろうと思いつつもルイーズが言う通りに指示された椅子に座る。休憩場所か何かなのか少し大きめの円卓を囲んで俺たちはルイーズが話し出すのを待った。


「我がクライノートは今のところ壊滅的な被害を受けて復興作業もままなっていない、というのが一応周りに知れ渡っている状況なんだよね。だからだるいけど上のハリボテの復興作業をしないといけない。」


 その言葉にそりゃそうだよなとみんな頷く。上のハリボテがクライノートということになっている以上、生き残った人たちが何もしないのはおかしい。

 普通は瓦礫の山になってしまっても故郷を直そうとみんな動き出すものだ。もちろん他の街に逃げてそのまま暮らす人もいるだろうが、全員で逃げ出しましたなんて違和感しかないだろう。


「だから君たちがここに来た理由はなんとなく察しはついているが、応えることはできない。この街総出で仲間に、なんてこのタイミングではとても無理なんだよね。」


「まぁ、そうだろうな。数人でもと思っていたが、こんなことになっていたらそれもそりゃあ無理だろ。」


 そう言って俺は少しだけ肩を落とした。最初は珍しい鉱石が目的だったとはいえ、仲間も期待していないわけではなかった。

 鉱山街、珍しい鉱石が採れる街。ということは目が肥えた鑑定士なんかもいるだろう。いるに違いない。ここにいなければ逆にどこにいるというのか聞きたいくらいだ。

 鑑定士がもし仲間に加わってくれたら、この先見たことがない鉱石に出会っても拠点に帰ればすぐ判明する。それにいい値段で買い取ってくれるかもしれないし、鉱石の売買が拠点で安心してできるなんて俺にとってはメリットしかない。

 せめて鑑定士、と急に俺の中だけで鑑定士の波がきてしまったからには聞くだけは聞いてみようと神妙な面持ちで話し出した。


「街ごと仲間になってもらえないのは残念だが、知り合いにこの世の鉱石はなんでもわかるレベルの鑑定士とかいないか?」


「さすがにそんな凄い人は知らないけど、ここからさらに南にあるオリギナーレに有名な鑑定士がいるって聞くね。歩いて2、3日で着くし、気になるなら行ってみたらどうかな?」


 地図貸して、とルイーズは俺から地図を取りオリギナーレの位置を丸で囲んだ。2、3日の距離というだけあって地図上でもそう離れていないように見える。


「この距離なら行ってもいいんじゃないかしら? ついでみたいなものだし。ただまぁ、ちょっと休んでからがいいわ……。」


「ま、オレもいいと思うけど今日はゆっくり寝てぇな。明日からまたキャンプになりそうだし。」


「そうね〜。お姉さんもお風呂とか入りたいし、行くなら明日にしたいわ〜。」


 その言葉にそういえば疲れていたことを急に体が実感した。ここ最近はキャンプ続き、それに険しい山道を歩いてきた。クライノートが悲惨なことになっているのを見てすっかり忘れていたが、ゆっくりベッドで寝たり休息を取れていない。

 明日からのことを考えると今日はゆっくり休むべきだろう。せっかく安全な場所があるのだから使わない手はない。


「そうだな、今日はゆっくりするとしよう。どこか泊まれるところはあるか?」


「それならそこの道を右に行ったところに昔フィンとアドラーが使っていた家がある。まぁ行けばどれかわかると思うよ。水道や電気やガスも使えるし、ベッドはないが布団ならいくらでもあるから使うといい。」


「俺とアドラーの家って言い方びっくりするくらい気持ち悪いんだが……。ま、まぁ、泊まれるならありがたいし行ってみるとしよう。」


 遊びに来ていただけでなく自由に使える家まであったのは驚きだが、今は本当にありがたい。

 とりあえず荷物も置きたいし行くか、と席を立って俺たちは家に向かい歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ