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Poetry Verse Poems

月で心が曇るのは

 ああ、恋をすれば、恋をすれば

 この世は人生バラ色なんだと

 炉端に佇む俺に君は囁いたね

 ああ、恋こそこの世にたゆたう

 ああ、夢見心地のベッドロマンス

 心はシルクに包まれて、感受性の昂り

 まっこと麗し、嘆きの投げキッス

 頭がくらくら、鼓動虐げる波濤、秋波

 ああいつだって言ったんだよ

 愛は幻なんだと

 心が求める果てには

 愛は砂漠のオアシス

 追えど辿りつかぬ水場

 心に雨は降り続くのに

 決して満たされぬ渇き癒せず

 潤わぬ俺はうろたえる、周章狼狽悲嘆に暮れる

 おお、新しき日々、夢見る日々よまた、

 見晴るかし、流離う地にまた別離と情愛、

 夢に見たって言うんさ、あんた

 どこかで会った事、ありますかって、あんた

 そうさそれもそのはずさ、何度も夢に見たってだけじゃ

 伝えきれないこの思い、悲しみに浸った海綿が

 どこまでも膨れ上がるかのように

 潮騒に導かれるまま、俺はこの波間に腰を下ろしたんだ

 人の心は鏡なのさ、あんたは俺を見ているが

 あんたの眼はおれをうつしてやしないんだ

 あんたは俺を見ていながらそこに、あんた自身を見出す

 それは人の世のしがらみ、瞬く刹那においてすら

 あんたに忘れられて、何度夢見て、

 そして忘れられる、そんな砂漠の道果て

 悲しみもまた添え物に過ぎない、嵐はとうに過ぎ去った

 そうして空に昇るのは、綺麗な心と澄明な愛

 心が曇っちまったのは

 愛で目が霞んだからで

 夢を見なくなったのは

 恋を知るほど老いたから

 いつも見ていた夢だけど、こうして見れば何となく

 ああ、綺麗なものは綺麗だから綺麗だなんて

 おとなしやかに言うもんじゃない

 そうして人の内面は

 輝ける臓腑の内面は

 どんな美人のみてくれも

 肉の詰まった皮袋

 死んでしまえば骨だけが

 微かに美醜を語るのさ

 骸に映る月影の

 彼方遮る俺の夢

『即興短編小説集』

第618部分 『月で心が曇るのは』(2016/08/22)

から加筆訂正して再掲。

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