かま×なべ 2008年版
これは今から八年前(2016年4月11日現在)の2008年に初めて書いた最初期の『かま×なべ』のデータです。
読んでみたいという強い希望により投稿しましたが、本筋に関係ないため読む必要は全くの皆無と言えるでしょう。むしろ読み飛ばしてください。黒歴史です。
なので暇を持て余しているという方だけどうぞ。
みんなはオカマを知っているだろうか。直接的に聞くような言葉でもない気はするし、響きが悪いといってはアレだが、とりあえずは耳にしたことがわるだろうし、意味だって理解していると思う。
性同一性障害とはまたベクトルの異なったオカマを指す言葉は、ニューハーフと置換することも出来ること必須で、社会的に認められているのかどうかはとやかく指摘することもなしに、逆もまた然りであり、世間体としては認知されている部類に入るんじゃないかと思う。
オカマなんてのは世界各国にでもたむろしていそうなものだし、芸能人にも存在してネタにされることもしばし、ましてや一家の大黒柱として人生を歩んでいる者だっている。
こんなことを言い出せば全くもって限がないが、一先ずはどこにでもいるんだ、オカマは。しかもそれはリアルに絞れたものじゃない。電脳の世界にだっている。
そう、ネットゲームにもいるのだ。男が女を演じるネカマ。女が男を演じるネナベ。
互いが演じるキャラ同士、知らない内に交わっていることだってある。しかしそれは誰にも解からないし、解からなくたってどうってことはない。しかし、もし互いに解ってしまったら、どうだろう?
穂積華都は、人生の岐路に絶たされていた。
決して断崖絶壁から落ちそうになり命綱の紐が切れそうになっている訳でも、ましてや肩パンをやられた挙句にナイフを所持した危ないチンピラ共に絡まれ、ガンつけ空へと浮上しそうになり掛けている訳でもない。なぜなら四月十日(日曜日)現在ずっと家の自室に篭っていたのだから。そして昨日も。事態の更新はパソコンのディスプレイ画面と一日中睨めっこしていたことに発生し、キーボードの定位置を連打している理由は、ネットゲーム『ラプソディー』をプレイしていた事に繋がる。
三年以上前に開発が済みネットに挙がったラプソディーは、モンスター狩りを主流とするチャット、メール有りの日本対応のオンラインゲームだ。当初は活性化の目処も立つ筈なくネットゲームとしての人気は低位置を行き来していたが、今では十万人を超えるプレイヤーが娯楽として利用している。それは華都も例外ではないが異なる点が見受けられるのもまた然りで、もはや仕様の度を越えている。
語るとしては、そうだな。まずは高校に入学したての一昨日辺りに遡る――
♂×♀
自宅から徒歩で通っている東西高校はマンモス高とまではいかないが、それにしたって平均的な校舎の大きさを軽く凌駕する分、ある程度見合った人数をここ学び舎に置いていた。一年C組に配属された華都は、人との付き合いをのらりくらりと避けに過ごした挙句、少し浮いた存在になるのは仕方がないことで、クラスに知り合いが一人しかいなかったことからも正にその事が伺える。いや、数える程しかいない親友の内一人と同じになれたことに、逆に安堵を胸に潜めずにはいられないものだが。
「よー華都。なんだか見たところダウナーだな。どった?」
意気揚々と華都の肩に手を掛け名を呼ぶこいつこそが、唯一無二の大親友とも呼べないこともない奴で、名前を内越悠間。正直に言うとこいつはオタクで、なぜ点として指摘するのかは、
「違うぜぇ、僕に対して云々、オタクじゃあなくオタくだからなぁ。そこの相違は見極めておくべきだ」
誇らしげに胸を張って、短髪の下眼鏡をくいっと引き、机の上に一枚のポスターを限界まで広げた。
「へーい、見よ! エロゲ『むしこい☆ラブセクト』の予約特典非売品ポスター! くぅぅ、クーデレの原点自称姫のミレアちゃん可愛いなぁ。さっすが僕の嫁、ふつくしい……」
気持ち悪い程の笑みを湛え自慢厨の役割を仰せ仕った悠間は続ける。
「今日もアニメイト寄ってこうぜっ!」
アニメイト。この単語にはある一種の意味的な考慮がちらちらと見え隠れしているかと思われるが、正にそう。何を隠そう穂積華都も、悠間と同じ部類の人間に含まれるオタクもといオタくなのだ。あれは三年も前か。クラスでボーッと何をするでもなく佇んでいると、悠間が相も変わらずのテンションで商品を押し売りしまいとするセールスマンが如く柔和に笑い掛け近寄ってきたのが起因だな。それを華都は生涯忘れないことだろう。オタくの世界へと誘った張本人は華都に対し、抜け出せなくなるネトゲを勧め中毒症を自覚として捕らえられるまでに成長させた。まぁそのお陰か皮肉にも立派なオタく早変わりを遂げた訳だが。
「そうだなぁ。今日は時間も早いし、さっさと家路に着いてラプソで露天を張り直しておきたかったがっておわっ!」
肘つき楽な姿勢から一気に暴落、当然の如く視界はぶれ、脳が直接華都に語り掛ける。後ろから勢いよく押されたとしか思えない。
「yahoo。椛蒔参上っ! 何の話してんのー?」
聞き覚えのある甲高い声で当然判断が追いついたものの、億劫を感じつつ体勢を立て直し嫌々ながらに振り返る。
なんだか自分で名前を出していたようだが改めて、この女の子のフルネームは、濃野椛蒔。高校入学時に知り合った子で、元気溌剌常にオープンで明るく振舞う表裏のないタイプだ。してその実態は、腐女子と称される人材で、眼鏡を掛けている反面巨乳で背の中辺りまで伸びきったロングヘアーをさらり揺らしている。リアルで女の子の知り合いといえば、数少ない貴重な相手で、腐女子に至っては初めてだ。
「いやな、悠間の奴が帰りにアニメイト寄ってこうってさ。俺はパスしたんだが」
「えー、アニメイト良いじゃん! あたしもよってこうかなぁ。ついでにとらのあなとか」
「あーとらのあなか。俺も最新の同人誌買って行きたいし、そっちなら行こうかなぁ」
つい釣られる華都に対し、
「んじゃ三人で行かね? ついでだしさ、はい決定!」
悠間は勝手に決めてパンッと手を打ち合わせた後、濃野をじっと見る。
「ん? なんだい?」
自分に向けられた視線に気付きぴょこんと軽く跳ねる濃野。
「いやなぁ、椛蒔のジャンルについて調べてたらいろいろとありすぎて、正確な性格が捉えきれないんだよなぁ。あ、ギャグ的な意味じゃなくてな? それに胸もでかいし」
「きゃーセクハラだぜぃその発言。おやめになって~お代官様ぁ」
ノリよく非常に業とらしく胸を隠し、椛蒔と悠間はキャーキャーと騒ぎ出した。お代官じゃなくてお殿様の間違いじゃないか? まぁほんとどっちでもいいが。
「穂積君はどう思うんだい?」
上目遣いで華都に振られたが、さてどうしようか。んーと顎に手を置き悩む仕草をして、
「ぎりぎりロリに眼鏡っ娘の巨乳、そしてロングヘアーに天真爛漫な腐女子、くらいか」
「うーむ、洞察力に長けてますな。太鼓判を押したげてもいいくらいだよ。はっはっは」
実に豪快だ。悠間は何気なしに頷いてみせ、何を思い出したのか「あ」と漏らし、そういえばと脈絡なく切り出した。
このえらく中途半端なところで終了です。
これが今の『かま×なべ』という作品になりました。