倉庫問題
「この先ヒンメルに対抗しようとするたくさんの人がここに、フィンさんのもとに集まってくるでしょう。そうなれば今ある倉庫では収納ができなくなります。」
「こんのプニプニ野郎!」
「▼▼〜↑:!」
「やーい鈍いぞ銀髪チャラ野郎、って言ってます。」
ルキがエニグマに弄ばれている間、俺たちは珍しく真面目に今後のことについて話し合っていた。
港町コリエンテにヒラソルへと歩いたが見つかったのは道具屋のみ。当初の予定だった武器屋や船を操れる人物などは全くもって見つかっていない。
正直もっと簡単に次々と人が集まってくるのではないかと楽観視していたこともあって、この集まりの悪さには頭を抱えたくなる。
それにも関わらずマクシムは俺より楽観的なのかそれとも信じられているのか、この先人が増えたときのことを心配していた。
「そうは言ってもこの場所じゃ収納より先に寝床もなくなるだろうし、引っ越してから考えればいいんじゃないか?」
俺がそう言うとマクシムはため息を吐きながらメガネをクイッと上げてこちらを見た。なかなかに腹が立つ態度だが、顔の良さで相殺されているのがまた憎い。
「いいですか、戦争では使えるものは使うべきです。持っているだけでは意味がありません。それは物だけの話ではなく、技術や空間にまで及びます。」
「お、おう……。」
「そう、どんなものでも入れることができる空間があったら最高だと思いませんか?」
どんなものでも入れることができる空間。確かにそんなものがあればこの先道具や装備品を気にせず買っておくこともできる。
だがいくらなんでも現実離れしすぎているそれに頷くことも否定することもできなかった。
「そんな空間見たことないし、ふわっとしたイメージしかできなくてなんとも言えないんだが……。」
「そうね。あったら凄いなとは思うけれど。」
そう困惑した表情で続けたリーナに同意するかのようにソフィアとシンティアも頷く。
「まぁ現実でそんなの無理な話よね〜。そんな広い土地が余ってるとも思えないわ〜。」
「シンティアもアゲートでそんな土地あるなんて聞いたことないなぁ……。鉱山と岩山だけはいっぱいあるけど!」
「あと砂埃もな。」
まだアゲートにきてそう経っていないのにほぼ毎日俺たちを苦しめてきた岩山と砂埃。少し思い返しただけでもゲンナリするそれは本当になんとかしてほしいものだ。
できれば倉庫よりも先に防塵マスクと岩山でも快適に歩ける靴が欲しい。
そんなみんなの反応が思っていたものと違ったのか、再び大きなため息を吐いてマクシムは語り出した。
「もっと同意を得られると思ったのですが……。まぁいいです。この世界には確かに存在しませんが、エニグマさんの世界に置いてもらえば良いのではないかという話になりまして。」
「エニグマの世界に?」
「まぁエニグマさんの世界のことは面倒なので詳細は省きますが、これからは拠点に置いていく物があればエニグマさんに言っていただければと思います。そして逆に持って行きたいときはエニグマさんに物の名前と個数を言ってください。」
「わりと気になるところをいつも面倒だからって省くわよね……。」
「まぁ、とにかくエニグマが倉庫番……みたいなものってことか?」
別世界に物が置けるならこちらでの場所を考えなくてすむしありがたい。それにこれのおかげで拠点移動時の荷物運びがなくなったと考えるとかなり動きやすくなったといえる。
正直蜂を倒す依頼をしただけでハチミツどころか倉庫まで貰えていいものかと少し躊躇いもあるが。
(しかも結局蜂を倒したのマクシムなんだよなぁ……)
考えれば考えるほど俺たちは何もしていない事実が突き刺さってくる。それなのにこの好待遇に少し申し訳なさを感じながら、エニグマにもお礼をしっかりと言おうとそちらを見た。
「なんなのキミ! ほんっと可愛くない!」
「→☆▼↓!!!!!!!!!!!!」
「一回もプニプニできないとか動き遅すぎて欠伸がでるぜ、まぁ口ねえけどな、ハッハッハッ! って言ってます。」
「ああああああ腹立つー!」
俺はソッと目を逸らした。




