心の声は聞かせられない
「すいませんでした。以後気をつけます。いやあの、ほんとあの時リーナがとても可愛く見えてつい止まらなかったと言いますか……。」
坑道でみんなが立って見下ろす中、俺はただ1人正座でリーナに謝っていた。謝罪内容はもちろん、みんなが巨大なキノコのモンスターと戦っている間にリーナを抱きしめ、それだけでは飽き足らず手でありとあらゆるところを弄りまくったことである。
これだけ言うと本当に俺がただの変態クソ野郎そのものであるが、あの時はキノコの胞子にやられて精神がおかしくなっていただけで、決して俺がムッツリ変態クソ野郎というわけではない。
と、俺は本気でそう思っているが他のみんなはどうやら違うらしく、俺に向けられる視線はわりと軽蔑したものだった。
まだシンティアやソフィアからそういった類の視線を感じるのはわからなくもない。女性側からしたらきっと俺にはわからないあれこれもあるだろう。だがアドラーやルキは俺の味方をしてくれてもいいじゃないか、と俺は思わず一番助けてくれそうなルキの顔を見る。
今までだってこういう時はルキがうまいこと助けてくれた。きっと今回も言いくるめてくれるに違いない。
そう期待してジッと見つめているとルキは面倒臭そうな表情をしてため息を吐き、ポンッとリーナの肩に手を乗せてだるそうに話し出した。
「はーあ。あー、フィンもまぁ、ほら、キノコのせいでおかしくなってただけでセクハラするつもりはなかっただろうし、な? もうこの辺にして先に進もうぜ。」
「……それはわかってるけど、本当に反省してるのかしら。」
リーナが疑いの眼差しで俺を見下ろす。一応これでも俺の意思ではなかったとはいえ、やりすぎたことはわかっているし反省もしている。
だがそれと同時に柔らかかったアレコレを思い出してしまうのも事実。変態と思われようと確実にあの時の俺は世界で一番幸せを感じていたはずだ。
もちろんそんなことを言ったらどんな目に遭うか想像もしたくないので、この幸せ部分は俺の中で永遠に閉まっておくつもりである。間違ってもセクハラを楽しんでしまっていた部分だけは言ってはいけない。
そう、大いに反省しているということだけを言うために俺は恐る恐るリーナを見上げて口を開く。誠心誠意の謝罪であればきっとリーナもわかってくれるはずだ。もう3時間はこうして正座しているのだから。
「リーナ、本当にすまなかった。いくら正気でなかったとは言えやり過ぎたと思ってる。当分リーナが当番の日のキャンプの掃除とか料理とか、いろいろ変わるから許してくれないか?」
「荷物持ちもしてくれるなら許してあげなくもないわ。」
そう言ってそっぽを向くリーナにもう怒りはなく、ただ代わりに呆れが見えていた。怒っているのも疲れてきたというやつかもしれない。
よしこのまま許してもらってさっさと先に進もう、と俺はリーナから出された要求に頷いて承諾した。荷物持ちくらいで許されるならいつだってしてやる。
「じゃあこれお願いね。別に重くないし持てると思うけど。」
そう渡されたリーナの荷物は本当に軽く、逆に何が入っているのか気になるほどだった。もちろん長いこと歩くので重たいよりはありがたいが、女の子はもっといろいろ荷物があるものではないのだろうか。
俺はその軽い荷物を受け取ってからようやく立ちあがろうと足に力を入れた。絶対に痺れていてフラつくだろうと思っていたが、意外にもそんなことはなくスッと何事もなかったかのように立ち上がる。
軽く足首などを動かしてみても特に痺れや痛みも感じない。3時間本当に正座をしていたのか自分でも疑問に思うくらいだ。
それが少し不気味ではあるが、今はそんな俺の体のことを気にしている場合ではない。正直忘れかけていたが、まだ見当たらないブルーダイヤを探すという使命が俺たちにはあるのだから。
先に進もうか、とみんなに声をかけて俺は来た方向とは逆に歩き出した。まだ少し視線に棘を感じるのは気のせいだと思いたい。




