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肩を組んで逃がさない


 正直、貿易の街だしもっと簡単に道具屋も鍛冶屋も見つかると思っていた。人通りが多ければそれだけ店もあるし、ヒンメルを嫌ってる職人もいるだろうと。

 だが実際は探し物が増えただけで、まだ仲間になってくれそうな人物の目星さえつけられていない。別にいつまでに見つけてこいと期限があるわけではないが、悠長にしている余裕もない。

 コードアナライザーはあくまでついで、にしておかなければ。


「俺たちは当分人探ししないと。あれこれ手を広げる余裕なんてないぞ。」


「あ、オレ普通に忘れてたわソレ。でもま、道具屋は見つかったし初日にしては上々だろ! な、少年!」


「え。」


 ルキに肩を組まれながら少年は困惑した声をあげた。


「こんだけ語り合った仲だぜ? もう仲間と言っても過言ではないだろ。」


 過言である。それどころかこちらの事情を何も知らない少年にしたら、急に距離を詰めてきた馴れ馴れしい集団みたいな感じだろう。


「顔だけのお兄ちゃんが急に変なこと言ってごめんなさいね〜。ほら、お姉さんの方においで〜。」


 若干ルキに失礼なことを言いながらソフィアが少年を自分の方へ引き寄せた。それに素直に従っているあたり、少年も少しルキが怖かったのだろう。

 ソフィアの側なら変なこともされないし安心だ。そのまま宿屋か何処か安全なところに少年を連れて行って、今日はもう自分達も休むことにしよう。

 行くか、と声をかけようとすると、ソフィアが屈んで少年に話しかけた。


「ところでお姉さんたちね、道具を扱ってる人を仲間にしないと殺されちゃうの〜。もちろん仲間になってくれるわよね? ほら、今ならこの珍しい薬草もついてくる〜!」


「脅すな物で釣るなおまえも肩を組むな。」


 安心どころかルキよりも汚い手を使ってこちらに引き込もうとするソフィア。

 そんなソフィアに少年はというと、先ほどよりも困った表情をしてこちらを見てきた。口にはしないが、どうして自分がこんな目にといった感情がダダ漏れである。

 助けてやるか、と少年に近づいたとき、視界の隅でシンティアとリーナがバッグをごそごそと漁っているのが目に入った。

 この流れからして絶対にロクなものを探していないだろう。その証拠に2人から聞こえる言葉は、鼻眼鏡だのロケットランチャーだの理解できない、理解したくない単語が多かった。というかロケットランチャーがバッグにあるわけがないだろう。

 それは少年にも聞こえているようで、どんどん曇っていく表情に俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「俺の仲間がすまない。さぁ、安全な場所まで送ろう。」


 そう言うと、少年はこちらをジッと見つめて口を開いた。


「仲間って、にいちゃんたちなんかの集団なの? 俺は商売が自由にできるなら別に場所には拘らないけどさ。」


「よく聞いてくれたわね少年! ヒンメルを倒すために立ち上がった正義の集団よ! そしてこのお兄ちゃんは今話題の指名手配犯。」


「ああああ! 通りで見たことあると思った!」


 そうでしょう、と何故かリーナが得意げに話し出す。いつの間にか少年を自分の方に引き寄せてこれまた肩を組んでいるが、もうそれに突っ込む気力はなかった。


「まぁ、拠点はあっても人が全然いなくてな。今こうして一緒にヒンメルと戦ってくれる仲間を探しているんだ。」


「ふぅん、ヒンメル相手にか……。その拠点に店構えて寝泊まりもできるってんなら、仲間になってもいいよ。戦力にはなんないかもだけど。」


 少年がそう言うと、もう逃がさないとばかりに無言でシンティアが今度は肩を組んでいた。流行っているのかそれは。

 その様子を流しつつ、簡単に仲間になってもいいと言った少年を真っ直ぐ見て俺は続けた。


「商売はできるが、拠点がいつ襲撃されるかわからないし、危険が常に付き纏うんだぞ。」


「危険なんてどこにいたって同じだよ! さっきから何度もそんな目にあってるし。」


「それは確かに……。」


 出会ってからまだそんなに経っていないのに、この少年はすでに二回も悪い大人に絡まれている。たまたま今日がそういう運の悪い日ならともかく、そうでないならここで別れるのも考えものかもしれない。

 拠点なら危なくなってもマクシムや俺たちが守ってやれる、かもしれない。


「わかった、じゃあこれからよろしくな。拠点の……、あー、リベラシオンの位置はここなんだが、行けそうか?」


 マクシムにもらった地図を見せてリベラシオンの場所を示す。

 山道を越えないといけないため、少年一人で行くとなるとまた変な大人に絡まれそうな気もするが。

 どれどれ、と少年は地図を見ると、途端に顔を明るくさせて話し出した。


「そこってもしかしてマクシムさんのとこ?」


「あら、知ってるの?」


「有名だからね! ヒンメル対抗組織だって。それに商売に行ったことあるもん。確か登録してあったからワープできたと思うけど……。」


 少年はそう言うと、ポケットから小さな石のようなものを取り出した。黒くて丸いその石は、どこか淡い光を出しているようにも見える。

 知らないはずなのに何故か見たことがあるようなそれが、少しだけ怖くも感じた。


「なんだそれ?」


「これはワープができる装置、みたいなものだよ! 行ったことがあって、登録した場所なら瞬時に行き来できるんだ。かなりのレア物だし、普通の人は知らないと思うけど。」


 やっぱ登録してたよかった、と言いながら少年はその石に手をかざした。するとその次の瞬間、少年の体がスッと消えて光だけがその場に残っていた。


「アドラーがいつも消えるのもアレを持ってるからなのかな。」


「そうかもしれないわね〜。というか、アレがあったら人探しも楽になるのに〜。」


「帰ったら道具屋寄って売ってないか聞いてみようぜ。とりあえず今日はもうオレ休みたーい!」


「シンティアも眠いー!」


「賛成だな、俺も疲れた。」


 あの石やコードアナライザー、いろいろと気になることがたくさんあるが、今日はもう休んで今度考えるとしよう。

 気が抜けたせいか一気に重くなった足を動かしながら、俺たちは宿がありそうな場所へ歩いて行った。


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