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痕跡だけ残して

 一夜明けて再び歩き始めてから半日。面白いことも衝撃的なことも起きずに過ごしている。辛かった山道も終わりを迎えて山のふもとまで来たし、地図的にはそろそろクライノートが見えてきても良い頃だ。

 鉱山街というだけあって岩山に囲まれたところを勝手に想像しているが、今のところそれらしき場所は見当たらない。辺りは今まさに下りようとしている山か、辛うじて整備されていると言える道が真っ直ぐ少し続いているだけである。一応その道の先に何か瓦礫のようなものが見えなくはないが、特にそれ以外何もなさそうだ。


「まだつかねぇの? オレそろそろレストランで美味しいもの食いてえ。」


「シンティアも美味しいものに飢えてる。おやつも買い足したいなー。」


「地図的にはほんとあと少し歩いたらだと思うんだが。とりあえず進むしかないし、あの瓦礫のところまで行ってみよう。」


 もしかしたらあの瓦礫の地下とかに鉱山街の入り口とかがあるかもしれないし、さすがにそれはなくても何かあるだろう。そう信じたいだけではあるが、他に道もないのだから仕方がない。


 山をおりてようやく歩きやすくなった道に少しホッとしながら、俺たちは前へ歩いて行った。相変わらず舞っている砂埃にうんざりするが、山道を歩き続けるよりはずっとマシだ。

 たとえ目の前にある瓦礫の山に見つけたくない物があったとしても。


「ねぇ、フィン。これ……。」


「俺は信じないぞ。」


 ただの瓦礫だと思って近づいたそこには看板がバキバキになって倒れていた。かろうじて読めるそれには信じたくないが”クライノート“と書かれている。


「いやおかしいだろ。だってマクシムもアドラーもこんな……、こんなことになってるなんて言ってなかったぞ!」


「なんなら鉱山街つってたし、アイツらもクライノートがこんなことになってるなんて知らないんじゃねぇ?」


 ちょっとチャットで聞いてみるわ、とマクシムにチャットしだしたルキをおいてクライノートだったであろう場所を見る。そこには瓦礫の山と建物だったであろうものがただあるのみ。建物は焼け焦げたあとなのか、あちこちが黒くススで汚れている。

 出発前の話では確かここら辺で一番大きな鉱山街だったはず。それなら当然賑わっていて、人口も多かっただろう。ということはもしかしてこの瓦礫の下や建物だったであろう場所には。


(大量の、死体があるのだろうか)


 いやきっとみんな逃げているはずだ、とすぐほんの僅かの希望を持って頭を振った。そう考えないととても精神が持ちそうにない。

 一体ここで何が起きたのか、手がかりの一つでもないだろうかと近くにあった瓦礫をどかしてみる。しかしその下にもただ瓦礫があるだけで、特に他に変わった様子はない。これで人が出てきたらそれはそれで大パニックになるので何もなくて良かったとも思う。

 少しそうホッとしていると、ピロンという音とともに携帯が震えた。マクシムからチャットの返事がきたみたいだ。


「えっと……。調べてみたら先日ヒンメル軍が押し寄せてきて激しい戦いがあったって、激しいどころじゃないだろこれ!」


「街が消えてる規模の戦いがあったのに、国が動いてる様子がないってのも妙な話ね。」


「それだけの軍をここまでどうやって見つからずに移動させたのかしら〜。」


 考えれば考えるほどいろいろと不可解なことがでてくる。しかしもう起きてしまったこと、今更どうしようもできない状況に俺たちが今できることなんてたかがしれている。

 せめてここにクライノートが存在していたという事実は記録に残しておこう、と俺は携帯をカメラモードにして構えた。


「こんなもの撮ったところでつまらないだけよ、フィン・クラウザーさん。」


「……っ! なんだ、おまえは。」


 いつのまにか音も気配もなく後ろに立っていた人物に、俺は警戒しながら振り返った。気配を感じられなかったのはリーナたちも同じのようで、みんな警戒心を露わにしてその人物を見つめている。

 その人物、おそらく40代くらいであろう女性はそんな俺たちの様子を見てクスクスと笑っていた。


「急に声をかけて失礼。君たちがあまりにも悲壮感たっぷりだったもんだからおかしくて。」


 こちらの質問には答えずにそう言ってまたクスクスと笑う女性。この瓦礫の山、壊滅したかつてはクライノートと呼ばれた場所でその笑い声は場違いにも感じる。


「何がおかしい? 人がたくさん死んでいるだろう場所を見て、凹まないわけがない。」


「ふふっ、ここは確かにクライノートだった場所。でもそう悲観的になる必要はない。着いてきて。」


 そう言いながら歩き出した女性に、怪しい人物だと思いつつも俺たちは大人しく後ろを着いて歩いていった。

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