勢いでいく
「その子を離せ!」
「あぁ?」
アドラーと少年の元へ急いで駆けつけると、アドラーはダルそうにしながら少年を離してこちらを見た。その様子に思わず素直に離すのかよとルキがツッコミを入れたが、正直俺も同じ気持ちでそれを見ていた。
普通こういうのはなかなか離さなくて、ナイフやら銃を首に当てて脅しにかかるものじゃないのか。
その子を離せ、なんて正義のヒーローのように言ったこっちの身にもなっていただきたい。これではまるでヒーロー気取りをしにきたイタイ男みたいになっている。
もちろん少年が無事なのはとても良いことだし、それがこちらの望みでもあったわけだが。
(思ってたのと違う……!)
俺がそう勝手に羞恥を感じて突っ立っていると、リーナが急いで少年を引っ張り自分の後ろに隠した。ただ離せと叫んだ俺よりもよっぽどヒーローっぽい動作に、俺は少し自分が情けなくなった。
「ちょっとアドラー! この子に何してたのよ!」
「おうおう、別にちょおっとだけ尋ねてただけだぜ?」
どう見ても何かを尋ねていた雰囲気ではなかったが、少年を見ると怪我などは見当たらない。胸ぐらを掴まれていたものの、それ以外に何かされた様子もなく、ひとまず無事でよかったと少しだけ安堵した。
「さてと、俺も忙しいし今はおまえらクズどもに構ってるヒマもないんでなぁ。殺り合うのは次な、次ぃ。」
「あっ、ちょっ、待てアドラー!」
「安心しろよなぁ、フィン・クラウザー! まーたすぐに会える。俺たちはそういう運命なんだからなぁ。」
じゃあな、と言いたいことだけ言ってアドラーは空間転移した。前も思ったが瞬時に移動できるその能力は便利で羨ましい。
さて、俺の精神面はいろいろあったが、とりあえず戦闘にならなかったのはよかった。今の自分達では、悔しいがアドラーに勝つことはできない。
またすぐに会える、とさりげなく気味が悪いことを言われたのも気になるが、とりあえず聞かなかったことにしたい気持ちでいっぱいだ。
どうか次に会う時はもっと力を持ったときでありますように、と願いながら俺は少年へと近づいた。
「あいつに何を聞かれていたんだ?」
そう尋ねると少年は少し顔を曇らせて、とても小さな声で話し出した。
「コードアナライザーは持ってないかって。」
「コードアナライザー? なんだそれは?」
「にいちゃん声大きい! もっと落として!」
「す、すまない……。」
少年に怒られながら俺は声量を落とした。それにホッとしたかのように少年は話を続ける。
「ちょっと特殊な機器だよ。世界でも数個しか存在してなくて、新しく作ろうにも誰も作り方がわからない、作った人物もわからないっていう不思議なもの。」
「かなりレアなんだな。」
「うん。その機器があると、対応したチップに入っている映像を映し出すとか。」
「チップってまさか……!」
俺は急いでバッグから今まで手に入れたチップを取り出した。大型のモンスターと戦ったあとに落ちていたこれらがそのチップだとすれば、ここから何か有益な情報を得ることができるかもしれない。
とは言え、何が記録されているかわからないし、これがどういった経緯でうまれたかもわからないので期待はできないが。
「なんだ持ってんじゃんにいちゃん! 何処で手に入れたのか知らないけど、それをコードアナライザーに読み込ませたら何か映し出されるかもね。」
「でも今の話だと、簡単には手に入りそうにないわね。」
世界でも数個、それにアドラーが探して見つからないもの。そんなものがそう簡単に見つかってくれるわけもなく、このチップの中身がなんなのかわかるのはまだ先になりそうだ。
しかし何故アドラーは俺たちを捕まえるよりもコードアナライザーを優先しだしたのか。どうしても見たいものがあるのか、それともただの気まぐれか。
何にせよ、これに映像が入っているとわかった以上気にならないわけがない。人探しのついでにその機器も探してみるとしよう。
まだ一人も仲間を見つけることができていないのに、やりたいことは増えていく。あくまでついでだついで、と俺は自分に言い聞かせて首を振った。




