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第11話 別つ道の先へ (7) Part-2

照明が落とされた格納庫の一角。

一足先に到着していた斑鳩と合流したギル、詩絵莉、ローレッタは再開を喜ぶ間もなく、

キースからこの場所に集まった意味を伝えられる。


装甲車の中でアールが休んでいる中、キースから斑鳩へと手渡された正式な書状……

そこに並ぶ文字が告げるのは、Y028部隊が犯したとされる謂れのない罪状。

そしてその書状を括る一文――「装甲車を略取し、A.R.K.から逃走した」。


手に取った書類からキースへ視線を移すと、斑鳩は全てを理解したように、静かに頷いていた。

「しゅっぽ……はァ!?」





 A.R.K.を出奔(しゅっぽん)する事になる。

 キースを前に、冷静にそう言葉を紡いだ斑鳩にギルは思わず声を上げていた。


「出奔ってお前……このA.R.K.を出ていく、っつう事だろ!? 無茶苦茶じゃねえかっ……! イカルガ、何お前落ち着いてんだよ!」

「……ここに呼ばれた時点で覚悟はしていた。 しかし……」


 言うと、斑鳩はもう一度キースから手渡された"罪状"が並ぶ書類を暗闇の中睨みつける。


 拘束から逃れただけでなく、A.R.K.内でひと暴れしたのちY028部隊は装甲車を略取して拠点より脱走した――正直かなり無茶苦茶な筋書きだ。斑鳩は小さくため息をつく。


 これではまるで、噂に聞く無法に身を置く者ら――そう、"野良"だ。


 A.M.R.T.により式兵となりながらも、アガルタ、A.R.K.の管轄から逃れ、拠点間で運搬される物資の強奪や、旧世代の兵器や機器類を違法かつ無断で回収し、それを求める好き者らに横流しを行う事で生きながらえている連中と聞く。


 もっとも、斑鳩をはじめY028部隊の誰もが今まで野良の存在を見たことも、身近に感じたこともなかった。


 この13A.R.K.はタタリギと人類との最前線とされる場所――周囲を防壁に囲まれたこの拠点では、そういった"野良"の連中が入り込む隙間は無い。いや、もとよりタタリギと戦う事から逃げ出した者らからすれば、むしろ野良の連中にとって興味がない場所なのだ。彼らが活動を行うはもっぱら内地だとは噂に聞くが……。


「――今はこうするしか君らの身柄を保証する事が出来ない……そう、我々は判断したんだ」

「保証だと!? ふざけんなッ!」


 先ほどとは打って変わり神妙な面持ちを暗闇で浮かべるキースに、ギルは下唇を強く噛むと拳を握り込む。


「……除隊だけじゃねえ、こんな濡れ衣着させた上でA.R.K.を出ていけなんざ、納得出来る訳がッ……!」

「ギル、落ち着け!」


 キースへ向け一歩前へ踏み出そうとしたギルの身体を、斑鳩は背に受け止める。


「ギルやん……気持ちは、わかるけど――今は、普通の状況じゃない。 まずは司令代行の話をちゃんと聞こう……ね」

「ちっ……!」


 握った拳にそっと添えられるローレッタの右手に、ギルはキースから視線を外すと深いため息を吐く。

 そして自らの身体を押さえつけるよう強く腕組みをすると、頷くローレッタに一瞬だけ視線を向けた後、憤りに細めた瞳で再度、キースを睨みつける。


「……自分が代理となる事は許して欲しい、が……局長――いや、我々の意図を伝える。 いいね?」


 改めてキースが頷きながら口にした言葉に、四人はそれぞれ頷く。


「君たちがアール君から"何かしらの影響"を受けている事は明確だ。 式兵としてのその能力は今や、このA.R.K.内でも突出してると言わざるを得ない。 この事態を招いたのは窮地とは言え、その力に頼るしかなかった我々にも非がある……けれど、このままではいずれ、君らの特異な能力がヒューバルト大尉に知られる事になるだろう。 ……遅かれ早かれ、ね」


 アールからの影響――それは言わずとも、深過した事で得たであろう自分たちの特異な能力。

 ギル、詩絵莉、そしてローレッタは誰ともなしに小さく息を漏らす。


「――やっぱり……知っていたんですね」


 俯いたまま視線を寄越すローレッタに、キースはゆっくりと頷いた。


「先の戦いを見ればね……外ならぬ君らの事だ。 目に見えて変化のある斑鳩君だけじゃない……君ら三人にも心当たりはある――そうだね?」

『……』


 まるで部隊全体が感覚を共有し、あり得ない密度での連携を組み立てた先の戦い。


 それだけならば修練の先にたどり着く極地とも言えたかもしれない。だが、明確に深過傾向が見られる斑鳩だけではない。異常なほどの回復能力、身体能力――式兵としての基準値を大きく超えたそれらに加え、ローレッタに発現した"タタリギを感知する能力"。


 第三者にそれと伝わる程の変化――それは何かしら……いや、"深過"の影響と考えるのが自然だろう。


「この事実はまだ、ヒューバルト大尉らには知られていない。 けれど露見すれば最後、今度は君らを引き渡すよう要求されるだろうね。 理由だって何とでも用意される……今回のように強引な手段でも――ね」

「強引な手段……」


 キースの言葉を詩絵莉は小さく反復する。


「彼らが身を置く"式神"を造り出した部門……知っての通り、アガルタの暗部。 今回、君らが下したあの特異型タタリギですら、あるいは彼らが用意したものかもしれない――と、我々は今考えているんだ」

『――ッ!?』


 タタリギを、アガルタが用意した――その言葉に、ギルと詩絵莉、ローレッタは思わず大きく瞳を見開く。


「ちょ……えっと、待って。 ああいえ待ってください……アガルタが用意した……? あの――タタリギを!?」


 頭を抱え混乱する詩絵莉に、キースは変わらず冷静な口調で言葉を続ける。


「確証に足るものはない……今はまだ――ね。 だが斑鳩君とアール君が先の戦いの最後、深過共鳴(レゾナンス)と呼ばれる力で知り得たという内容は、聴取の結果一致していた。 以前、斑鳩君に深過共鳴(レゾナンス)し、実際に救って見せた彼女とその本人からの報告……今はそれを信じる他、情報が無いんだ」

「……~~暁ッ! どういうコトなの……一体、あの時何を――タタリギの中で、何を見たの!?」


 そう口元を抑え話すキースの言葉に、詩絵莉は斑鳩へと振り返る。彼に説明を求めるよう視線を送るのは彼女だけではない――ギル、そしてローレッタも無言で斑鳩を見詰めていた。


 三人の様子に、斑鳩はキースへと視線を送る。


「……簡潔に」


 今、この場で皆に話しても良いか――そう問う斑鳩の視線に、キースは促すよう言葉と同時に小さく頷く。それを確認した斑鳩は、頭の中を整理するよう小さく息吸い込み、ゆっくりと吐き出した。


 そして斑鳩は、キースの言葉通り簡潔に……あの時、アールと共に視た光景を三人へと話始めた。


 物理的な手段で斃す手立てが無い中、まさにアダプター2での戦いの再現と、深過共鳴により自身諸共タタリギを道連れにすると心に決め飛び込んだアール……その彼女を救わんと飛び込んだ、あの時。


 タタリギの中……いや、そう表現するのが正しいかどうかすら分からない――だが、確かに存在する常軌を逸脱した、あの暗闇の世界。既にタタリギへと堕とされ、散ってしまっていたシール。暗闇の中、タタリギの核として存在していたリッケルト……さらには、セヴリンの壮絶な最期。


挿絵(By みてみん)


 斑鳩が事実として語る出来事の中、三人を最も驚かせたのは外でもない――今回のタタリギ群体の襲撃、加えて唐突に深過しタタリギへとその姿を変えた戦車を従えていた、"白い少女"の話だった。


 アールと同じく、D.E.E.D.計画――式神として造られたという少女、エル。


 タタリギの群体を呼び寄せA.R.K.を襲ったと宣うその少女は確かに口にした。

「この戦車(オモチャ)は私が用意したものではない」――と。


 固く閉じた瞼の裏側……斑鳩はその暗闇にあの時確かに視た光景を思い浮かべながら、言葉を終える。


「……掻い摘んでだが、これが俺とアールが視てきた事の全てだ」

『…………』


 そう呟き視線を装甲車へと向けた斑鳩が見せた表情に、詩絵莉は息を飲む。

 深い――深い、怒りと悲しみ。どちらも含んだような彼の悲痛な表情に、何と声を掛ければいいのか思い付かなかった。


(……暁――それに、アール。 そんな事が、あの時起きてただなんて)


 シール、そしてリッケルト……ヤドリギでない身でありながら、最期まで戦ったセヴリン。

 そして、かつて同じ境遇に居た――そう、仲間であったはずの者が異形となり目の前に立ち塞がる事となった、アールを思えば。


 三人はただ、深くゆっくりと重たい息を吐く事しか出来ないでいた。


「ありがとう、斑鳩君。 とまあ……聞いた通り。 ヒトとタタリギを融合させるような技術が存在するのならば、ヒトにタタリギを植え付け発現させる――そんな事すら、彼らは可能としているのかもしれない。 ……そして現に、それは実行されたと我々は考えている。 おそらくは極めて強引に、斑鳩君とアール君を回収する為に、ね」


 口元を抑え視線を外し考察するキースに、ギルはやるせない表情を浮かべ口を開く。


「……話は分かったけどよ、流石におかしくねえか。 イカルガとアール、二人を回収するためだけにこんな――こんな極端な方法を取る意味が……あったってのかよ」


 言うと、ギルは震えるほど強く握り込んだ右拳を抑えるよう、左手を添える。


 シールとリッケルトとは知り合って間もない間柄だったとは言え、共に戦おうと戦線に並んだ、仲間だった。それにフリッツが担当する前、長い間部隊の兵装の手入れを行ってくれていた、セヴリンの最期。


 ローレッタはギルの様子に悲しそうに俯く。

 ギルは特に、撃牙の調整を通じてセヴリンと親しい間柄だった。斑鳩が語ってくれた、非戦闘員だったはずの彼が迎えた最期は……これ以上無い程に式兵(ヤドリギ)そのものだったのだ。


(……だからこそ、悔しくて、辛い――分かるよ、ギルやん。 本当ならそこで死ななきゃいけないのは……私たちの役目の筈だったんだもの)


「……あのタタリギは以前君らが遭遇し、アール君の力で排除したと言う純種に近い。 いや、それ以上の戦闘能力を有した個体だった。 現れるはずのない、まさに君らに当て付けるよう現れた"掛け値なしの脅威"……加えて場所はこの13A.R.K.の内側ときた。 それと相対した君ら――いや、我々が選ぶ選択肢とは何か、さ」


 詩絵莉はキースの言葉に、ぎり、と強く歯を噛み鳴らす。


「対敵単体への対応力はA.R.K.随一と言って過言ない君らですら、あの脅威を退けるにはアダプター2での戦いの再現を選択せざるを得なかった――事実、そうだったようにね」

「……崩壊弾(デイケーダー)が決定打にならない状況……結果アルちゃんは深過解放して、戦った。 それも今度は、何も知らないA.R.K.の――衆目の前で……何も知らない隊員から見れば、危険な深過を遂げた式兵として戦わせるために……」

「――そう、あくまで連中の行いは正義なんだ。 アガルタという威光の元にある、ね」


 頷くキースに、四人はそれぞれ状況を理解したよう目を伏せる。


 理由もなく式兵を強制的に本部へ引き揚げさせる事は難しい。それがY028部隊――今、その実力がA.R.K.に周知された者らなら猶更だ。ただでさえ慢性的に戦力、物資不足に晒される13A.R.K.から新鋭の戦力を取り上げる――それでは明らかに、アガルタへの反発を生む事に繋がる。


 ならばその理由が……()()()()()()()()()()


 深過した式兵をアガルタの名の元、治療と称して回収する。そうまでする理由はさておき、そうあれば皆の手前、局長ですらその正義たる行いに反故する事は難しい。


「恐らく状況を見て、先の特異型を討つ助力に紛れ――二人を回収するつもりだったんだろうね。 ……でも、A.R.K.は彼らの予定に無い状況が発生していた」

「! ――タタリギ群体の、襲撃?」


 弾けるように顔を上げるローレッタに、キースは頷く。


「そう。 二人の報告にも合った様に、あれは彼らにとってイレギュラーだったんだ。 本来ならば、どこかのタイミングで戦車が深過――それと立ち向かえるのはY028部隊のみ。 その方が当然、特異型との戦闘を目撃する者が、もっと増える事になってただろうしね」


 確かにキースの言う通り、実際先の戦いをリアルタイムに目撃した者らの数はそう多くはない。

 かと言って、今や数の問題ではない事も確かではあるが……。


「事実、彼らは群体に阻まれA.R.K.内に辿り着くまで時間を要してしまった……もっとも、彼らが大門での大量のタタリギを叩いてくれたお陰で助かった命もある。 けれどそれは本意では無かったはず」

「……? と言うと?」


 首を小さく傾げる斑鳩に、キースは肩を竦ませる。


「何しろ、群体相手に負傷したA.R.K.の式兵だけじゃない……自らが連れ従えていた式兵の負傷者すら放置して彼らは君らの元へと向かったんだ。 我々指令室からの救助要請――クリフ君の通信も無視して、ね」

「――! そんな、負傷者の救助要請を無視してまで……」


 憤りを露わにするローレッタの横で、同じく詩絵莉も思わず舌打ちをする。


「答え合わせもいいトコね。 連中、あたしたちがあのタタリギ……特異型とやり合ってたのを知っていた……それに、何が起きているのかも」

「その時、既に目的は達成されていた……アールの深過、そして俺たちの戦いが目撃された時点で……」


 そう詩絵莉に頷き応える斑鳩の後ろで、ギルは考え込むようしわを刻んだ眉間を抑えながら口を開く。


「――実際、二人がタタリギに取り込まれたあの光景、何も知らねえ連中が見たなら誰もが考えるだろうぜ……タタリギに飲まれて()()()()()()()()。 二人は生きていたとしても、深過したに違いねぇってな」

「そう、だな……」


 ギルの言う通りだと、斑鳩は瞼を閉じる。


 あの時、直感的に――それこそ迷いなく、深過共鳴で以てアールを救うのだと飛び込んではいたが、それが目撃されたときどう映るか……それをあの状況で考えたとしても、躊躇う理由にはならなかっただろうが――。


「……あのなイカルガ、お前を攻めてるワケじゃねえからな。 俺だってアールを助けられるっつう確信がありゃ……間違いなくお前と同じ事、してただろうよ」


 後悔はないが、ヒューバルトらの思惑に沿っていたことに歯噛みする斑鳩の背中を、ギルは言葉と共に軽く叩く。「分かっている」と柔らかい視線を一瞬こちらへ向けた彼に、ギルは目を閉じ数度頷いてみせた。


「さて……つまりは、だよ」


 キースは羽織ったジャケットの内側から懐中時計を取り出し、それに一瞬視線を落とすと改めて四人を見渡す。


「唯一の頼みの綱、ラティーシャともコンタクトが取れない状況の今――こうまで強引に動いたアガルタ、ヒューバルト大尉らの思惑から君らを守る事は、我々にとって並大抵の事じゃあないと言うことなんだ……不本意ながらね」

「…………」


 先ほど声を荒げたギルも、憮然とした顔で俯くしかなかった。


 あの戦いに介入したエルと呼ばれた少女の事も気掛かりではあるが、今は目下アガルタ……ヒューバルトの動向。確かに司令代行の言う通り、斑鳩とアールを回収するためだけにここまで手段を選ばないとなれば……。


(クソッ……状況は理解出来た……出来たけどよ。 それでも俺は……俺が無法した上、逃げ出したなんてことになったら……あいつは……!)


 行き場のない憤りを噛み締め、再び震える拳を握り込むギル。

 その事に気付くことなく、斑鳩は閉じていた瞳を開くと、キースへ向けて大きく頷いていた。


「――話は理解しました。 出奔する理由も、意味も」


 斑鳩は手にした書類をキースへと返しながら、細めた瞳で天井を見上げる。


「連中から逃れるには他に方法はない……深過した式兵に対する処遇で私情を挟むような事があれば、監督者としての体面は保てない。 かと言って、目的はアールや俺、そして深過してなお"式兵でいられる"皆の()()()()()()だとするのなら、死亡や自殺したと工作する事も難しい。 内外から13A.R.K.の管理体制への信頼性も失墜する事になる……」


 そう言い終えると瞳を閉じる斑鳩に、キースは今一度目の前の四人――そして静かに駐車されたままの装甲車へも視線を巡らせると大きく頷いて見せる。


「――けれど、死力を尽くし戦った君たちをモノの様に差し出す事は……出来ない。 それが例えアガルタがヒトを、人類を救う為の行いに、その研究に……繋がっていたとしても、ね。 まあ、これが我々の総意だねえ」

「キース司令代行……」


 彼はどこか気恥ずかしそうにそう言いながら、いつもの様に肩を竦めてみせる。

 しかしその姿に息付く事なく、斑鳩は暗闇の中真っ直ぐとキースの瞳を捉え口を開く。


「ですが、一つ疑問があります」

「――聞こう、斑鳩君」

「A.R.K.を出て……そして、()()()()()()()。 俺たちが逃げたとなれば、アガルタは追撃部隊を編制してでも追って来るでしょう。 その体裁を造る事も容易のはず……だとしたら、他のA.R.K.へ逃げ込み隠れる事も難しいと判断しますが」


 "どこへ向かえと"。


 そう聞かれたキースは、思わず瞳を閉じると口元を緩める。


 彼らY028部隊へA.R.K.を出奔する旨を伝える……この場所を命を賭して守り切った彼らに"出ていけ"と伝える。それも、ありもしない罪まででっち上げて。


 正直、辛い役目だと思っていた。事実、話途中で殴られても文句は無いとまで考えていたが……この格納庫へ向かう前、そう表情を曇らせるキースの背中に、ヴィルドレッドは一言だけ言葉を送っていた。



 ――「斑鳩……やつなら理解するはずだ。 俺……いや、俺たちが何を以てそう伝えるか、その意味をな……」



(……なるほど、局長(あの人)が信頼を寄せる訳だ)


 目の前、こちらを真っ直ぐと見据える斑鳩はこう言った。

 どこへ逃げれば、ではなく――どこへ向かえば、と。それはつまり彼が、A.R.K.の外……タタリギが跋扈するこの世界を当てもなく彷徨えなどと、()()()()()()()()()()()、と。


(まったく、まるで若い局長を目の前にしてるようだ……だからこそ本心から願いますよ。 別たれた彼らが進むこの道が、未来へと通じているように、心から……)


 しばしの沈黙の後――

 キースは瞼を開くと真っ直ぐ斑鳩を見詰め返し、ゆっくりと首を縦に振って見せる。






「斑鳩君。 その問いにはこう答えよう……君らが()()()()()()()は――局長が、用意してくれている、とね」



 ……――第11話 別つ道の先へ (7) Part-3 へと続く。

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