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第7話 この力、誰が為に。(2)

アダプター2への侵入経路を確保し、現在の仮拠点であるアダプター1へ帰投したY028部隊。

彼らを出迎えるY036部隊長マルセルと今後の作戦指針を決めるべく、彼らはロビーコンテナへと身を寄せる。

「確かに、妙だな……」





 アダプター1に帰投したY028部隊の面々を迎え、活動報告を受けたアダプター1を防衛する隊の責任者……Y036部隊隊長マルセルは、ややいぶかし気に整えられた髭を右手でゆっくりと撫でる。


 この3日間の活動で、斑鳩たちはアダプター2への侵入経路の確保するに至ったが……本来タタリギの巣窟と化しているであろうアダプター2周辺の敵性状況は、一言で言えば"()()"そのものだった。


 想定されていた大型タタリギとの遭遇は無いまま、状況は散見的な丙型(ヘイガタ) との戦闘のみに終始。比較的安全にアダプター2への侵入経路を確保したとはいえ、不気味な程静かなこの状況に、一同は首を捻っていた。


「正直、ここ何年も放置していた区画とは思えないな……あまりにもタタリギの数が()()()()()


 斑鳩はアダプター1内、作戦室にも使われる一同が集まるロビーコンテナ……その中央に置かれたテーブルに広げられる作戦地図に目を落とす。

 ローレッタの戦闘ログを元に、会敵した場所へ赤いチェックマークが付けられたその地図を一同は囲むように眺めていた。


「ここを襲撃した乙型(オツガタ)の様な大型が現れないとは……本部が想定していた状況とまるで違うな」

「ああ、それが却って不気味でもある。 ……まあ、アダプター2内部に大量の大型タタリギがひしめき合っている、という線もありえるかもしれないが」


 ふうむ、と髭を撫でる手を腰に据えながら考え込むマルセルに、斑鳩は地図上のアダプター2を人差し指でとんとん、と叩いてみせる。

 斑鳩が指す場所を、眼を細めながら見るとマルセルは呟く。


「……数年前の調査でこの南東区域が最危険区域に指定された理由は、このアダプター1に闊歩する丁型(テイガタ)、丙型の数に加え……君らが抜けたあの森で複数体の大型タタリギが確認されたからだ。 しかしこの状況は、その調査とも全く異なる……タタリギは戦線を下げたのか……?」

「でもま、あたしたちの戦力を削られるコトなく目標のアダプター2への経路は確保出来たワケだし……良かったと言えるんじゃない?」


 考え込むマルセルと斑鳩に詩絵莉はそう言いながら、防衛部隊の一員である五葉つかさ……テーブルの上、彼女が入れた温かいお茶が入ったマグカップに手を伸ばす。

 ふぅー、と冷ますように息を吹きかけると、万能ナッツの葉を煎じたやや甘い香りが彼女の鼻孔をくすぐった。


「確かに数年前の調査とは状況が違ってるのかもしれないけど……アダプター2をタタリギの手から奪還する作戦上では、少しは有利な状況なのかも……」


 詩絵莉の言葉にひとつ頷くと、ローレッタもテーブルに置かれたお茶を手に取り、ギルも続いてマグカップを手にする。


「まあ、アダプター2の内側がどうなってるか、だな。 俺たちの戦力でなんとかなる状況だったらいいけどよ、なあ」

「……」


 マグカップを傾けながら、ギルは傍らに佇むアールに言葉を振るが……彼女はどこか、ぼうっとした様に地図を眺めているだけでギルの言葉に反応する様子が無い。ここアダプター1へと帰投する最中もそうだ。何か考え事をしているような、それとも上の空の様な、その表情からは察する事が出来ないが……第13A.R.K.を出向する前の彼女とはどこか様子が違う。


「アール? ……大丈夫か?」


 斑鳩の呼び掛けに、彼女は少しはっとしたような表情を浮かべると、周囲からの視線に気付くと慌てる様に何度か頷いた。

 その様子にマルセルは少し苦笑すると「疲れが出てるんだろうさ」とテーブル越しに、彼女へお茶の注がれたマグカップを渡す。アールは少し戸惑いながらも、俯き気味にそれを両手で受け取る。

 注がれたお茶のじんわりとした暖かさに少し、表情を緩める。


「しかし大型が出現しなかったとはいえ、この人数で三日で経路確保か……Y028部隊、噂以上だ。 局長と司令代行が君たちをこの作戦に充てがったのにも納得が行く。 それで斑鳩隊長、アダプター2へのアタックの予定はどうするつもりだろうか?」


 受け取ったマグカップのお茶を熱そうにすするアールから皆へと視線を巡らせると、マルセルは賛辞を送る。


「ここ三日、幸い戦闘による損害も無い。 今日はこの後、休ませて貰うとして……早速明日にも作戦行動に移りたいと思っているが……皆はどうだ?」

「あたしは問題ないわ」

「ああ、俺も大丈夫だ」

「……だいじょうぶ、いつでも行けるよ」

「この後休ませて貰えるなら、明日の作戦行動には問題ないよ!」


 斑鳩の問いに、四人は一様に答えながら頷いてみせた。


「了解だ、ならば五葉を含むうちの隊員で手の空いてる者に、明日の出撃に必要な準備の手伝いをさせよう。 その間、斑鳩隊長はじめY028部隊全員は明日に備えて十分な休息をとってくれ。 ああ、それとこの後、本部への定時連絡を兼ね、Y028部隊が明日アダプター2へと向かう事を伝えよう」

「……何から何まで痛み入る、マルセル隊長」


 テキパキと今後の動向を決めるマルセルに、斑鳩は頭を下げる。


 このアダプター1の護衛を受け持つY036部隊は彼、マルセルを含め10人程ではあったが非常に統率の取れた働きを見せている。

 回収班の護衛や、この仮拠点の防衛、巡回は言わずもがな、出撃し帰投する斑鳩たちへのケアも完璧に近い。中でも五葉はマルセルに次ぐポジションとして各メンバーを采配し、食事の準備から果てはシャワーの準備まで、至れり尽くせりの対応をしてくれていた。


 出撃するメンバーとは別、一人アダプター1へ残り作業用のコンテナで兵装の整備や開発に当たるフリッツも初日、「こんな待遇……逆に申し訳なくなってくる……」と恐縮のあまり震える程である。


「なに、本来はドーヴィン隊長が受け持つはずの仕事だったはずだ。 彼に顔向け出来る様にさせて貰っているだけさ」


 そう言うマルセルは、どこか寂しそうに笑う。


 ドーヴィン隊長……前作戦で殉職した、Y035部隊の部隊長。

 マルセルは彼と旧知の仲と言っていたが、恐らくそれ以上…… 深く立ち入ってその関係を聞き及んだわけではないが、 一言では片付けられない様な関係だったのかもしれない。斑鳩は彼の寂しそうな笑顔に、ふとそう感じた。


「ここまで良い方向に予想外の状況が続いてはいるが、アダプター2内部の状況は未知数だ。 しっかり休み、明日に向かって英気を養ってくれよ」

『了解』


 一通り通達が終わると同時に、斑鳩たちの背後で扉の開く音。

 一同が振り返ると、そこには姿勢よく敬礼を行う五葉の姿があった。


「失礼しまッス、五葉つかさです! シャワーの準備が出来たのでご報告にあがりましたー!」


 その言葉に、詩絵莉とローレッタは顔を見合わせ「やった」と喜んだ。

 今回斑鳩たちをはじめ、部隊の長期滞在が予測されるこのアダプター1には生活する上で必要な施設がある程度整えられている。その中でもコンテナ一つを改装したこの浴場は、うっそうとした気味の悪い森の探索が続く作戦の最中、特に女性陣にとっては嬉しい施設の一つだった。


「先日、先々日とお湯の量が少なく男性陣には迷惑掛けたッス! 今日は明日に備えて多めにお湯を準備したので、ゆっくりくつろいで来て欲しいッス!」

「そりゃありがてえ。 ……初日なんざ、途中で湯が切れちまったからなぁ、冷水は堪えたよな、イカルガ」


 五葉の言葉に、ギルは斑鳩と目を細めながら初日の入浴を思い出す。


 立派な浴場が誂えられているとはいえ、流石に男女別のスペースは用意されていない。その為まず、詩絵莉、ローレッタ、アールが入浴した後、斑鳩とギルが使う事になったのだが……先に入った三人の女性陣が思いの外お湯を使った事により、斑鳩とギルの入浴中に沸かされたお湯が底をついてしまったのだ。


挿絵(By みてみん)


 ……ちなみにフリッツはどうも風呂嫌いらしく、「僕は三日に一度で十分」といつになく強気な態度で、入浴を頑なに拒んでいる。


「ま、まあその事は謝るわよ、ウン。 もうちょっと節約するように心掛けるわね……」


 遠い目で天井を見つめる斑鳩とギルに、詩絵莉はややバツが悪そうに応える傍ら、アールも同じく目を細めながらため息ひとつ。


「わたし、入らなくてもいいんだけど……お風呂……」

「それは駄目だよアルちゃん! こんな可愛いんだから、綺麗にしなくちゃ! それに可愛い子は、沢山お湯使う権利があるんだよ!!」


 何やら彼女たちとの入浴に疲れた様子のアールに、ローレッタは彼女の両肩に手を力強く置くとそう力説する。

 その姿に斑鳩は腕組みをしながら苦笑した。


「とにかく折角の厚意だ、先に浴びてくるといい。 その間に俺とギルは、フリッツの所に顔を出してこよう」

「わかった。 じゃあ上がったら声掛けるから、また後でね」


 詩絵莉は二人に頷くと、マルセルと五葉に軽く敬礼を行いロビーコンテナを後にする。

 その後ろを、「ううぅ……」と情けない声をあげながらアールは、ローレッタに抱えられるようにして二人、詩絵莉の後に続きコンテナを後にして行った。


 コンテナを後にした女性陣を苦笑交じりにマルセルは見送ると、咳払いを一つ。


「五葉。 いよいよ明日、アダプター2への侵攻が決定した。 手の空いている者で彼らの装甲車の点検と整備…ああ、フリッツとも配備する兵装の打ち合わせ行ってくれるか」

「了解、早速手配しとくッス! それなら英気を養う為にも、今晩の夕食は豪勢なもの準備するッス! あ、ギルバートさん!」

「……お、俺!?」


 唐突に話掛けられたギルは一瞬きょとんとした表情を浮かべると自分の顔を指さし、五葉へと振り返った。何だろうと驚く彼に、彼女は大きく頷くと懐から何やら細々と文字が記載された紙を取り出す。


「ギルバートさんが持ち込んだ"手作りのパイ"、なんスけど……保存、今日くらいまで限界なんスよね。 一緒に夕食に並べちゃってもいいッスか?」


 彼女は食品物が羅列された書面を「うーむ」と眺めると首を捻る。

 五葉の言葉にギルは「ああ、そうか」と頷くと、決まりが悪そうに頭をぽりぽりと右手でかいた。


「……ありゃあ、一応縁起物っつうかな。 身内が作ったモンなんだが……作戦終了時に皆と食べるのが通例なんだけどな……むう」

「いいじゃないか、ギル。 明日……今作戦の最初の節目になる作戦に向けて、勝利のパイならこれ以上ないくらいの縁起物になる」


 ここ、アダプター1へと出向して三日。

 食べるタイミングを逃してしまっていた事に後悔を見せるギルに、斑鳩はその背中をぽん、と叩きながらそう口にする。そのやり取りを見て、五葉も笑いながら頷いた。


「ッス! 縁起物ならなおさら、傷む前に頂かないとバチが当たるッスよ! ……じゃあ、そっちも合わせて準備しとくッス!」

「……それもそうだな。 よし、じゃあ五葉さんよ、宜しく頼むぜ」


 少し考え込みはしたが、納得したギルの言葉に五葉は大きく頷き、勢いよく敬礼を見せる。


「それでは、自分は色々手配と準備に向かうッス、マルセル隊長、失礼しましたッス!」

「ああ、皆にも宜しく伝えておいてくれよ」


 マルセルが頷くのを見届けると彼女はキビキビした動きで踵を返し、扉を後にする。

 彼女の背中を見送った斑鳩は、腰に手を当てるとマルセルに振り返る。


「……彼女は本当によく働いてくれる、正直助かってるよ」

「ああ、いい女さ。 斑鳩隊長も嫁にするならああいう娘にしたらいい、少々言葉使いが面白いやつではあるがな」


 ふ、と目を細め意外な言葉で返すマルセルに、斑鳩とギルは目を丸くする。


「嫁……って、マルセル隊長、彼女とその……夫婦だったのか!?」


 組んでいた腕を思わず解きながら驚いて見せるギルに、マルセルは笑いながら手を左右に振った。


「ははは、違う違う……俺はあの娘の兄貴、みたいなものでね。 何……彼女はドーヴィン隊長の養子の一人、なのさ」

「……ドーヴィン隊長の?」

「ああ」


 予想外の間柄に、斑鳩も作戦室中央に置かれたテーブルに腰を預けると目を丸くした。


「君らには伝えておいてもいいだろう……何を隠そう、俺もその一人でね。 ドーヴィン隊長は身寄りのない俺たち孤児に、ヤドリギで得た報酬の大半を割いて育ててくれた親父……いや、俺からすれば……兄貴分、だな」


 彼らの意外な出自に二人は「なるほど……」と思わず考え込む様に俯いた。


 今でこそヤドリギたちの活躍により戦線を何とか維持し、それなりに安全に暮らせる内地を作り出している人類ではあったが、それもここ十余年の話だ。斑鳩たちの本拠地である第13A.R.K.の様な最前線拠点はさておき、現在より内地でのタタリギによる被害は、各拠点との連携を取り持つアガルタの功績により減少こそしているものの……以前は、より厳しい状況にあった。


 各拠点に対するタタリギの散発的な襲撃は現在と比べるまでもなく多く、拠点間を結ぶ物資運搬ラインも非常に危険なもの。今でこそ、出来る限り各拠点に在籍する護衛を主とするヤドリギによる随行が義務付けられているが、内地でも混戦が続いていた以前では、それもままならない。

 結果、拠点に対する襲撃はもちろんの事、運搬中の襲撃により命を落とす者もまた、多かったのだ。


 当然そうした状況から今の比でなはい程、孤児となる子供たちもまた多く存在する事になる。

 今の世代のヤドリギたちの中には、そうした身の上である者も多い。

 言えば斑鳩やギルもそうした過去を潜り、ここに居る。


「もとより彼は、面倒見の良い人でね。 家族には恵まれなかったようだが……いや、逆か。 今思えば俺たちのような孤児を助ける事に、その人生を捧げていたのかもしれない。 ……とにかく、彼には恩義があるのさ。 俺も、そして五葉も……今は寄せ集めのY036部隊だが、そういう事情を抱えた奴が多く集まっているのさ」

「……そう……か」


 通りで、言ってしまえばこのいち護衛任務にしか過ぎないであろう今作戦を、彼らはこれ以上ない程の気の入れようで見せてくれるはずだ。

 斑鳩は目を閉じると、改めて彼らに尊敬と感謝の念を心に浮かべる。それは、隣に佇み天井を睨み付けるギルもまた、同じだろう。


「ああ、だが斑鳩隊長。 前作戦で彼を助けれなかった……なんて後悔は背負わないでくれよ?」

「その言葉に、ああ、大丈夫だ……とは、軽々しくは言えないな」


 マルセルの言葉に、斑鳩は少し困ったように瞳を細め、眉間にしわを寄せる。


「いや、困らせるつもりは無いんだ。 ただ、俺たちヤドリギはいつ消えるかもしれないロウソクの炎の様なもの……彼も、彼に世話になった俺たちも、それは理解しているという事を伝えたかっただけだ」


 彼はそう言うと立ち上がり、斑鳩に右手を差し出した。


「彼の最期は……俺たちの今後の道を照らす光となったと今は皆、思っている。 漠然と戦うのではなく、誰かと何かを守る為に戦う彼に続こうとな。 そしてその彼の照らした先へ、君らを送るのが俺たちの仕事ってわけだ」


 斑鳩は差し出されたその手を、ぐ、と強く握り返した。

 続いて、ギルへも手を差し出すと、同じく強く握りを交わす。


「……これからも頼む、マルセル隊長」

「ったく、ンな話聞いちまったらよ、否が応でも気合い入っちまうぜ。 なあイカルガ」


 不敵な笑みを浮かべるギルに、斑鳩も口元を上げる。


「ああ、全くだ。 流石、"一桁"に所属していた人間だと今、思い知らされた。 プレッシャーの掛け方が、また()()()()()


 斑鳩の冗談めいた口調のその言葉に、一瞬驚いたように目を見開くと……マルセルは一転して高らかに笑ってみせる。


「はははは! いや、それを君が言うか、斑鳩隊長……面白いな、君らの部隊の実力は"一桁部隊"と何ら遜色がないだろうに! ……だがまあ、そうだな……今の話は男同士、腹を割ってというやつだ、本心だよ」

「Y036部隊の支援体勢は本物だと言う他無い、マルセル隊長……わかってるさ。 ……それに、初顔合わせしたあの指令室で、ドーヴィン隊長との関係を伏せてくれていた事に、改めて部隊長として感謝する」


 そう言うと、斑鳩はやや神妙な面持ちで彼に頭を下げた。

 頭を下げる彼に、ギルは一瞬戸惑いを見せる。


「関係を伏せた……? なんの事だ、イカルガ?」

「……ローレッタの事を考慮してくれたのさ、彼は」


 頭を上げつつ、斑鳩は改めてマルセルに視線を向ける。


「彼女の事は事前に見舞ったクリフのヤツから聞かされていたのもあってね。 あそこでひけらかしても互いにいい事は無かっただろうさ。 それに俺は、女性には極力優しくありたい性質(タチ)でね」


 あごひげを撫でながら、マルセルはやや照れくさそうに答える。

 彼の言う通り、あの場所でマルセルたちとドーヴィンの関係を明確に伝えれば……その事実は、よりローレッタに罪悪感と責任感、確実に今以上の圧がのし掛かった事だろう。


「……なるほど、そりゃ……俺からも礼を言わせてくれ、マルセル隊長さんよ。 キサヌキは……なんだ、その。 人一倍責任感というか、そういうのに逆に押し潰されんじゃねえかと俺たちも思う事がある程でね。 ……気遣い、助かったよ」

「何、気にしないでくれ。 (フクロウ)は性質上、自分らの様に前線に立つ式兵よりも感情に飲まれやすいもんさ……優秀であればある程、な。 斑鳩、お前さんだって俺と立場が逆なら()()していただろう? それだけの事さ」


 軽く受け流す様に笑って見せる彼に、つい斑鳩とギルにも笑みが差し込む。


「だから、今のこの話はアレだ。 男同士の秘密話、ってやつだな」

「ああ、そうだな」


 とりわけ彼らの関係を彼女に伝える事もない、彼らは一つ頷くと、面持ちを改める。


「……さて、いよいよ明日はアダプター2、か……。 この予測出来ない状況……何が起こっても不思議じゃないが……せめても、無事を祈らせてくれ、斑鳩、ギルバート……いや、Y028部隊のな」

「任せてくれ。 このアダプター1、あんたになら心置きなく任せられる。 ……こっちは何が起きようと、ヤドリギとしての本分、果たしてみせるさ」

「ああ、ここの防御は任せるぜ、マルセルさんよ。 あんたらも、無事でな!」



 男同士、三人のヤドリギ。


 連携する部隊、という関係性を超え、共に戦う仲間として。

 その右手を改めて交わす様に、彼らは拳を重ねるのだった――。







 ……――第7話 その力、誰が為に。(3)へと続く。

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