【6話】文化祭の魔法と現実
なんだかんだで文化祭準備では色々ありながらも里見くんとはたくさん話せたから次は写真を撮りたい。
「で、明日は文化祭だけど、里見と写真の一つや二つ撮るんでしょ?」
今瑠璃香と紗英と3人で、文化祭前夜祭(里見の作戦会議)をしにきてる。
「それにしてもー瑠璃香よくこの店知ってたね」
「お姉ちゃんがね〜教えてくれたの、ここのパンケーキがすっごく美味しいの」
「おい、話をさりげなく45度程度変えてるんじゃねぇよ。」
「ごめんて。。。でもさ、そりゃ撮りたいけど〜里見くんは断りそうだしぃー」
「神谷が気になると?」
瑠璃香は私の気持ちを透かし取った。
「はーー。そうか。。でもまず、里見はあんたに写真を撮って欲しいって言われたら喜ぶと思うよ?例え嫌って言われても里見は照れてるだけ。」
ため息を吐きながら紗英は真剣に答える。
「うんうん、優梨ちゃん。うちも紗英ちゃんと同じ意見だなぁ。それに神谷なんか心配しなくても、優梨ちゃんの方が仲良いじゃない!」
「そうかなぁ。」
「そうだよ、優梨奈自信持ちなさい。」
2人もこう言ってくれてるわけだし頑張ってみよう。断られたらその時考えよう。
「優梨奈おはよう!どーしたその髪」
教室に入って私を見るなり紗英は駆けつける。
「頑張っちゃった。」
「おんめぇ可愛いなー?里見には見せたか?」
私は首を振る
「そうか、まだ来てないな」
すると、里見くんが教室に入ってきた。
「おはよう里見くん」
「おう」
いやこれだけかいな!!
恐ろしく私が落ち込んでいると、紗英が言う
「気にすんな、里見はこういうヤツだ。」
そうだそうだ悲しむのは早い。これから文化祭が始まるんだ。
『全校生徒の皆さん。文化祭開会式を始めます。体育館に集合して下さい。』
「優梨奈、もたもたしないの行くよ〜」
「うん。」
そうして文化祭の開会式は始まった。
うちの学校は生徒を中心に先生達も盛り上がる。
今年はペンライト禁止令が出ていたが、3年の実行委員を中心に全員にペンライトが配られた。
集合して席に着くまでは薄暗い体育館がざわざわしている。次第に3年から静かになってそれを見た2年が静かになる。最後まではしゃいでる1年が静かになったところでステージにカラフルなライトが当たりまるでディスコにいる気分になるぐらいの盛り上がるBGMが流れパタッと消える。また暗くなり次にステージの幕が上がったところでパンッっとライトがステージ上のマイクに当てられる。するとそこに校長先生がおしゃれなスーツとサングラスをかけた姿で出てくる。すると3年がフーフー騒ぎ出す。
「本日は、お日柄も良く絶好な文化祭日和です。明日は一般公開です。来てくれた方々を笑顔にできる文化祭経営をしましょう!」
『ウェーーーーーイ』
それから様々な部活の出し物や、生徒達のバンド、漫才、ダンス、歌など沢山のパフォーマンスが繰り広げられた。
「それでは、各自クラスに戻り出し物の準備をし20分後に行動開始です。」
『ウェーーーーーイ』
「疲れたねぇ、紗英寝てたっしょ?」
「邦楽部のトコだけねーー、ってあ、あれ里見だよね?」
「本当だー。いつもよりかっこいい。」
いつも制服を着ているが今日は文化祭のクラス衣装を着ている。髪の毛もオシャレにしていていつもの里見くんじゃないみたい。
「アレって4組の里見くんじゃない?かっこいいー」
「里見ってかっこいいね」
「あの人誰だろう。」
周りは里見くんに見惚れる女の子で溢れかえる。
「里見もやるな〜、人生モテ期ってくるもんだね」
「里見くんはかっこいいよ。高身長で色白で透き通っていて切れ長の目に優しい髪の毛。モテないわけなんてないもん」
そう口にした瞬間一気に里見くんが私のいる世界から遠ざかってしまったような気持ちになった。それはなんとも言えない不安と寂しさと憧れと恋心全てが混ざり合って私の心をキュッと強く締め付けた。
「里見くーーーん写真撮ってーー」
「あたしもーあたしもー」
目の前で沢山の女子に写真を迫られる里見くんを見てどこかやっぱり届かない人のような気がしてうつむくことしかできなかった。
「優梨奈。どっか回ろうか?ここ人が多すぎ。」
紗英ちゃんの声すら耳に入らずずっとうつむいていると
「優梨奈、暑い、屋上行きたい」
そう言って私の手を掴み屋上に連れて行った。
外の風は校舎内より爽やかで気持ちよかった。
「いやー文化祭は暑いね〜」
私は気付いていた、色んな感情に押しつぶされそうになっていることを紗英は分かってあえて誰もいないここに連れてきてあえて里見くんの話をしないことも。
それからどのくらいの間無言が続いただろう。紗英はずっと黙って私に寄り添ってくれた。
「紗英、人気者だったんだね。」
「あんなやつ人気者じゃないよ」
「かっこいいもんね」
「でも周りは外見だけしか知らないけど、優梨奈は中身の良いとこも悪いとこも知ってる。」
その瞬間『バンッッ』と音がした
「あぁ!立川!!こんなトコで何してんの」
「里見くんこそ」
「俺はもう暑いから休憩」
「働かなきゃ、人気者さん」
「うるせぇ馬鹿にすんなよー。あーあちぃー。立川アイス買ってー」
「仕方ないなぁー何の?」
「チョコ」
「里見くん甘いの好きなんだね。おっけ〜」
「あーーーっと、あたしも食べたいなぁーアイス。」
「紗英は何がいいの?」
「うーーーん何あったっけ?よくわかんないからー私が買ってくる!」
「あぁうん。。。」
そう言って紗英は一人で行ってしまった。
「里見くんモテるんだね」
「もてねーよ。」
「女子に囲まれてたじゃん」
「ただの写真撮影だろ。」
そっかそうだよなぁ。写真撮影か。
「じゃあさ、里見くん」
「あ?」
「私もしゃし…」
「里見くーーーーーんこんなトコいたの?もーーーー、写真とろーよ」
神谷…
「撮らねーよ。立川、なんか言ってなかった?」
「ううん、なーーーんっも言ってないよーーーほら、写真撮影してきな!」
そう言って私はまたトイレにこもった。
そうだよなぁ、あの時も言われたな紗英に。
『傷付く覚悟ないなら恋なんてやめな。』
結局私はあたる勇気すらないのに。
向いてないなぁ〜恋愛に。
「向いてないかなんてわかんないじゃないの。」
紗英。。。
「よくわかったね。」
「星柄くんがトイレ入るの見たって言うから、来たら本当にいるんだもん。わらったよ。」
「……。」
「扉開けたくないなら良いけど、聞いて欲しい。」
「……。」
「あんた神谷に劣ってることなんて勉強以外ないよ?あんたにはあんたらしい性格と個性があって、優梨奈は優梨奈にしかない輝きを持ってる。そう自分に言い聞かせてもそれでもダメな時は側にいてあげるから、自身持たない?」
なぜかさっきまでの悲しみとか全てが吹っ飛んだ。
「紗英。。。」
「もー本当に心配させるんだからー。いなくなったと思ったじゃない。仲良く話してるんだろーなとか期待して戻ったら、誰っっってなったし。
「ごめんね。」
「よかったーーーー笑ってて。泣いてるって思ったし、焦った。よし!こーなったらあと少しで店当番だし、アイス完売させよう!里見を忘れよう!!」
「うん!もう忘れる!」
とりあえず今できることを真っ直ぐ頑張ってみようと思った。