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出る


 あれからもうどれだけ歩いたのか、俺たちは未だ洞窟内をウロウロしていた。すでに体は重たく、おまけに眠気もきている。早く洞窟を抜けてしっかりと休みたい。

 仲間たちの様子はというと主に精神的な疲労がきているのか、誰一人として雑談さえせず、ひたすら無言で歩いている。ここに入る前のあのテンションは何処へいったのか。

 全員疲労を滲ませた顔で黙々と歩き続ける様はなかなか不気味なものがあった。


(どれだけ続いているんだこれ……。早く出ないと気がおかしくなりそうだ)


 頼むから早く出口現れてくれ、と俺は必死に足を動かし続けた。そろそろ限界だ。

 いっそここでキャンプをして一旦休憩してもいいかもしれないが、すでにあの蜘蛛のせいで洞窟自体トラウマになりかけているため、休む時間があったら少しでも早く出たかった。

 それはみんなも同じのようで、誰もここでキャンプしようとは言い出さなかった。

 この重い空気だけでもなんとかならないか、と思案していると、ソフィアが急に声を出した。


「あれって出口かしら〜?」


 出口、その言葉に嬉々として視線をやると、わずかにだが光のようなものが見える。

 やっと見えてきた希望に他の仲間たちも張り詰めていた空気をなくしてリラックスし始めた。


「すっごい長かったな。これで行き止まりだったらどうしようかと思った。」


「でもまだ安心はできないわ。出口の先が何処かわからないんだもの。」


 リーナの言う通り、何処に繋がっているかなんて予想もできない。ここに来るまでに方向感覚がなくなるほど歩いたし、くるくる回っているだけなのではと思うくらい曲がりくねったところもあった。

 リンドブルム内に出てくれればまだいいが、全く知らない土地や、軍事基地などに出てしまったらそれこそ大ピンチだ。

 出口だからといって油断せず、慎重に進まないといけない。


「頼むから変な場所はやめてくれよ。」


 俺たちは緊張しながら光の先へと歩いた。



「何処よ、ここ……。」


 出た先は海のすぐ近くであり、リンドブルムのようにも見えた。しかしリンドブルムのように緑豊かとは言えず、どちらかというと鉱山地帯のような、岩山があたり一面にゴツゴツと広がっている。


「ここ、アゲートだよ! だってこうやって岩山があるの、アゲートならではだもん!」


 シンティアが興奮しながら説明し出した。少し砂埃が舞っているのも、この国では普通のことらしい。

 だがそうなると俺たちは海を渡ったことになるわけで。どおりで長い道のりだったわけだ。


「でもなんでこんな国と国を結ぶ洞窟があるんだ? それに検問所みたいに兵士もいない。簡単に行き来できてしまうじゃないか。」


 それこそ犯罪者なんてこの場所を知っていればここを通って国を出て行くだろう。そんなことができるのに、兵士の一人もいないのは不自然だ。


「この洞窟かなり古い感じだったし、ずっと昔に作られてから放置されてたのかもしれないわね。」


「仮にここを通ろうとしてもあの巨大蜘蛛に食われちまうってとこだな。そこらの犯罪者じゃアレには勝てねえだろ。とりあえず目的の国に来れたのはラッキーだな。」


 そう、何はともあれリンドブルムを抜け出してアゲートに来ることには成功した。それも誰にも見つからずに。途中死にかけはしたものの、無事にここまで辿り着けている。

 もちろん、アゲートに来たからはい安全というわけでもないだろう。ヒンメルと仲が悪いアゲートが、リンドブルムみたいに軍を出して追ってくることはなくても、ヒンメルのスパイがいないわけがない。

 だがあのままリンドブルムにいるよりは確実にマシなので、とりあえずシンティアの家を目指しつつ今日もキャンプをすることにした。


「ここら辺でいいかな。まだ夕方だが、焚き火の準備をしよう。」


「ならオレはまた狩でもしてくっかなー。やっぱ肉食いてえし。」


「シンティアもついてくー!」


「お姉さんも探索行く〜。」


 そう言って3人は素早く出かけて行った。間違いない、あれはキャンプの準備をするのが面倒だから逃げただけだ。

 じゃあしりとりしようぜ、最初蜘蛛な、というこれまたつまらなさそうな会話が遠ざかっていく。

 まぁそれでも肉を獲ってきてくれるのは本当だろうし、すぐ調理に移れるように俺とリーナも準備に取り掛かった。

 といっても、また薪を作って火をつけるだけなのですぐ終わり、暇を持て余した俺はリーナへのアクセサリー作りを開始した。預かっている鉱石はこのままでも十分綺麗だが、もう少し研いでも良さそうだ。

 形はリーナに似合う花をモチーフにして、細かく削っていく。久しぶりに聞くこの削るときの音に、少しだけ過去に近づいた気がした。


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