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魔女のたまご

作者: 紺空

ふかいふかい森の奥に小さな村がありました。


その村には心の優しい人々が住んでいました。


村人達はお互いを思いやりながら暮らしていたので村はとても平和でした。


でもひとつだけ村人達には困った事があったのです。


この村よりさらに森の奥深くに住んでいる魔女が時々村へおりて来ては悪さをしていくのです。


魔女は魔法を使って村人達が大切に使っている井戸の水を凍らせてしまったり、町へと続く道をいばらで塞いでしまったりするのです。


村人達はどうして魔女がそんな悪さをするのか分かりませんでした。それでも村人達は魔女を懲らしめようとはせず、魔女が悪さをする度にみんなで協力して悪さの後始末をしました。村のそこかしこの家でお湯を沸かして少しずつ井戸の氷を溶かしたり、みんなで斧をふるっていばらを取り除いたりしたのです。


魔女は悪さをした後、いつも木の陰に隠れて村人達の困った様子を見ておなかを抱えて笑っていました。そしてしばらくすると自分の住んでいる家へとぼとぼと帰っていくのでした。


 ある日、魔女はいつものように村へ悪さをしに行きました。村に着くといつものように悪さを始めました。村人達の家の花壇に咲く、小さくてかわいらしいお花を魔法で枯らしてしまおうとしたのです。魔女は家々の花壇に向かって杖を振り魔法の言葉を唱えました。そしていつものように村はずれの木の陰から村人達の様子を伺いました。しばらく待ってもお花は枯れませんでした。お日様を体いっぱいに浴びて気持ち良さそうに背伸びをしているようでした。


魔女はそれを見て、自分の魔力が歳とともに衰えてきていることを感じました。そして急に恐ろしくなってきたのです。魔力が無くなってしまったら、村人達が今までの悪さの仕返しにやってくるのではないかと思ったのです。


魔女はすぐに自分の家へ帰りました。そしてこれから自分を守るにはどうしたらよいのかを考えました。魔女は3日間考えてようやく良い方法を思いつきました。魔女は自分の持つ魔力全てを使い不老不死で鋼の羽で覆われたオオワシを作り出し、そのオオワシに自分を守らせる事にしたのです。


早速魔女は魔法の材料を用意し、家の外にある大鍋でそれを煮始めました。そしてその大鍋に向かい一日中魔法を唱え続けました。その夜、魔女よりも大きなたまごが出来上がりました。その時、魔女は全ての魔力を使い果たしただの老婆になっていました。でも、もう怖くはありませんでした。一週間もするとたまごが孵り、最強のオオワシが自分を守ってくれるのです。


 魔女はたまごが孵る日を待ち焦がれながら一週間を過ごしました。毎晩卵を抱きしめながら眠りました。でも一週間を過ぎても卵は孵りませんでした。たまごの中ではゴトゴトと動く音が聞こえてきますが、たまごはどんなに待っても孵りませんでした。この大きなたまごは殻までもが鋼だったのです。いくら最強のオオワシでも鋼の殻を割って出てくることは出来ません。やがて老婆はその事に気がつき絶望しました。老婆はそのままふらふらと家を離れ、近くの崖から身を投げて死んでしまいました。その瞬間、大きなたまごにピシッと、ひびが入りました。魔女の魔法が解けたのです。


 その数日後、村人達は恐る恐る魔女の家へ向かっていました。村人達は数日前に話し合い、魔女を村のお祭りへ招待しようと決めたのです。村人達は魔女の家に着き、魔女を呼びました。でも、しばらく待っても家の中から魔女は出てきません。不審に思って村人達は家の裏手へ回りました。そこでは大きな大きなワシの赤ちゃんがピーピーと鳴いていました。村人達はそのワシの周りに集まりました。その瞬間、ワシは初めて目を開け村人達を見回しました。


 このオオワシは、魔法が解けたために不老不死ではなく羽も柔らかでしたが、村人達を自分の親と思い込み、その後100年生きて、村を守り続けました。

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