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回復魔法は禁忌指定です  作者: 鳴座
第1章 回復魔法は如何ですか?
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第2話:魔法の証拠

 自称魔法使いの服装は、ジーパンにTシャツだった。

 まさか、魔法使いの服装がこんなラフなものだとは…


「ふむ…確かにこの服装だと威厳も何もあったものではないね」


 自称魔法使いは少し考えこむような仕草を取ると、マントをバッと翻した。

 と、同時に服装が変化していた…ことは無かった。

 そのまま、現代日本のラフな服装だった。なんでだよ…


「いやー、この服装は中々楽でね。着替えるのが惜しいんだよ。別に、このままでも構わないだろう?」


「はあ…まあ、別にいいんですけど…」


 別にいいんだが、その前にこの状況はどういうことなのだろうか?

 痛まない体の傷。明らかに病院ではないこの部屋。

 そして、自称魔法使いのこの人物。男かも女かも判別つかない、不思議な雰囲気を漂わせている。

 この状況、明らかに異常だ…


「すまないね。この状況には色々と混乱していると思うけれど、今からきちんと説明はしよう。ちなみに私は男でも女でもない。魔法使いは特別なんでね。」


「…」


 ふむ、これは確定だな。

 こいつ、俺の心を読んでいる。そうだろう?


「ふふん?」


 明確な答えは返してこなかったが、その代わりにウインクを返してきた。

 何だこの気障な奴は?ちょっと、いや、かなり貌が美形な分、腹立つな…

 などと考えながら俺が自称魔法使いをじっとりと睨んでいると、わざとらしい咳払いを一つ。


「そんなことより、聞きたいことが有るだろう?」


「あぁ…」


 俺はベットに腰掛け、この自称魔法使いとやらの話を聞くことにした。


「それと、私は自称ではなく本当に魔法使いなんだが…」


 *


「そうだね…君は、車に轢かれてあと少しで完全に死ぬところだった…」


 ふむ。そこまでは記憶にある。

 俺は確かに、車に轢かれて死ぬところだった、というよりほとんど完全に死んでいたのではないだろうか?


「しかし、そんなときにこの私、〈銀の魔法使い〉が通りかかっ…君を助けるために現れたというわけさ!」


 なんて恩着せがましい奴なんだ…

 しかし、この話は本当なのだろうか?

 パッと見たところ、この部屋には治療器具のような物の一切は見当たらない。

 そして、この自称〈時の魔法使い〉は医者ではないと自ら言っていた。

 つまりは…


「そう。私の魔法で、君の体を()()()()()


「…魔法で、ねえ」


 そんなこと、いきなり言われて信じられるはずもない。

 それなら、病院で寝ていた俺を何らかの理由で誘拐した、という方が納得がいくというものだ。


「君なんか誘拐したところで、何のメリットもないと思うけれど?」


「…ぬう、悔しいが、一理ある」


 なんで唐突に俺は傷つけられなければならないんだ…

 閉じた傷口がまた開いちゃうだろ。


「いきなり言われても信じられないだろうし…良いだろう、魔法を見せてあげるとしよう」


 まあ、そうなるよな。

 この、いかにも異常な状況をのみ込むためには、実際に魔法というものを見せてもらわなければならない。

 しかし、こんな状況で見せられても、到底信じられるものではないことも、また事実。


「ふむ、君の言う事にも一理あるね…よし、ではこういうのはどうだろう?」


 そう言うと、自称魔法使いは、俺の左腕を自身の左手で掴んだ。

 同時に、こいつに握られた部分が淡く緑色に輝いていく。


「なっ…!何してんだ…!?」


「ふふん。驚くのはこれからだ」


 緑の光が収まると、自称魔法使いは握っていた手を放し、そのまま俺の左腕をピンと指で弾いた。

 すると、俺の肘から先がずるりと落ち…


「ぁあぁああ!?!?!?」


「ふふん。驚いたかな?」


「言っ…てる…場合かっ!」


 何が!何が起きたんだ!?

 一度も目を離していなかったのに、なんでいきなり!?

 こいつ、一体何を!?


「痛いかい?」


「そんなの痛いに決まって…!」


 …痛くない?

 俺の左腕は、鋭い刃物で両断されたかのように綺麗な断面を見せていた。

 しかし、全く痛みを感じることは無い。

 まじまじと見ていると、人の腕の中身ってこうなっていたのか…なんて感想が浮かんでくる。

 いや、今考えるべきはそんなことではない!


「痛くないだろう?人間の体に存在する様々な時間軸を別々に弄ったからね。慣れれば君にもできるようになるさ」


「そんなことより!早く俺の左腕を元に戻してくれ!」


「ふふん。戸惑う表情。焦る表情。愉快愉快」


「だから!言ってる場合かって!」


 こうして、俺は初めて魔法というものを目にすることになった。

 まさか、初めて見る魔法が人体切断マジックじみたものになるとはな…


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