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変装も突き詰めればきっとそこに行きつく

「で、また帰ってきたわけですか……。」


 早く帰りたい、その一心だけで早歩きをしながらリベラシオンに戻った俺たちを待っていたのは、呆れた表情でため息を吐くマクシムの姿だった。ここを出てすぐに戻ったときと同じ反応に、今は少し嬉しささえ感じる。

 帰って早々変装グッズをくれ、と言われたマクシムの気持ちを考えると、ため息で済んだあたりマクシムも大概人が良い。普通ならそんなことより人探しをしろ、と再び追い出されていただろう。

 文句を言いたそうにしつつも倉庫を探してくれるマクシムに感謝しながら、俺たちも一緒になって漁っていた。


「フィンだけ変装したところで意味ないと思いますがね。なんせあなたがたは全員キャラが濃いですし。一回出会ったら忘れられないでしょう。」


 確かにマクシムの言う通り、俺がバレなくてもルキやソフィアでバレる可能性はかなり高い。ただでさえ五人で騒がしく歩いているし、ここにいますと言わんばかりにお互い名前を呼び合っている。

 それでも人通りが多いところやヒンメル軍がいる場所では、せめて俺だけでも変装していればうまく切り抜けられるかもしれない。


「してないよりマシ、というのであればこのような度なしメガネもありますが……。」


「メガネですって? ちょっと見せて!」


 俺が確認するより先に素早くメガネを奪うリーナ。それまで黙々と探していたというのに一体何があったのか、リーナは興奮しながらいろんな角度でメガネを見ていた。

 若干その様子に引きつつも、俺もメガネは興味があるのでよく見させてもらう。暗い緑のスクエアフレームのそれは、落ち着いた男性なら似合うのだろう。


「自分で言うのも悲しいが、俺には合わなすぎて逆に目立ちそうだ。」


「そうね……。なかなかのメガネだけれど、フィンではないわね。フィンにはやっぱ王道に黒縁、いやあえてそこは外して赤……。ううん、やっぱ暗い青

も捨てがたい……。」


「形もいろいろあるもんね! シンティアはやっぱスクエアが好きだなー! 大人の男性って感じでかっこいいもん。」


 丸はかわいくなっちゃうものね、とリーナとシンティアは俺を置いて熱く二人で語り出す。あくまで変装用のものを探しているのに、まるで普段用のものを探すかのようだ。

 メガネはひとまずこの二人に頼むとして、俺は不気味なくらい静かに漁っているソフィアとルキのところへ向かった。

 なんとなくこの二人が静かだと嫌な予感しかしないのは何故なんだろう。


「ソフィア、ルキ、何か良さそうな物は見つかったか?」


 恐る恐るそう声をかけると、二人は神妙な面持ちでこちらを振り返る。変装グッズ漁りで何故そんな表情になるのか理解ができないが、ロクなもの見つけていないことだけはなんとなくわかってしまった。

 やっぱ一番の常識人であるマクシムと一緒に探そうと二人に背を向けると、肩を今までにない力強さで引っ張られた。


「聞いてくれるか、フィン。オレは、オレたちはある結論に至った。」


「悪い、ちょっとマクシムが呼んでる気がするからまた今度な。」


「お姉さんたちは気づいてしまったの。変装という概念に囚われすぎていたってことに……。」


「俺の声にも気づいてくれるか? 定期的にみんな俺を無視して話し出すのなんなんだ。」


 これ以上は付き合ってられない、と逃げようとするが、肩に置かれていた手は今や肩を組むようにがっしりと腕ごとまわされている。

 道具屋の少年も捕まったときこんな気持ちだったんだろうな、と軽く同情しながら、俺は逃げるのを諦めて話の続きを待った。


「フィン、変装と言われて思いつくものはなんだ?」


「そんなの、メガネとか帽子とかマスクとか……。」


「それがいけなかったのよ〜! お姉さんたちもね、必死にそれらを探していたの。」


 じゃあ何ならいいというのか、何故かアンニュイな表情をして話す二人に疲れさえ感じてきた。なんだか少し腹ただしくもある。


「いいか、変装とは何も着ることだけが変装ではない。つまり、逆に脱いだっていいってことだ! 変装という文字も、変態の装いと書く。そう、全裸こそが変装なんだ。」


「それに考えてもみて? 遠くから歩いてくる五人組の中に一人だけ全裸の男がいたらどう〜?」


「その状況で捕まる以外の選択肢があるなら知りたいが。」


「まさかその全裸の男がフィンだとは誰も思わないだろ? それに全裸の男なんていたらみんな目を逸らす。つまりフィンだとバレない!」


「バレるし全裸で捕まる俺のこと考えてほしいんだが。」


 てわけで脱げよ、と変態みたいな要求をしてくる二人に絶対嫌だと腕を離そうとする。しかしどう動いても必死にしがみついてくるその腕は一向に離す気配を感じられない。

 わりと本気で肩から腕を離そうとしているのに、ビクともしないルキの腕に焦りを感じた。

 こうなったら二人を説得するしかない、と俺はかつてないくらい頭をフル回転させながら二人に話しかけた。


「てか全裸の俺を囲んで歩くおまえらも側から見たら大概シュールだからな。それに俺の全裸を見ながら歩かないといけないとかキツイだろ? やめておくべきだ。」


「フィン……。オレたちのことをそこまで考えてくれてたんだな……。でも心配すんなよ。フィンのためならオレたち、頑張れるから。」


「頑張んなやめろ。」


「大丈夫よ〜、頑張れるわよ〜!」


 何を言ってもこの二人には話が通じないのか、全て大丈夫だからで返されてしまった。全くもって大丈夫ではないし、このままではマジで犯罪者になってしまう。

 助けてくれ、とリーナとシンティアの方へ目を向けるが、まだメガネについて語っているし助けてくれるどころか気づいてさえくれていなかった。

 これはもう脱がされるしかないのか、と絶望しながらルキたちの顔を見ていると、どこから持ってきたのか分厚い本を掲げたマクシムがルキの背後に立ち、勢いよく振りかぶった。


「まじめに探したらどうなんですか。」


「いってえ! 何すんだよマクシム! んなもんで頭を殴るかぁ?」


 ルキが痛みに怯んだ隙に俺はマクシムの背後に逃げた。物凄く痛そうだが自業自得だと思う。

 痛みに悶えているルキを気にもとめず、マクシムはポケットに入れていたらしいメガネをこちらに差し出した。


「フィン、もうこちらの黒縁メガネでどうです? 今使えそうなのはこれくらいしかなさそうですし。」


「あ、ああ……。ありがとう、これで行くよ。」


 とりあえず危機は脱したしあとでマクシムにはお礼をしようと心に決め、同時にこの二人には当分近寄らないでおこうと俺は固く誓った。

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