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防衛する


「さて、今日はシンティアの家に少し近づけるといいんだが。」


 朝日とともに目覚めたみんなと朝食を食べながら今日の予定を立てる。とりあえずアゲートにくるという目標は達したし、あとはなんと言っても風呂、ゆっくり寝られる寝床のためにもシンティアの家の近くまで行きたいところだ。

 キャンプも楽しいし悪くはないのだが、見張りでルキと交互に寝不足なのが続くと結構キツイ。リーナたちにも見張りをしてもらってもいいのだが、なんとなくそれは男としてどうなんだという気持ちになる。

 だがまぁ、それはそれとしてぐっすり寝たい気持ちももちろんあるので、なんとかして早く拠点を持ちたい。


「フィン、あのね……。」


 あれこれ頭の中で考えているとシンティアが話しかけてきた。


「どうした?」


「洞窟通ってきたから、お家までの道わかんなくなっちゃった……。」


 不安そうにそう言うシンティア。考えてみればシンティアがリンドブルムに来たときは検問所を通って橋を渡ったのだろうし、そうなるのは当然だ。ここからはその橋も見えず、今アゲートのどの辺りにいるかもわからない。

 大丈夫だ、と声をかけて頭を撫でると、シンティアはホッとしたように顔をゆるませた。


「とりあえず今度こそ街とかで泊まりたいな。どこに着くかわからないが、まっすぐ歩いて行こう。」


 俺がそう言った瞬間、近くでパンッという破裂音が聞こえた。


「なによ今の……。」


「銃声だな、あっちの方か。」


 武器を構えながら銃声がした方に向かうと、1人の少年が小型モンスター相手に戦っていた。少年は焦っているのか、銃弾はモンスターに擦りもせず全く違うところに飛んでいる。

 助けようにもそのどこに飛んでくるかわからない銃弾のせいで近距離戦は無理そうだ。それなら、と俺は水魔法をモンスターに向かって唱えた。


「押し潰せ、スコール!」


 その言葉とともに呆気なくモンスターは溺死して消えていった。少年はというと何が起きたのかわからない様子でボケーっとしている。

 怪我はないか、と問い掛ければ、ハッとして頭を勢いよく下げた。


「ありがとうにいちゃん! にいちゃんのおかげで助かったよ!」


 そうお礼を言う少年を見ると、服の一部にアゲートの紋章が描かれていた。

 間違いない、この少年はアゲート人だ。街の場所やヒンメルに対抗している組織、あの洞窟のことなどいろいろ聞けるかもしれない。

 とりあえず街の場所だな、と少年に話しかけた。


「怪我がなさそうでなによりだ。ところでこの辺りに街とかないか? 泊まれる場所があるといいんだが。」


 そう聞くと少年は少し考えてから口を開く。


「街はないなぁ……。でも小さな集落、みたいなものはあるよ。着いてきて!」


 そう言って歩き出した少年の後ろを着いていく。集落に通じる道だし多少は整備されているだろうと思ったが、全くそんなことはないどころか道がなかった。

 それどころか軽く山登りのように鉱山を登っていく少年。本当に近くに人が住んでいる場所があるのか、と疑いたくなるほどの道のりに足が悲鳴をあげそうだった。


 歩き始めてからどれだけ経っただろうか。まだ着かないそこに近くないじゃないかと思っているのは俺だけではないはずだ。

 それでも人がいる場所に行けるのはありがたいので、黙って後ろを着いていく。本当はあれこれ聞きたいこともあるのだが、なんとなく聞けずにただひたすら歩いていた。

 まだなのか、と思っているとようやく建物が並ぶ風景が見えてきた。


「あそこだよ! そんなに広くないし店も少ないけど、休むくらいはできるから。」


「それが一番今はありがたいな。とにかく寝れたらそれでいい。」


「あとはお風呂に入れたら文句なしね。」


 風呂にベッドについでに美味しい食べ物でもあれば最高だが、残念ながら着いてすぐゆっくりするのは難しそうだ。


「おいおい、なんか派手にやってねーかアレ。」


「あれはヒンメルの紋章ね〜。」


 集落の入り口付近で戦っているヒンメル軍と集落の民。何故ヒンメルがここを襲っているのかわからないが、せっかくたどり着いた集落、機能しなくなっては困る。


「集落側に加勢する。ヒンメルを追い払うぞ!」


「任せろ!」


 そんなに多いわけでもないヒンメル軍に突撃すると、俺に気づいた兵士が無線で仲間に連絡しようとしていた。

 困ったことにここの兵士たちも俺が指名手配犯ということは知っているようだ。


「それは困るわね〜。」


 ソフィアがすかさずクナイで無線を壊す。兵士がそれに驚いている間に俺は一気に近づいて首に手刀を落として気絶させた。

 かなり強めにやったから当分は起きないだろう。


「双剣は使わないのね〜?」


「人殺しになるのは勘弁だからな、ソフィア後ろ!」


 瞬時に屈んだソフィアはそのまま後ろを見ずにクナイを放った。それは見事に兵士の武器を飛ばしている。

 どういう芸当だよ、と思いつつも俺は慌てて距離を詰めて蹴りをお見舞いした。綺麗に入ったしこっちも早々起き上がることはないだろう。


「意外と武闘派なのね〜。」


「そっちもな。」


 近くにいたヒンメル軍は倒したが、リーナたちは大丈夫だろうか、とリーナたちの方を見るとそちらも片付いたようで、地面にはヒンメル軍が散らばっていた。

 集落の人たちも戦闘の後処理を始めており、壊された建物などはないようだった。

 その様子にホッとしていると、案内してくれた少年とともに一人の男性がこちらに歩いてきた。


「旅の方、加勢いただきありがとうございました。私はここのリーダーをしている、マクシムというものです。」


 丁寧に頭を下げてそういう男性、マクシムは人当たりが良さそうな表情をしながらも隙は一切感じさせなかった。

 この雰囲気はただの集落のリーダーではなさそうだが、いきなり聞くわけにもいかない。

 とりあえず俺たちも名乗るべきだろうか。だが俺の名前は有名になりすぎているしさすがにまずいか、と考えているとマクシムはさらに言葉を続けた。


「いろいろ聞きたいことがあるご様子。ですがいろいろとおつかれでしょうし、今日は宿でお休みください。また明日お礼も兼ねて質問などにお答えします。」


 宿、という言葉にリーナたちはわかりやすく反応した。


「やっとお風呂に入れるわね!」


「オレ混浴希望ー!」


「シンティア暑いから水風呂がいいー!」


「お姉さんはサウナつきで〜。」


 それぞれ好き勝手言いながら、案内してくれるというマクシムのあとをついていく。


(やっとゆっくり寝られる……)


 とはいえ先ほどのように襲撃があるかもしれないので少しは気を張っていないといけないが。それでもキャンプよりはマシだ。

 逃げてからまだ数日だが、もうすでに屋根の有難さを知った気分だった。


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