本来地獄行き
気がつくと暗い空間にいた。
俺が周りを見渡しているとなんだか白く輝いている爺さんが近寄ってきた。
「なんとか成功したようじゃな」
爺さんの姿は全裸だった。
これはなんの冗談だろう。もしやこれが死ぬ間際に見る夢か。だとしたら最悪だ。なんで最期に爺さんの裸なんて見なくちゃならないんだ。
「そう悲観するのではない。これからお前の望みを叶えてやろうというのだ」
えっ、俺の心の声を聞けるの。
「神様だからの。ちょうど転生させるのに良い人物を探していたのじゃ。お前、最適。だから転生させてやろう」
転生とか興味がないけど、どうやら困っているようだからしょうがない。
俺は心の声を聞かれているのを承知で大きくため息をついてやった。
「受け入れてくれて良かった良かった。もし断るようなら地獄にお前の魂を送り返さなければならないところじゃったわい」
ほう。俺の魂は本来地獄行きだったのか。まあ、生きている間に特に悪いこともしなかったが良いことをした覚えもない。それにどこの宗教にも入っていない。賽銭すら節約していたんだ。地獄のハードルは結構低いのかもしれないな。
「ところで転生先のスペックはどの程度がいい? どうせチート性能が欲しいのじゃろ?」
俺も甘く見られたものだ。
生憎俺はそういうものに執着がない。
俺がよく批評してやった小説でよくあったチートスキル。あれ、チート過ぎるだろ。
それにチートステータス。あんなんで人生楽しいか。むしろ自分の可能性を捨てたようなものではないか。
だから俺はそんなものは望まない。
普通でいいのさ。
至って平凡。
転生先の生活は目立たないようにして過ごしたい。
だけどつまらん輩に蔑まれるのはごめんこうむりたい。だから平均より少し上の現代人スペックさえあればいい。
「殊勝な心がけじゃ。なら、そうしてやろう」
おっと、少し待て、転生させられる前にひとつ聞いておきたい。
俺はどんな異世界に連れて行かれるんだ。
「異世界? はて? そんなこと言ったかな?」
俺の周りから眩しい光が湧き出した。
「お前が行くのはお前がいた世界の遥か未来だ」
言葉を全て聞き終えると同時に俺は強制的転生を行われた。