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駆け抜ける


「なんで俺が指名手配されてるんだよ!」


 ここに来てからしたことと言えば、リーナの家でご飯を食べて風呂に入って、今日広場とここに来て……。どれを思い浮かべても指名手配されるようなことはしていないはずだ。

 この鍛冶屋にきてからだって双剣の整備をしてもらっただけで、特に店員に暴行したとかそういうこともしていない。強いて言えば子供可愛いなぁと見ていたのが我ながら気持ち悪かったかもしれないが。

 納得ができないため手配書をもう一度よく見るが、名前と顔写真以外の俺に関する情報はなく、指名手配されている理由も書いていない。

 他にあるのは見つけたらここまで連絡しろというリンドブルム軍中央司令部への連絡先のみ。


「キミ一体何してこの国の一番やばいところから指名手配されてんだよ? あんなとこに捕まったら間違いなく処刑だぜ。よくて拷問死かな。」


「そんなやばいところなのか?」


「そうね。中央司令部なんて戦争の大罪人とか、テロリストとか、特に大きい犯罪を犯した人を捕まえる組織だって印象かな。」


 リーナの言葉に一瞬鍛冶屋に来たときのやり取りが脳裏をよぎる。あのとき確かシンティアはこう言った、人を斬ったあと放置しすぎたような、血と脂がこびりついちゃってますね、と。

 まさか本当に人を殺しているのか? この双剣で、この手で。それもこの感じからすると大量に。

 本当に人殺しが職業だったとすればこの手配書も頷ける。しかし記憶がないのを言い訳にさせてもらうが、全く覚えがないのに捕まって処刑なんて冗談じゃない。

 逃げないと、と声を出そうとした瞬間、外が騒がしくなった。


「どこかに隠れているはずだ! 必ず探し出せ!」


 確実に俺を探しているその声に緊張した空気が流れた。


「ちょっとフィン! 急いで逃げましょう!」


「そうだよ! 裏口があるからそこから逃げよう! こっちついてきて!」


 そう言って慌ただしく走り出したシンティアに続き裏口から路地へ出た。しかしどの道も兵士だらけで、もう街中どころかリーナの家にも行けそうにない。

 なんとか街から出られればまだなんとかなるかもしれないが、当然街の入り口は封鎖されてるだろう。


「ちょっとさっきまでこんなに兵士いなかったじゃない! どうなってんのよ!」


「モテる男はつらいよなぁフィン?」


「相手が女の子ならな。」


 こそこそと話しながら兵士に見つからないように影に隠れて歩みを進めるも、よく考えたら指名手配されてるのは俺だけで他のみんなは別に隠れる必要もないことに気づいた。


「なんでおまえらまでコソコソしてるんだ? 俺だけだろ指名手配されてんの。」


「でもフィンを差し出すなんてできないよ、一応うちの用心棒みたいなものだし。」


「このネックレス貰っちゃったし、結婚してもらうまで着いてこっかなって!」


「オレはまぁノリ的な? 面白そうな気配察知したっていうか?」


 リーナ以外まともな理由ではなくて頭を抱えるが、1人じゃないのは心強い。とはいえこんなよくわからないことに巻き込んで申し訳ないどころではないが。

 少しだけ3人に感謝しつつゆっくりと歩みを進めるも、死角から来た兵士とばっちり目が合ってしまった。


(まずい! 応援を呼ばれる前になんとかしないと!)


「こっちにい……!?」


「おやすみ〜、起きれるかわからないけど〜。」


 俺がフィンだと気づいた兵士が応援を呼ぼうと声をあげかけたそのとき、知っている声とともに兵士が倒れた。

 その声も姿もまさしくソフィアで。なんでここに、とか助かった、とか言いたいことはたくさんあるがまずは逃げるのが先だ。


「やっと見つけた〜! こっちからなら街の外に出られるわよ〜。」


 そう言って手招きするソフィアについていくと、その道に配置されていたのであろう兵士たちがあちこちに倒れていた。兵士たちに傷はなく、息もありそうだが起き上がる気配はない。

 ざっと見ても10人はいるというのにまさかソフィア一人で? 一体どうやって?

 信じられないが実際にこうして兵士たちは倒れているし、こちらに誘導するということはそういうことなんだろう。

 寝ている兵士に囲まれながらどんどん先へ進んでいくソフィアに続いて歩みを進めていくと、恐ろしいほど誰にも会わずに街の外までたどり着いた。


「街の外には兵士いないみたいね。」


「でもシンティアたち目立つし気をつけて進まないと!」


「そうね〜、とりあえずここから一番近い街までかなりあるし、当分キャンプね。」


「つっても寝袋もねえしゆっくり寝れそうにねえな。」


 街から出るなりみんな気が抜けたのかあれこれ雑談を始めた。

 確かに今寝袋なんて持っておらず、持っているものは双剣だけ。とりあえず次の街へ行こうにも何か食べるものや売れるものも必要で。その通りだと言わんばかりに先程からお腹も鳴っている。


「というか、当たり前のように今後のこと話してるが今なら俺と別れて普通の生活に戻れるんだぞ。」


 そうもう一度問いかけるも見事に全員に無視を決め込まれた。それどころかすぐ違う話題ですでに盛り上がりかけている。

 俺に対する扱い酷くないか? こいつらは俺の仲間と思って本当にいいのか? と疑問になるも、安全とは決して言えない急な逃避行に付き合ってくれてるあたり仲間ではあるのだろう。

 早くもお腹空いただの疲れただの文句が上がっているが。

 騒がしいパーティになりそうだなとみんなを眺めつつ、そういえばこのいつのまにか馴染んでいる男の名前や素性を知らないことに気づいた。


「なぁ、そういえば名前なんて言うんだ?」


「オレ? 言ってなかったっけー、オレはルキ。ただのイケメンの狩人。好きなものは女。相棒は魔法弓のソーちゃん。この辺でうろつくのも飽きてきたし一緒についてくぜ。」


 なー? とおんぶしているシンティアに話しかけるルキ。シンティアはすっかり懐いているようでルキの背中ではしゃいでいる。

 誰が見てもイケメンなその顔と、恐ろしいほどに高いコミュ力。絶対ただの狩人じゃないだろ、と思うが敵ではないのだろう。

 敵ならさっき逃げるときに俺を捕縛することなんていつでもできた。だが一緒に逃げるどころか着いてくると言う。


(なんとなく、なんか似てる気がするんだよな、俺と。何がかはわからないが)


 じゃあ次お姉さんが自己紹介する〜、といつのまにか始まった仲間の個性溢れる自己紹介タイムに、少しだけ気持ちが明るくなった気がした。


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