プロローグ:0話
趣味です。
毎日の予定の隙間を縫ってちょこちょこ書いてます。
頑張って、週に一度か2週間に一度は上げられるようにします。
でも、何分趣味なので温かい目で見てほしい…
小さい頃から、回復魔法というやつが気に食わなかった。
いや、気に食わなかったというと少し語弊がある。理解できずにイライラした、というのが正しいだろう。
我ながら、狭量で細かい子供だったと思う。
しかし、やはり気になるものは気になるのである。
子供の頃遊んだRPG。
中学生の頃読んだファンタジー小説。
高校生の今、遊んでいるソーシャルゲーム。
そのどれもに、回復魔法が出てくる。
……回復魔法ってなんだ!?
傷を治癒する?どういう原理なんだ?
どこから欠けた肉体を集めてきたんだ?というか、欠けた肉体をくっつければ簡単に傷が治るものなのか?
それとも肉体の成長を一時的に早めるとか?それなら納得できなくもないが、そんなものを戦闘中にイチイチかけていたら、すぐに疲労して戦闘どころではなくなってしまうだろ!?
…とまあ、色々と文句を垂れ流しているが、何故俺がこんな他愛もないことを考えているのかと言えば、それは単に、俺が現在進行形て死にかけているからだ。
いやー、まさか暴走した車が信号待ちの列に突っ込んでくるとは…
逃げ遅れたのが俺だけだと良いのだが…
とまあ、そういう訳で、俺が何故回復魔法のことなんて考えているのか、分かってもらえたと思う。
視界も朧気。手先は冷たい。
……もし。もしである。
もし、仮に、仮定として、回復魔法なんてものがあったして、それを使えるモノ…
神や天使や、この際悪魔でも良い。
いや。この場合は魔法使いになるのか?
まあ、誰でもいい。
もしも、回復魔法を使える何者かがこの場所に現れて、俺にこのように聞いてきたとする。
「私なら、回復魔法で君の負っている傷を治すことができるが、どうするかね?」
俺は、恐らく、皮肉げに笑ってこう答えるだろう。
「やれるものなら、やって見せてくれよ?」
だって、そんな原理も分からないものに、この傷を治せるわけがないだろう?
…あぁ、意識が遠くなってきた。
周囲の音も聴こえない。
最期に考えることがこんなことだなんて…
本当に…しょうも…ない…事だ…
弟弟子にも妹弟子にもウンザリしていたので、旅に出ることにした。
久々のシャバの空気は気持ちが良い。このまま放浪の旅をしながら、時間を潰すのも良いかもしれない。
しかし、残念ながら私にはそこまでの自由はない。
なのでまあ、この旅も残り72時間くらいだと思っていた、のだが、そこで何やら面白い言葉を耳にしてしまった。
魔法使いがいたとして。
そいつが「この状況」を見て回復魔法を使ってやろうと言ったとして、
「やれるものならやってみろ…と、きたか…」
なんとまあ、威勢の良い事だと思う。
威勢の良いのは大切だ。初対面の相手には、まず舐められないようにすること。これが意外と重要だったりする。
しかし、そんなもの私には関係ないのだがね。
だって私、魔法使いだし。
初対面の相手が魔法使いなら、いくら威勢が良くても関係ないのだよ、少年。
「ふむ…ここでこの子を助けてやるのも、また一興かな?」
私は、考えながらも動きの止まった周囲の人々を掻き分けながら進み、ついには少年の傍に立っていた。
「まあ、君がそこまで言うのなら見せてあげよう…」
私は右手を少年の体にかざした。
ここから始めるのは、ただの遊びだ。
ただし、遊び人は超一流の、魔法使い。
「回復魔法の真髄というやつをね!」
私は魔法を行使する。
そして、世界の針がまた一つ進む。