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考える


 無事森の中まで逃げ切り、昨日泊まったところのように少し開けた場所にたどり着いた。

 まだ2回目だというのにもう慣れたような手つきで各自焚き火や寝床を作ったりしている。昨日と違うことといえば、道具屋で買ったらしい鍋とお皿と箸、そしてコップまで人数分準備されていることだ。

 野菜や調味料なんかも買ってあるので当分食べるものには困りそうにない。


「野菜たっぷりのポトフできたわよ〜。」


 ソフィアがそう言えば待ってましたとそれぞれ席に着く。俺も食うか、と磨いていた鉱石を一旦しまって器を手に取った。


「ソフィア天才。ほんとおいしいわね。」


「ウインナーなしでも全然いけるぜこれ。」


「シンティアおかわりー!」


 みんなお腹が空いていたようで、ソフィアが作ったポトフはあっという間になくなっていた。ウインナーなしで大丈夫なのかと心配だったが、味付けが絶妙で肉なんてなくても全く問題ないおいしさだった。

 心ゆくまでポトフを堪能したあとはこちらもソフィア特製のハーブティーを淹れてもらい、みんな普通にキャンプを満喫してしている人みたいに寛いでいた。

 その様子に今日はもうあとは自由時間にしてもいいな、とも思ったがどうしても気になることが多すぎたので本題へと乗り出すことにした。


「ルキ、あの男のことなんだが……。」


「悪いがあんまり答えられることはないぜ。別に教えたくないわけじゃない、ただアイツはちょっと特殊だ。」


 ルキはそう言いながら俺から視線を逸らし、ジッと焚き火を見つめた。


「そうは言っても気になるわよ。あの男は一体なんなの? ルキのことも、フィンのことも知ってるみたいだったけど。」


「アドラー・オプスキュリテ。軍人。あの壁はアイツの魔法。壊すのは鋼魔法しか無理。一応言っておくがオレはアイツの仲間じゃないし、アイツの部下だったとかでもない。」


 ルキはそれだけ言うと、これ以上言うつもりがないらしく少し離れた場所に移動した。まだ聞きたいこといろいろあるのだが、本人が言うつもりがないなら仕方ない。


「ルキがアイツの仲間だったら街から出る時に俺たち全員捕まっていただろうしな。」


「それはそうね。鋼魔法で助けてもらってるし、ルキが敵とは思えないわ。」


「お姉さんはそれよりもフィンの双剣を知っていたことが気になったわね〜。汚かったって。」


 それは俺も気になっていたことだ。どこかで出会っていたのだとしても、あんながっしりとした体格に眼帯をつけた男なんて忘れるわけがない。

 絶対に会ったことはないはずなのに何故知っているのか。そしてなぜ綺麗になったことを疑問視されたのか。

 ルキはあの男、アドラーが特殊だと言っていた。特殊ってなんだ。確かにただの軍人ではないことはわかる。だが仮に兵士長や軍団長であったとしても、特殊とは言わないだろう。


(俺とルキを知る男か……)


「もう一つ言えるとすれば、アイツはこの国の軍人じゃない。」


「この国の軍人じゃない? でもあそこにいたじゃないか。それに俺を追ってきてる。」


 指名手配されてからまだ2日目、他の国からわざわざやってきたとも思えない。それも他国の指名手配犯を捕まえるために。

 今までそんな話は聞いたことがないし、そこまでするメリットが他国にあるとも思えなかった。


「まぁこの国でキミを見かけた情報があったから、この国の中央司令部から手配書が出ただけだと思うぜ。アイツは軍事力の国、ヒンメルの人間だ。」


 ヒンメル、その名前にわかりやすく反応したのはシンティアだった。先ほどまでも真剣な顔をしていたが、その名前が出た途端顔を強張らせている。

 どうした、と聞くとシンティアがただ首を横に振って口は開かない。


「ねぇ、てことはヒンメルの軍がフィンを追ってるってこと?」


「そういうこと。他国の軍まで動員してね。」


 そこまでさせるほどの罪を犯したのか俺は。一体それが何なのかまではルキも知らないらしく、次にアドラーに出会ってしまったときにでも聞くしかなさそうだ。


「それで、ルキはなんでアイツと知り合いなのよ? 明らかに殺意向けられてたけど。」


「ちょっといろいろあっただけだぜ。ちょっといろいろ。」


「ちょっとなのかいろいろなのかハッキリしなさいよ。」


「はいもうこの話は終わりー。今日はオレが見張ってるからさっさとキミたち寝なさい。」


 そうわかりやすく話を切り替えてルキは魔法弓の整備を始めた。これ以上はもう何も言う気はないらしい。

 その様子にみんなも聞き出すのを諦めたようで、次々と就寝の挨拶が聞こえてきた。

 俺としてはこのあといい加減鉱石を磨きたいのだが、今日一日だけでいろんなことが起きて、いろんな話をして、頭も体もそろそろ限界になっている。


(無理をして倒れるわけにもいかないし、俺も寝るか)


 ルキに見張りのお礼だけ言って、できるだけ綺麗な岩の上に寝転がる。ゴツゴツしていて少し痛いが、土の上で汚れるよりはマシだ。


(明日はこれからどこ行くか決めて、またキャンプかな。そろそろ風呂にも入りたいが……。あと……)


 段々と遠ざかる意識に抵抗することもせず、俺はそのまま朝まで寝た。



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