付け続ける
マクシムに貰った地図はかなり詳細に書かれており、先ほどは見つけられなかったが、坑道などがあちこちにあることがわかった。この近くの坑道はバツ印がついているので、おそらくもう使われていない古い坑道ばかりなのだろう。
そういうところこそ何か面白い出来事が待っていたりするもんだ、と少し冒険心をくすぐられるが、今は寄り道をしている場合ではない。いるかわからないが道具屋と鍛冶屋を見つけてこなければならないのだから。
それにしても本当に地図を貰いに帰って正解だったと思う。あのまま歩き続けていたら南西にあるよくわからない鉱山地帯に出ていただろう。
これからはどこか行く前に必ず地図を貰おう、と俺は固く誓った。
「まさか狩人が方向ミスるとは思わなかったが。」
「いやー、オレ絶対北に向かってる自信あったんだけどなー。真逆だったなんて思わなかったぜ。まぁ狩人っつってもいろいろ事情がある狩人だし?」
「おまえの事情はシャレにならなさそうで聞くのが憚られるよ。」
間違いねえな、と笑うルキを小突きながら俺たちは道なき道を歩いて行った。ゴツゴツした岩、常に舞う砂埃、どれもリンドブルムにはなかったもので、とても新鮮に感じる。新鮮と言っても俺がリンドブルムにいたのはたった数日だけなのだが。
それにしてもマスクとか欲しいな、と砂埃に早くもめげそうになっていると、バレッタを外そうとしているリーナと目が合った。
「あ、せっかく貰ったのに砂埃で汚しちゃうかなって思って。本当は外したくないんだけど……。」
リーナはそう言って少し困ったような顔をしながらバレッタに手を当てていた。確かに特別な加工をしたわけでもないそれは、砂埃で傷がつくことはないと思うが、多少は汚れてしまうだろう。
それでも何処かで洗えば元通り綺麗になるだろうし、あまり気にしなくてもいいと思う。というより、なんとなくそれを外して欲しくなくて、俺は外そうとしているリーナの手を取って立ち止まった。
「別に外さなくたって、後で洗えばいいだろ。」
「それはそうだけど……。なんかフィン怒ってる?」
「怒ってない。いいからそのままつけてろ。」
そんなに言うなら、とリーナは外すのを諦めた様子でこちらを見た。それに満足した俺は手を離して再び歩き出そうとした。
「はーあ、オレもイチャイチャしてーわー。ソフィアさん見ましたあ? あれ完全に俺のものって印だってやつですよ。」
「見ましたわよルキさん〜。この先出会う男に牽制するから取るなってやつね〜。」
「シンティアもフィンとイチャイチャするー!」
後ろで好き勝手言い出したルキたちに、イチャついてねえよとだけ言って今度こそ歩き出した。今日中に着かなくても、せめてこのゴツゴツした岩山は抜けたいものだ。
(地図的にはまだまだかかりそうなんだよなぁ……)
貰った地図をもう一度見てため息をついた。地図によると当分岩山が続きそうだ。
せめて砂埃だけでもなくなれば、ここで少し休憩しようとかできるのだが。この快晴では雨で砂埃をなくすことも望めそうにない。
「岩ばっかだからオレの足マジで鍛えられそう……。すでにパンッパンだもん。」
「私も疲れてきたわね……。リンドブルムは岩山なんてそんなにないから、ここまで体力持ってかれるなんて知らなかったわ。」
「アゲート人って体格が良い人が多いっていうけど、納得よね〜……。」
確かにこんな道を毎日歩いていたら筋肉もつくだろう。シンティアみたいに女の子ならともかく、成人男性ならすぐムキムキになれそうだ。
それなのにマクシムはやけに細くてスラっとしていたな、と少し失礼かもしれないことを思ってしまった。でもアゲート人らしさが見当たらないどころか、どこか違和感を感じているのも事実だ。
それはおそらく、アゲート人は体格が良くて性格も豪快、というイメージが強いからだろう。マクシムはそれとは真逆の性格だし、見た目も当てはまらない。
まぁ別にどこ出身だろうと俺には関係ないし、どうでもいいことだ。帰っても気になっていたら雑談として聞いてみればいい。
(人の出身気にしてる暇があったら、俺自身の出身を思い出したいんだけどな)
あまり思い出せない記憶に少し悲しくなりながら俺は頭を振った。




